世界電球は、果たして本当に人をしあわせにしたのだろうか
- ★★★ Excellent!!!
かつてゲーテは、「光強ければ影もまた濃くなる」と書いた。
光という正のものは、影という負のものを生み出してしまうという意味にも転用される。
しかし同時に、影があるからこそ、光は光でいられる。
幸福と不幸も同じ関係にあり、不幸を知らなければ、幸福もまた知ることは出来ないのだと私は考える。
だから世界電球の光で塗りつぶされてしまった人々は、決して幸福などではなくて、単にプラスマイナスゼロの存在に過ぎないのではないだろうか。
本作において真の意味で幸せなのは、両方を知ったシャノだと感じた。
そして恐らく、結末がどうであろうと、ポラリスも。
変わりたいから、変えようとしたのだから。
幸か不幸かを決めるには、どちらでもないゼロという基準値を置く必要がある。
あなたの基準値はどこにあるのだろうか?
私の基準値は、この作品を読んだ自分と読まなかった自分の間のどこかにある。それだけは確かだ。
素晴らしい小説をありがとうございました。