同業者とのバトルロイヤルはよくある事。

 Side ライジャ・ガレット

 

 賞金稼ぎと言う職業の都合上、同業者に命を狙われるなんて言うのはよくある事だ。


 その逆も同じである。


 今回は緊急の依頼だ。


 都会の学校で仕事をしくじって暴れている賞金稼ぎのバカを速やかに始末して欲しいと言う内容だ。


 既に何十人も犠牲者が出ているらしいが思ったよか少ない。


 過去には宇宙人だと言う理由で襲撃をかましてその宇宙人の怒りを買い、村一つが焼け野原になったり、町一つが壊滅したりなんて言う事件もこの地球では起きている。


 まあ放置すればこの事件もそう言う事件になるだろうが。


 今回の仕事は賞金稼ぎと同士の暗黙了解って奴を破ったから始末しにいくワケであって、正義感とかそう言うのは関係ない。


 と言うか本来こう言う仕事は宇宙刑事やら地球の防衛隊とかの仕事だが、自分達(賞金稼ぎを牛耳るクライアントとか)の不利になる情報を喋られたら困る。


 俺だって困る。


 だから殺す事にしたのだ。



 殺し事態はスマートに済んだ。


 ステルスモードで背後から忍び寄り、後ろから頭をズドンだ。


 問題はその後だった。


 宇宙刑事やら防衛隊やら賞金稼ぎやらと学校を舞台に激しいドンパチになった。


 どうしてこうなったか知らん。


 大方賞金稼ぎのバカが暴走したに違いない。


 あるいは宇宙刑事の安っぽい正義感が暴走したか。

 

 どちらにしろ正直いい迷惑だ。


 学校が加速度的に廃墟になっている。


「あ、その……悪い宇宙人?」


 そして傍にはとても気の弱そうで暗そうなチビの少年がいた。

 黒い制服からしてここの生徒だろう。


『逆に聞くがいい宇宙人ってなんだ』


「そ、それは――」


『死にたくなければ騒ぎが収まるまでじっとしてろ』


 突き放す様に言う。

 ブラスターの発射音がそこかしこで聞こえる。

 頃合いを見て俺は逃げる。

 

 追加の依頼で大騒ぎ中の賞金稼ぎの始末もきているが無視だ。

 欲をかいてこれ以上の危険に飛び込む様な真似はしたくない。


「こ、ここ、殺さないんですか?」


『機嫌が悪ければ殺すかもな』


 このガキと仲良くするつもりはない。

 あとこのガキ、学校では上手くやれてないだろう。

 俺はそう感じた。


「どうしてこんな事に……」


『あーまあ、運が悪かったな』


 そう。

 運が悪かった。

 そうとしか言いようがない。


『そろそろ逃げるか』

 

 混乱に乗じて逃げる事にした。

 包囲されてると思うが強行突破すればいい。


「あの、僕はどうすれば」


『言っただろ。じっとしてろ――』


 そんな時だ。 

 目的の賞金稼ぎと赤いポニテールにレッドの装甲服と黒いボディスーツの宇宙刑事が入り込んできた。

 俺は舌打ちして目標の賞金稼ぎの頭を射抜いた。


「アンタもこの騒動の主犯者!?」 

  

 と赤い宇宙刑事が強気に言い放つ。


『俺はこの騒動を収めに来ただけだ』


「信じられない。同行して貰うわ」


『勝手にしろ』


「え?」


『なんで驚いてるんだ』


「いや、てっきり一戦交える事になるかと――」


『それよりも防衛隊の方はどうするんだ?』


「いや~私達銀河連邦は地球の防衛隊とはあまりその~」


 俺はもう黙ってずらかろうとした。


「いたぞ!!」


「う、動くな宇宙人!!」

 

 今度は二人組の防衛隊の隊員が踏み込んできた。

 次から次へと……と、頭が痛くなってくる。


 ブラスター音も無くなっており、騒動は一先ず沈静化したのだろう。

 つまり目標は死んだか、捕縛されたか――だ


(さて、どうするか?)


 一戦交えるか。

 面倒だが銀河連邦に身柄を拘束されるかだ。

 

 正直に言えば防衛隊に身柄を拘束されるのは無しだ。

 あんまりいい未来図が思い浮かばない。


 なら此方の事情に詳しい銀河連邦の方がマシだ。

 賄賂はどれぐらい弾めばいいだろうか。


「宇宙船!?」


 そこで宇宙船が突っ込んで来た。

 賞金稼ぎの連中だろう。

 ブラスターを乱射してくる。


『クソ――もう騒動は終わった筈だろうに――』


「どうしてこんな事に!? 死にたくない!? 死にたくない!?」


『黙ってろチビ!! クソ、どうして助けちまったんだか――』


 咄嗟にチビを助けてしまった事に俺は悪態を付く。

 ブラスターによる掃射で壁がなくなり、一部建物が伐採されたかのようになっているが――そこから外へ脱出する。


 ちなみにここは学校の四階だ。

 チビを抱えたまま飛び降りた。

 

「うわああああああああああああ!? 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!?」


 などとチビが叫んでいたが今はどうでもいい。

 問題は宇宙船だ。

 標的は――俺らしく、学校の中庭に降り立った俺を仕留めるように宇宙船を動かしてくる。


(標的は俺か――)


 大方俺を殺して賞金を独り占めとか考えているんだろう。

 もしくはこの機会に商売敵を殺すとか考えてるのかも知れない。

 まあどうでもいいが。   


「いい加減くたばりやがれ!!」


 背中からキャノン砲を展開してぶっ放す。

 宇宙船のバリアを貫通して胴体を貫き、グルグルと回転して中庭に墜落。

 そして俺はチビを抱えたまま校舎に逃げ込み、そのまま外へと出る。

 瞬間、大爆発が起きた。

 校舎が倒壊する。

 

 たく。

 とんでもない厄日だ。

 

「はははは、学校なくなちゃった……」


 と、乾いた笑い声をあげるチビ。


『ショックか?』


「……正直、嬉しい」


『そうか』


 やっぱ学校で上手くやっていけてなかったんだろうなと俺は思った。

 これ以上の事態になる前に俺はおさらばした。



 あの事件は地球では大騒ぎ。

 宇宙では笑い話として有名になった。


 まあ俺は何だかんだで報酬たんまり貰ったから別にいいんだが、こう言うのはこれっきりにしてほしい。

   

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【短編】宇宙の賞金稼ぎ、地球に行く MrR @mrr

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