追記

あらすじ(コンテスト参加用)


 僕こと室井駿太むろいしゅんたは、あやかしが見える不思議な体質で、更には目を瞑って念じればどんな場所でも見通せる千里眼の持ち主。ただしその能力を一度たりとも悪用したことはなかった。そんな僕は、不安を抱えながら参加した大学の入学式にて、見たら気分が悪くなる黒雲と、小さな白いフワフワしたあやかしという、二つの謎のものに同時に遭遇してしまう。フワフワの正体は管狐くだぎつねといって、人間と契約して他人の過去や未来を知ったり他人を呪ったりできるあやかしだった。この管狐との契約者は、あやかし研究サークル、通称あや研に一人で所属している三年生、山吹律子やまぶきりつこであった。山吹先輩と協力して黒雲の正体を突き止めて追い払うのに成功した僕は、成り行きであや研に所属することになる。更に山吹先輩は、僕が千里眼を持っている理由を解明すると約束してくれた。

 山吹先輩は傍若無人な性格の変わり者で、その発言内容は自分勝手かつ自由極まりないものばかりだった。僕が過去に一度も千里眼を悪用したことがないことを知ると非常に驚き、僕を聖人君子だの仏だのと呼ぶほどである。しかし根は親切で面倒見の良い人物のようで、僕との約束を果たすために色々と手を尽くしてくれたり、報酬が手に入ると分かりさえすれば困っているあやかしに惜しみなく手を差し伸べたりするのだった。

 あや研の活動内容は、年に一度の学園祭であやかしの伝承をブースに展示する程度であり、その他は部室で課題をやったりダラダラしたりお菓子を食べたりするだけだった。山吹先輩は早速、僕が千里眼を持つに至った場所である鎌倉の長谷寺まで、僕と一緒に出向いてくれた。目的は果たされなかったが、道中で化け狸の困り事を解決したことで、僕は「かげの世界」というあやかしたちの住処の存在を知った。対して僕たちの住んでいる側は「の世界」と呼ばれるらしい。また僕は山吹先輩に、これまで千里眼のせいでいじめに遭い、以後は不登校になった上に一人として友達が作れなかったことを打ち明ける。

 後日、僕たちが化け狸を助けた件を聞きつけたあやかし、源氏山胡弍坊げんじさんこにぼうが、僕たちに落とし物探しを依頼する。頼み事を遂行する過程で、僕はあやかしと神仏の関係について疑問を抱く。また僕は、あや研が成立した経緯や、山吹先輩が一人で活動していた理由などを聞き、山吹先輩への理解を深める。

 その後、僕と山吹先輩の噂を聞いた河童の親分の禰々子ねねこや、部室に侵入して盗み食いを働いた猫又のマルくんなどと関わるうち、僕は陰の世界やあやかしや神仏についての情報を次々と得て、千里眼の秘密に近づいていく。やがて山吹先輩は熱心な調査活動の結果、僕の千里眼は、広目天という仏教の守護神との契約によって取得した能力だということを突き止める。これにより僕の能力行使の幅は大きく広がった。たとえば僕は、広目天が使役するあやかしを呼び出すことも可能になった。

 また、大学生活の方も徐々に充実したものになっていく。学園祭の日には、山吹先輩の助言に従い、大学での新たな人間関係を構築できそうになるまでに成長した。また、ちょっとした事件をきっかけに、自分の特殊な力を今後どのように使うか考える機会を得るなどした。

 学園祭が終わり、サークル活動も勉学も落ち着いた頃、僕たちはいよいよ、僕が広目天の力を借りられるようになった理由を知るべく動き出した。苦心の末に広目天本人と対面した僕は、とうとう自分が何故この守護神から千里眼などの能力を授かったのかを知った。僕は生来、純粋で善良な性質の人間であったが、そのせいで悪鬼に取り憑かれていた。その状態で長谷寺を訪れた僕を偶然見つけた広目天が、見かねて僕から悪鬼を引き剥がして仏門に帰依させ、ついでに気まぐれで千里眼を授けたのだという。今度こそ自分の力の正体と由来を知った僕は、山吹先輩と共に、気持ちを新たにあや研の活動を再開する。また、山吹先輩から更なる助言と激励をもらった僕は、ついに大学内で友達と呼べる存在を得ることができた。山吹先輩は自分が引退した後の僕が孤独に過ごすことがなくなることを喜んだが、僕は今現在の山吹先輩との活動のことも大切にしたいという気持ちを告げる。あや研の方はというと、噂が大きくなった結果、あやかしたちにとって何でも屋のような扱いを受けるようになってきており、頻繁に怪しげな来客を迎えるようになっていた。今日も古びたサークル棟の一角で、人ならざるものが助けを求めて扉を叩く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あやかし研究サークルの活動記録 白里りこ @Tomaten

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ