あるいは簡単に通じていたはずの思い

 とある美容師の女性と、その客である女性との、細くて遠い関係性のお話。

 女性同士の関係を描いた、いわゆる百合のお話です。
 もうすっごいよかった……好みど真ん中すぎてもう何を言えばいいのか……。
 ただオススメしたい気持ちだけが先走って何も言葉が出てきません。

 若干ネタバレ気味の感想にはなるのですけれど、結末は決して幸せなものではありません。
 が、だからこその魅力というか読み出が、もうこれでもかってほど詰まっています。
 なんだったら「行動しなかった人のお話」と言えなくもないのに、その様子のひとつひとつが全部おいしいんですからたまりません。
 どうなってるのこれ……? 魔法……?

 説得力のある展開に、それをさらに補強する精緻な文章。
 しっとりと落ち着いた物語でありながら、あらゆる構成要素が読み手の心臓めがけて突き刺してくるような物語でした。
 とても面白かったです。大好き。