大統領演説

 「全地球人民の皆さん。ハロー。この放送は特殊なネットワークを介して、全ての現存のメディアから強制的に流されています。

 もうご存じのように全世界の政治や経済、軍事上の施設、設備、その他のシステムはすべて破壊されて、全世界的に強制的な武装解除とデフォルトが遂行されました。

 これはテロではありません。

 極秘のうちに数年前から計画されていた、国連による世界の紛争を止めるためのPKOが成功裡に成就したという、つまりクーデターの凱歌というわけであります。

 …そのクーデターを執行したのが、私こと万城目胖まきめ ゆたかがプレジデントを務める超情報国家・<バベル>であります。

 これは国連に属するトップシークレットで、今日まで全くの部外秘でしたが、既に作戦は完全に任務を全うしました。そこで私が「勝利宣言」をなすべく現れたわけです。

 皆さん、これから世界は完全に変わります。

 もう国境も、戦争も、貧困も存在しません。

 皆、完全に平等で、完全な幸福が約束されています。…」


大統領の演説は粛々と、3時間に及び、聴いている民衆は事態を理解するにつれ、感動して、すすり泣き始めたり、フリーハグしあって歓呼の声を上げ始めたりした。

 

 世界中でこの「バベル革命」を祝うどんちゃん騒ぎが七日七晩繰り広げられ、貧乏や苦役から解放された全人類は、もぬけの殻の銀行から盗んできた札束を盛大に燃やして、キャンプファイヤーをおこし、遅くまで踊り狂った。


 ワン国連事務総長の目論見が見事に奏功して、人類の歴史には最終的な大団円が訪れた…そう思われた。


 が、しかし…!


 物語はそれで終わりではなかったのだ!


<続く>

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掌編小説・『国際平和』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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