第13話 最終話 冬の蝉 

  さっきから電信柱にしがみついて一歩も動けない。家は目と鼻の先だというのに、足が痺れて歩けずにいた。

 しばらくして、蝉の小休止が効いたのか、また歩けるようになった。

 

 透析の病院でMRIを撮ってもらい、脊柱管狭窄症の診断がくだった。

 脊柱専門の医院を訪ねても同じ診断がくだり「ああ、これは自然治癒しますよ」と言われた。けれど、治癒するどころか痺れ、痛みは激しくなっていった。


 MRIのフロッピーと紹介状を携えて医大の門を叩いた。

 画像を見るなり医師は言った。

「これは黄色靱帯骨化症という難病です」

 症例が少なく見落としがちだと言う。

 この病院の得意分野の内視鏡手術を希望すると、

「何度も言いますが、透析患者さんの場合、内視鏡手術で10人に1人が亡くなっています」この話は3回も聞いた。

 ようは生きるか、死ぬかでしょ。

 この病気を放っておくと、いずれ車椅子生活になるという。

 母の所に転がり込んでもいいかもしれへん。いや、いや、二人も車椅子でどないする。


 医大の整形外科医とその先輩と二人で、胸椎と腰椎の2箇所同時に内視鏡手術を行った。

 子どもたちの賑やかな声がし、目が醒めた。夢をみていたみたいだ。

「よかったあ、よかったあ」整形外科医の安堵の声が手術室に広がった。

 ほんまに危険な手術やったんや。


 その後、頸椎症性脊髄症の首の手術をする事になった。

 痛い思いはどこまで続くのやろ。


                       

       ー了ー




 

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🐱猫は生まれつき腎臓が悪い オカン🐷 @magarikado

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