静御前は16歳。男がけっして放っておけない美貌の持ち主。
誇り高い白拍子から春ひさぐ傀儡女になる道で、どういった過程を踏まねばならないか。
その過程を、この作者さまは、目をそらさず描ききります。
たくさんの男が通りすぎます。
命が通りすぎます。
拝読していて胸が圧迫されるような苦しさを覚えます。
「武将は戦の時だけ命をかける。傀儡女は、日々誰とも知らぬ男を相手に戦っているのです。さらおうとする者もいれば、無理心中しようとする者もいる。いつも命を的にして、男の遊び道具を務めているのです」
何をかもを描ききります。
物語は、旅を描き、手に汗にぎる戦闘シーンもあり、読み進めるうち、静御前の運命はどうなってしまうのだろう、と先が気になってしょうがなくなります。
本当に骨太の、女の生き様。
強くなる一人の女が描かれます。
一話の濃さが半端ありません。この物語は食べようとすると、骨付き肉のように、すぐに噛み切れないほどの噛みごたえ、したたる肉汁、噛めば噛むほど味のでるうまい肉の味、です。
そのような、ごつい噛みごたえの物語、読んだことがありますか?
文章は硬質かもしれませんが、すごく読みやすいです。
最後まで物語に隙はありません。
さあ。骨太の読書体験を召し上がれ。
戦乱に腐る田畑や削り取られる人たちが何とか生きのびる土の上を
男たちに翻弄され汚されるように見える雉女。
その時代のさまざまな女性の生き方とそこから形成される性質、生きる方法、信じるものの差、どの女性も賢明で真摯で間違ってはいない。
だけれど、哀しさやすこしだけ狂気のような触れては怖い場所がある。
慣れない環境に人々の業に翻弄されながら、時を人を重ねるごとにいつしか仲間たちにたよられる存在となる
雉女、そのひとのほんとうの名は
「静」
義経に愛されたというだけではなく、最後は自分の足でしっかり立ったその人は
やはり
とても美しかったのです。
大人にこそ響く歴史小説ではないでしょうか。