オキタクミ氏は天性の語り部なのだろう。ヒロシマ断章に続きこちらを拝読し、そう感じた。
「私」の考えは、一切書かれない。感情にも触れない。反射的に起こる情動もない。
語り部に必要なものとは何か。客観性を保ちつつ、受け取ったものへ主観を体験させること。これに尽きる。
寝た子を起こすなという議論はあるけれども、体験したいという準備ができた人が、それに触れることは、何の問題もないだろう。そしてそれが提供できる世の中こそが真に平等だと思う。
オキタクミさんが、実際に学生なのかどうか、私はわからないのだが、おそらく、これは彼女の(もしくは彼の)自然体なのであり、だからこそ、伝える力を持つ。
実話をモチーフにしているのかもしれないけれども、その場に引きずり込まれるような素晴らしい文章だった。
あなたがまだ若いなら、その目を感性をどうか、大切にしてください。
ありがとうございました。