大人になるということ

楽しく拝読しました。


大人になった私は、アメリカから来た彼と委員長の彼の感じた怒りを、冷静に見つめられるようになった一方で、彼らのことは今だに「嫌い」だという。
アメリカから来た彼のバックボーンに理解を示しつつも、幼き私を傷つけた彼の幼さを、無邪気な悪意を、私は許せていない。

それは一見、矛盾のようにも思える。

でも、それは違う。冷静に見つめられるようになったことと、心の傷の回復とは、同義ではない。
つまり理解と受容は全くの別物なのだと、この物語は教えてくれる。
そして彼らを受け入れることができない私は、彼らにもまた私を受け入れないことを望む。そうすることで、理解しつつも受容できない罪悪感からすらも、私は距離をとろうとする。そういう私の強かさ、「ズルさ」は、多様性の現代を生きる我々に、一種の安心感のようなものを与えてくれる。

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