こころの井戸のらせん階段

くもまつあめ

こころの井戸のらせん階段

 落ち込んだ時、どうしていますか?

人それぞれかもしれないけれど・・・。

私の場合、静かなところで座ってもいいし布団の中でもいいんですが心の中の階段を降りていく。

心の中なら、何しても自由だから。

沢山の人に慰めてもらってもいいし、優しくしてもらってもいい。

「つらかったね、イイコイイコ。」

「よく頑張ったよ、あなたは悪くないよ」

心の中の人たちはみんな優しくて自分の味方なのだろうなと思う。


だけど、私は自分のことが嫌い。

褒められる価値も、慰められる価値もないと思っているから。

心の中で、私を慰めてくれる人をイメージしてみるけど、

心の中の人たちは私をみんな素通りしていく。

優しい言葉もかけてくれないし、慰めもない。

たまに私に気が付けば責めてくるような言葉ばかりかけてくる。

「もっとやりようがあったでしょ」

「だからダメなんだよ」

「みんな迷惑してるよ」

「何回も同じことやってるよね」

心の中でも何も言い返せない私は黙るしかない。

落ち込んでいる時に心の中からかけてくる言葉はとても刺さる。

・・・・もっともだと思うから。


だから、私は心の中にある井戸みたいな地下室にあるらせん階段を一人で降りていく。

薄暗くて、なんとなく深く青いお城のような、屋敷のような、石壁のようなレンガの壁のような冷たい壁。

手すりのない木のような、石のような、金属なような階段を降りる。


ぐるぐる

ぐるぐる


一人で明かりもないらせん階段をゆっくり降りていく。

いつ到着するかわからない最下層を目指して階段を降りていく。


・・・また失敗しちゃったな

ぐるぐる

・・・嫌われちゃったんだろうな

ぐるぐる

なんでいつもこうなんだろう


そんな気持ちを繰り返し思い出しながら。


一番下まで階段を降りきると、暗い井戸の底みたいなところに着く。

少し寒くて、相変わらず暗くて、シーンとしている。

明かりが一つもないのに真っ暗にならないのは不思議だ。

底の景色は土みたいな、レンガみたいな苔が生えてるような床。

石みたいな壁にはボロボロな木の扉がある。

木の扉には小さな窓がついていて、私はそっと扉を押してその部屋に入る。


・・・またここに来ちゃったな。


誰も慰めてくれない、優しくしてくれない。

自分でさえ自分をなんとかしてやれないのだから、私みたいな人はここでうずくまっていればいいんだと思う。

そうやって、暗くて寒い部屋でしばらく落ち込むところまで落ち込んでいたら、

いつの間にか眠ってしまい、いつもの部屋で目が覚める。

カーテンの隙間から差し込む光で明るい部屋で目が覚めると何とかまたやれそうな、そんな気がしてくる。


今日もいつものとおりぐるぐる歩いて底について、扉を開けていつもの部屋でうずくまる。


部屋の端でうずくまっていると


ガチャ


扉から鍵のかかる音がする。

顔をハっと上げる。

この部屋に鍵なんてない。

うずくまっていられず、立ち上がって扉に向かいドアを開けようとする。

扉には鍵がかかっているらしく開かない。


・・・・どうして?

扉の小窓から私をみている視線を感じて、はっと顔を上げる。


私が私をバカにした眼で見つめていた。

「あんた、こんなところでバカじゃないの?

ずっとここにいなよ。」

クスっと笑うと、私はどこかへ行ってしまった。


・・・・そうだよね、私・・・

いつまでもこんなことしてバカだよね・・・。


私は閉じ込められた部屋の端に戻ってうずくまる。

そして、心の中のらせん階段を探しておりていく。


ぐるぐる

ぐるぐる







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