第3話 侵入者と犠牲者
『ダンジョンニュースです。昨夜未明、ダンジョン内を探索中の自衛官1名がモンスターに襲われ死亡致しました。』
最初の犠牲者が出た。
犠牲となった自衛官は気の毒だとは思うが、俺はこれでダンジョンに対して危機感が芽生えるだろうと予想したのだがニュースは意外な事実を告げる。
ニュースキャスターの話では自衛隊はモンスターの大群に襲われ全滅を覚悟したのだが、大学生の
その二条君はどうやらスキルを使い不法に侵入してレベル上げを行っていたと供述している。
俺は迷惑な奴だと思ったが、国は二条君を探索チームに加えると発表
さらに二条君はイケメンだった為に事態は急展開
不法侵入した犯罪者が一変、アイドル的な扱いを受けるという事態に発展した。
男子高校生A「二条さんマジかっけー!」
女子大生B「ツカサ様素敵~♪」
ちなみに男子高校生Aは……察してくれ。
二条ブームが自衛官の尊い犠牲を忘れさせ、若者のダンジョン欲を大いに刺激し一般開放を呼びかける声が日に日に増していった。
(悪い流れだな…。俺の周囲だけでも忠告しておくか。)
まずは家族、特に妹の
となると当面の問題は男子高校生Aことアキラだ
アキラはダンジョンに強い執着と憧れがあり、ゲーム感覚で考えている様子がところどころに見られる。
一般開放が数十年先なら言わないが、二条ブームで一般開放までの期間が短縮されそうな予感がするので念には念をいれて釘を差しておく。
「………というわけでダンジョンは非常に危険だ!ゲーム感覚で考えているならやめておけよ。二条とかいうアホは運が良かっただけで死んでいてもおかしくなかった。絶対に無茶をするなよ?」
「もうわかったって!心配しなくても危ない事はしないって」
「ま、まあわかればくれたならいいんだが……。」
まだどこか軽い感じに見えるアキラの言葉を信じて渋々了解したが、やはり心配だ。
一回だけ命を救ってくれるアイテムやダンジョンから一瞬で外に出る巻物なんて物は異世界にもなかった。
ダンジョンは基本10階層ごとに転移の魔方陣があり1階層と繋がっていて、到達した階層には次回から1階層の転移陣からいけるという仕組みだ。
こういうところがゲームっぽいのだが制作者はわからないので文句の言いようもない
勇者の俺でさえ何度も死にかけたのがダンジョンだ
最下層にいたモンスターは魔王より強かったんじゃないかと今更思っている。
とにかくこれで自分の周りへの注意喚起は終わったと一安心していた矢先
九州あたりの高校生がダンジョンに不法侵入したとニュースで取り上げられた
そんな事件があった後でも第二の二条君になりたい者があとを絶たず、不法侵入する者は減るどころか増えていった
この事態を重くみた日本政府は、一般開放時期を来年の4月に決定すると発表しダンジョンに入る条件を提示した。
①ダンジョンへ入る為には探索免許(国家試験)が必要
②18歳以上である事
③ダンジョン内での生死は自己責任とする事
④ダンジョン内で手に入れた物は政府が買取または預かるものとする事
⑤最低4人以上で探索をする事
色々と穴が多そうな5箇条だと思ったが、ないよりはマシだと自分に無理やり言い聞かせた。
5箇条が発表されてからアキラは猛勉強し始めた
新たに立ち上げられたダンジョン省のホームページに探索者心得がずらりと並び、試験はその中から100問がランダムに選ばれ100問中95問以上正解で合格となる
試験は来年の3月から受付を開始する予定で、試験会場はダンジョンがある都道府県で行われる。
現在、日本のダンジョンは下記の12箇所発見されている
北海道・秋田・新潟・東京・千葉・愛知・京都・大阪・岡山・高知・熊本・沖縄
ちなみに自宅から一番近いのが千葉県市原市のダンジョンだ
[主人公は千葉県在住]
なぜ試験会場がダンジョンのある都道府県なのかというと
ダンジョンの近くに住む人は危険である為、近場で試験を受けて探索免許をとりレベルを上げて自分の身を守れという事
そしてダンジョンがない他府県の人にはあまりダンジョンに関わって欲しくないという意図があった。
あくまで私見での予想だが最初は試験会場が溢れかえるほど予約が殺到するだろう
免許が取れたとしても泊まるホテルの確保や遠征費で徐々に追い込まれていき徐々に人数は減っていくが、諦めの悪い連中はテント持参で遠征する可能性もあると思う
実際、異世界ではダンジョン周りにテントを張っている人は大勢いたので地球でも恐らく似たようなものだ
政府や都道府県の対応次第だと思うが自家用車などの来場規制も必要だろう
そして月日は流れ……。
探索免許の試験が始まる2023年3月まで時間は進む
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