新たな日々 Ⅱ

 律が務める研究所。

 それは、過去にULI———Unification of the Life Informationという研究所が建っていた跡地に存在している。

 そこには、安藤真理子や西条隼人という類い稀なる優秀な研究員が所属していた。この地が再建されたとき、ここには再び研究施設を建てるとゼウスは決めていた。最新の機器を揃え、最先端の技術を持ち、優秀な人材を集める……と。そして、彼はそれを実現させた。

 新たな研究施設———NIVニーヴ———National Institute of Virology国立ウイルス学研究所を建て、併設する学校も建てては研究員を育ててきた。

 そのおかげか、ニーヴには様々な分野の研究者が集まり、ニーヴをさらに発展させていた。

 ニーヴには六つの研究部門が存在する。

 捜索部門、これはニーヴの外からさまざまな試料……つまり、サンプルを採取し研究所へ持ち帰る。ここに所属するためにはありとあらゆる有機物質、無機物質を熟知していなければならない。もちろん、新種が発見されればそれも覚えておかないと、採取に赴いた際に役に立たない。

 分析部門、ここは捜索部門が採取してきた物質の分析および外部から依頼されたサンプルの分析を行う。迅速かつ正確な分析が求められる場だ。

 記録部門、ここではありとあらゆる有機物質、無機物質の記録を行っている。いかに素早くデータ化するかにかかっており、人間が記録したものを人工知能搭載型アンドロイドたちに必要がある。ここにいる研究員たちは、生物学はもちろん機械工学やAIなどにも詳しくある必要がある。

 そして管理部門。分析、記録済みのサンプルを適切にそれぞれに合った方法で保管、管理することが求められる。ただ管理するだけでなく、研究員がサンプルや薬品系を実験や研究に使ったり、保管庫に出入りしたりといった全てのことも彼らが管理している。サンプルは長さ、重さ、色など、あらゆる方法で管理されているが、それらすべてを頭に叩き込んでいる彼らは……いわば、“保管庫の番人”だ。


 ニーヴには独立している部門が二つある。

 一つは情報部門。そしてもう一つは研究部門。

 情報部門は、主に地域や国内などのありとあらゆる全ての情報、感染症発生などの情報を収集し、研究所内に周知させる。また、国外の場合においても同じだ。二〇八〇年の大規模な“ウイルス戦争”では、情報が何もなく、国民はただその場で生涯を終えることになった。情報を得ることは、全ての人に平等でないといけない。

 そこでニーヴは、全ての国民が平等に情報を得られるように、研究、実験を繰り返してきた。理想に最も適していたのは、過去に使われていた〈バント型ICチップ〉を再利用すること。ニーヴによって安全に全ての国民情報を収集し、管理し、統括する。国民は、個人情報は守られながらも、その〈バント型ICチップ〉にて情報を得ることが出来る。画期的な方法だった。


 そして、もう一つ。

 研究部門では、その名の通り研究することが目的であり、それが使命でもある。ここでは、過去に発生したウイルス感染症やウイルス戦争、バイオテロなど、未知の感染からテロまで、発見・使用された病原体の研究を行い、次に活かすのが目的である。あくまで研究のみ行うというのがここでの仕事なのだが……律は首を突っ込んでしまうらしく、いつも研究員たちを悩ませていた。

 そして、研究部門で行われているもう一つの“使命”があった。

 それは、こと。ただ、これに対応できる研究者は少なく、未だ実験段階だ。


 二二二〇年、新世界が誕生してわずか四〇年後。

 この地に再び災厄が降りかかろうとしていた―――。


  

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ルークス ~second story~ 文月ゆら @yura7

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