貴方は当SNSのビジネスモデル上有害なのでアカウントを永久停止します

@HasumiChouji

貴方は当SNSのビジネスモデル上有害なのでアカウントを永久停止します

 ふざけんじゃねえ。

 たしかに、俺は四十過ぎて結婚出来るあてもなく、今までの人生で彼女が居た期間は合計1桁ヶ月の駄目男だよ。

 でも、何だよ、これ?

 当て付けか?

 SNSのサーバ上で動いてるAIまで非モテキモオタをいじるような世の中になったのか?

 地獄かよ? 天国に見せ掛けた地獄かよ?

 SNSの画面には……フォローしてる人達の投稿より遥かに多くの「あなたへのオススメ」が表示されていた。

 5つ6つなら、目の保養だ。だが、これじゃ……食傷もいいとこだ。

 何十個もの「あなたへのオススメ」は1つ残らず水着や下着のおね〜ちゃんの写真だった。


 ふざけんじゃねえ。

 表示されたオススメ投稿を「この投稿に興味がない」に指定し続ける。

 それでも、水着や下着のおね〜ちゃんの写真が表示され続ける。

 俺も意地になって「この投稿に興味がない」。

 まるで、SNSのサーバも意地になってるかのように水着や下着のおね〜ちゃんの写真ばかり表示し続け……。

 よし、判った。

 なら、戦争だ。

 根負けした方が負けと云う単純なルールの戦争だ。

「この投稿に興味がない」

「この投稿に興味がない」

「この投稿に興味がない」

 ……あれ?

『お住いの地域・年齢・性別などの属性から推測されえる好みや思考から大きく外れた方が当SNSにアカウントを持たれている事は、当SNSの運営に対する営業妨害と見做されます。よって、貴方のアカウントを永久に凍結します。これまでの御利用ありがとうございました』

 な……何だよ、これ? 何がどうなってる?


 ふざけんじゃねえ。

 翌日の朝になっても、そんな気持ちのままだった。

 ともかく、勤務先の広告会社に出勤。

「すいません、緊急の打ち合わせが有ります。SNS広告部門の人は一〇時に大会議室に集って下さい」

 ところが、朝一で課長がそんな事を言い出した。

 何だ? と思いつつ、その時間になると会議室へ向かう。

「日本で最もユーザが多いと言われてるSNS運営のT社が、広告を出す側としては大幅なコスト削減が見込めるので、結果として純利益はプラスになると予想されてます」

「あの……意味が判らないんですが……?」

 同僚の1人が手を上げて、みんなが思ってる疑問を口にした。

「だから、広告の内容を考えるのが大変なのは……ターゲットとなる人の好みや考えが多様だからですよね? 同じような好みや考えの人ばかりを対象にした広告なら、人手も時間も最小限で作れます。何だったら、近い将来、AIが作れるようになってもおかしくない」

「は……はぁ……」

「なので、来期からSNS広告部門は人員を大幅に削減します。あ、早期退職制度も間もなく整備されますので活用して下さい」

 お……おい……待て……そ……そんな……。


 ふざけんじゃねえ。

 ツブシが効かない仕事を長年続けてきた俺の再就職先は……失業保険の期間が残り1ヶ月になっても、まだ決っていない。

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