後編 骨接ぎ屋 悪鬼を斬る

「そして、このヲチ水を売っている場所は奴等が仕切る賭場だ。昨日、アタイが殺った奴から情報を聞き出した。」


お竜さんの話を聞いて全てが繋がった。白牙組はお代官と手を組みヲチ水を売り捌いていた。その目的は倒幕という幕府の転覆。


そして、ここからはオイラの予想だが何もない土地を理不尽に地上げをしているのはヲチ水を作る場所の拡大。


更に地上げをお奉行に伝えたとしても門前払いされるのは代官による圧力……そんな所か。


「話はだいたい聞かせてもらったぞ。」


「クソ役人……」


「まぁ、そう睨むなよ万屋。」


どうやら圭史郎様は途中から立ち聞きをしていたらしく勝手口から上がり込み畳の上に座る。


「その、お竜と言う娘の言った通りだ。ひと月前に佐村近衛門って言う代官が俺の上役に着いてだな。なんかキナ臭い奴だから調べたら埃が出るわ出るわ。そして、今夜。その代官と白牙組の幹部が芸者遊びをするらしいな。」


すると、その言葉を聞いてお竜さんは直ぐ様に圭史郎様に頭を下げて言う。


「お役人様……どうかその芸者が私めが。」


「おいおい、アマ。1人で行く気かよ?危ねぇよ。」


「五月蝿い!コレは……コレはアタイの敵討ちなんだよ!!」


「ったく……強情だな。」


止めようとする万屋さんにキッと睨みながら強気な態度のお竜さんに圭史郎様は提案を持ち掛ける。


「何ならよ。万屋が女装して芸者になれば良いんじゃねぇの?ほら三味線が出来るんだし。」


「はぁ?!何でだよ?!何で俺が!!」


「そりゃあ……良い提案ですね。」


「大将もかよ?!ちっ……分かったよ!!女装でも芸者でも何でもなってやるよ!!ったく!!」


万屋さんはもう、この上ないヤケクソ気味で頭を掻きむしりながら座り込む。どうやら決まりみたいですね。


「じゃあ、オイラは賭場でヲチ水を見付けてかっさらって証拠として突き出しましょうね。」

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骨接ぎ屋 十蔵 藤田吾郎 @jokre

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