手紙
ボクはお兄ちゃん、瑞樹からの返答を聞いた後にビルを後にした。そしてボクがビルを出て数分後位にビルが崩れていった。
「お兄ちゃん……、ボクお兄ちゃんの分も生きるから」
聞こえる訳無いけど口にしてみる。それだけでもやる気が湧いた気がする。お兄ちゃんが「家に行け」って言ってたから急いで向かう。警察に入られる前に。
「有った!」
お兄ちゃんの机の上にトランクボックスと一緒に置いてあった紙を見つけた。気になって開けてみるとそこには沢山のお金が入ってた。軽く100万以上は有ると思う。此処で読む訳にはいかないのでボックスと一緒に持ち出す。めちゃくちゃ重かった……
「さて、ここなら大丈夫かな?」
お兄ちゃんの家からすぐ近くの廃墟で読む事にした。好きでこんな所にいる訳では無く、近くに警察が居るのだ。そんな所にこんなトランクを持って居る人が居るとか怪し過ぎる。ボクなら通報する。
という訳で此処に逃げる他無かったのだ
「さて、この手紙を読んでいるのは誰だろうな。多分1番初めに読むのは椛じゃないかと思う、がまぁ良い。本題から行こう。先ず今回の事件の犯人は新島瑞樹だ。で、なぜこんな事をしたのかだが……、それが俺の役だからだ。意味分からねぇだろうがな。そうしろと言われたから俺はこんな大事件を起こした。俺は俺を唆した蛇を許す気は無いが……その原因となったお前たち人類も赦せない。酒に溺れ、薬に溺れ、金に溺れ、力に溺れ、女に溺れと堕落した人間たち。そのせいで俺はこんな役を演じる羽目になった訳だ……。大した理由でなくて悪いな、例えばこの世界が気に入らないからぶっ壊してやるんだ!!なんて言えばある程度は納得するだろうが、そんな訳じゃ無い。やれと言われたから…そうであれと言われたから、
その手紙にはお兄ちゃんが事件を起こした理由が書かれていた。僕には理解できなかった。だってお兄ちゃんが沢山の人を殺したりした理由が悪になれと言われたからだなんて誰が信じる?少なくともボクには無理だった。でもそれがお兄ちゃんが人殺しになった理由であることは変わらない。素直に信じれなかったがそれが真実である以上黙って飲み込むしかない。そしてその手紙にはまだ続きがあった
「こんな人殺しの言う事なんて誰も信じないだろう。別に信じなくていい。そんなことをして欲しいわけではないしな。俺としては反省しようが後悔してようがそんなことはどうでもいい。ただこれを読んでいる者に頼みたい。これを読んでいるのがまっとうな価値観を持った奴であってほしいが最悪誰でもいい。たち…いや新島椛に人並みの幸せを与えてやってくれ……。俺みたいな糞野郎じゃあいつを幸せにできない。俺が言えたことじゃないがあいつは幸せであるべきだ。そもそもの話俺と関わる人間じゃなかったんだがな……。誰か俺の大切な
そう書かれていた。何でボクにはそういった優しい面を見せてくれなかったんだろうか。ボクの事を大切って言うんだったらこんな事しなければよかったのに、と思うけどお兄ちゃんにはそうするしかなかったとはいえ他にも方法はあったんじゃないかと思わずにはいられなかった。
「好きなら好きって言えばいいのに…。お兄ちゃんは案外馬鹿だったんだなぁ」
そう言う彼女は涙を浮かべていた。その涙は彼の死による物なのかそれとも自分の思いが叶っていた事によるものなのかは彼女にもわからない。ただ言えることはその涙をぬぐってやるものは誰もいないという悲しい現実であった
必要悪の青年 Teufel @itsukingalice
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