必要悪の青年

Teufel

終わりにして始まり

高層ビルの屋上から街を見下ろしていた。街中では悲鳴が上がり黒煙を立てて崩れていく。彼らの日常は一瞬にして消え失せた。って言っても犯人は俺なんだがな……。


「あぁ……、腹に穴開けやがって……。ったく俺は一般人だぞ……」

 

そうやって自分の事を嗤いながら街を、自分が奪ったありふれた日常を思い浮かべていた。俺がこんな事をしてなけりゃ今頃何していただろうか、なんて下らない事を。そして胸ポケットから煙草を取り出した


「チッ…、これで最後かよ……。まぁもう終わりは見えてるし良いか」


そう言って俺は煙草に火を付ける。後ろの扉が開き、俺の見知った人物が出てきた。余りにも予想通りの人物過ぎてつい笑っちまった


「よぉ、こんな糞野郎に何か用か?つってもお前の持ってるモン見ればわかるがな」

「瑞樹…。なんで…何でこんな事をしたの……?」


そう言い彼女、新島椛は俺に問いかける。その目はに涙を浮かべながら


「…今説明しても理解できないだろうし。此処に居たらお前も死んじまうだろうからとっとと帰りやがれ」

 

フェンスに体を預けて俺はそう言った。だがこいつがそう簡単に引き下がるわけが無い。もしそうならここに来るわけが無いしな。


「…そんなこと言われて、はいそうですかって帰れるわけないじゃん!!何でこんな事をしたのかくらい教えてよ」

 

ほらなやっぱり。だと思った。お前は必ずそういう風に答えてくるだろうし、次にお前が言う事もある程度把握できる。


「瑞樹が本当にこんな事をした犯人なのかも、犯人だとしてもその理由も効かずに引か下がれるほどボクは…」

 

そう椛が言いかけた時向かいのクレーンがこちらに倒れてくる。


「此処は危ねぇから。俺なんかは放っておいてお前は安全な所に」

「こんな状況で放っておけるわけないよ!!瑞樹は怪我もしてるし聞きたいこともあるんだよ!」

 

食い気味に答える椛。頑固だなぁお前は……。さすがの俺もこれには折れる他なく、


「今教えれるだけ教えるからそれを聞いたら安全な所に行くことだけは約束しろ。良いか?」

「…瑞樹は…瑞樹はどうするの?」

「もう終わりは見えてるだろ。じきに死ぬさ。ま、こんな糞野郎にはお似合いの結末だろうな」

 

俺は笑みを浮かべて見せるが、痛みが酷くて多分歪んだ笑みになってるだろうな


「じゃあ先ず、一つ目からだ」

「ちょっと待ってよ!」

「もうすぐ死ぬって言ってんだろうが。呑気に会話している余裕は無いんでな」


俺は椛の頭の上に手を置きつつ話を進める


「一つ目は、俺が犯人かどうかだが。……そうだ。俺がこのクソッタレな事件の犯人だよ。二つ目だが。何でこんな事をしたのかだが…。俺の家に行けば分かるだろうな、置手紙みたいなモンを残してきたからな。ただ、警察とかが俺の家に入る前に見つけやがれ」


そして次の言葉を口にしようとした瞬間、俺は吐血した。その血だまりの上に煙草も落ちた。糞が、最後の一本だったてのによ。そして俺たちのいるビルも揺れる。


「…如何やらここが崩れるみたいだぜ。って訳でお前はさっさと逃げな。俺は…もう言わなくても解ってるだろ?」

 

そう言うと椛は泣きながら最後の問いを俺に投げかける


「瑞樹は…お兄ちゃんはこうなって良かったって思ってるの?」

「良いや?寧ろ腹立たしいよ。何で俺がってな」

 

そう答えると椛は俺の耳元で一言囁いて走っていった。


「何がお兄ちゃん好きでした、だ。阿呆が俺は大量殺人鬼だっての……、糞餓鬼が…」

 

そう言う彼は随分と楽しそうに笑みを浮かべていた。そして彼の体は瓦礫と共に地面へとたたきつけられていった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る