後編 骨接ぎ屋 悪鬼を斬る
「お竜さんは何故に白牙組に追われて居たのですか?」
「アタイの仕込みに感付かれたからだ。」
「仕込み?」
「コレだ。」
お竜さんは扇子を取り出し一見すると何処にでもある扇子だが……お竜さんは扇子から脇差しよりも小さい小刀を取り出す。
「なるほど。仕込み扇子か。大将の仕込み杖と同じで暗殺や奇襲ように擬似として作った仕込み扇子。他に仕込みの擬似として使うのは煙管や三味線だな。」
「なるほど……だいたい分かりました。つまり昨日、白牙組を暗殺した芸者とは、お竜さんですね。」
「……」
「別にお奉行につき出す気はありませんし。もし不安なら知り合いに役人様がいるので口利きしますよ。」
「どうしてアタイが白牙組を殺ったと?」
「芸者さんが持つような扇子に、その荷物は芸者さん商売道具って所ですかね?着物に白粉(おしろい)。それに、その仕込み扇子の刃に血の曇りがありますから。」
「そうかい。アンタって凄い洞察眼だね。」
「いやいや。少し周りより感が良いだけですよ。それよりも何故、白牙組を狙うのですか?」
「コレだよ。」
お竜さんは着物から白い包みを取り出した。オイラはお竜さんから包みを受け取り中身を開けると白い粉末。
「ヲチ水……ですか?」
「アイツらはそう読んでる。コレは……父上が作った薬だ。」
「お竜さん……貴女は?」
「アタイは元々は医者の娘。相模 良勘(さがみ りょうかん)の娘だ。」
相模 良勘。幕府お抱えの医者で何でも薬の知識や調合に関しては右に出るものは居ないとされた。そして6年前に何者かに斬殺されて一人娘が居たが親戚の家に預けられた。
そんな話を風の噂で聞いたが、まさかその一人娘がお竜さんとは……
「ほぉ~……その相模良勘の娘が何故に白牙組を暗殺するんだ?」
「……それは。」
お竜さんは幕府お抱えの医者である相模良勘の娘。良勘は謙虚な性格でどんなに周りから褒められても謙虚するばかり。
そして医者としての誇りを常に持ち誰からも慕われていた。
そんな父・良勘は幕府から新薬の開発と薬に関する資料を命令されて新薬の開発に没頭する。
その新薬とばどんなに弱り果てても身体が全快になる薬゙だそうで、そんな無理難題な幕府からの命令を良勘は1人の医者で、後世の医療者に伝える為にも快く引き受けた。
そして、血と汗の結晶で作り上げ完成が間近の時に相模良勘は斬殺されたそうだ。
それも帰り際に……
その時に良勘は新薬とその新薬の資料の全てを持ち出していたため全てを奪われたらしい。
それから、お竜さんは親戚の家に預けられ何か芸を身に付けて仕事をしたかった様だから芸者になったらしい。
それから月日は経ち白牙組の幹部を相手に酌や舞踊を踊っているとあることを耳にした。
白牙組の幹部ばヲチ水゙と呼び白い粉末に水を入れると紅色に染まり、それを使い軍隊を作り上げ倒幕を画策するという内容。
普通なら゙倒幕゙という台詞に驚くが、お竜さんが引っ掛かった台詞ば白い粉末に水を入れると紅色に染まる゙と言う台詞。
それは父・良勘の研究を少なからず覗いていた、お竜さんには見覚えがあり、更には白牙組はある代官を使って相模良勘を斬殺し薬つまりヲチ水を手に入れた。
それから、お竜さんは1人で白牙組と繋がりのある代官を調べあげ情報を手に入れてここにやって来た。
という大筋な話。
「なるほど。だいたいの事情は分かりました。そのお代官様の名前は?」
「佐村 近衛門(さむら このえもん)だ。奴は父上が新薬の開発に完成間近と聞き適当な下手人を使い薬の効果を試した。しかし、その時の薬の効果には色々と欠点があった。薬を飲んだ物は昼は特に異変が無いが、何故か夜。しかも月が出ている時に限って血を狂った様に欲する。」
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