しっとりと染み込む恋愛一歩手前の感情

もどかしいやつら。
雨なら雨、晴れなら晴れと空を見てばかりいる。雨ならやめとこって、自分の大事なことを天気のせいにしてしまうような、ほんとに普通の女である主人公。
気になった相手がいても、かなり好きに傾いていても、今の環境が嫌いでも、彼女に近づくことはできず、彼女も踏み込んで来ない。
近寄りたいのに近寄れないのではなく、お互いに近寄らないほうが居心地がいいんだと、わかってしまっていて、けれど近寄ったらなにか変わるかも、とワクワクしている。

主人公は世界を変えるよりも、そのワクワクを大事に棚にしまっておきたかった。そのワクワクで仕事を続けて、環境を固定して、なし崩しで夫の尻を拭いて回る。

わたしは、主人公に彼女の小さな世界を飛び出してほしかった。

残念ながら、彼女の羽もまた特別な人間ではなかった。けれど、再度来店したということは、かつてのおもしれーやつに戻ったのかもしれない。
主人公はたらたらしてないで、飛べばよかったのに。
生き急ぐとか関係なく、自分を大事にするために。