第2話 資源の宝庫

ステータス騒動から一か月


ニュース番組のネタは主に『自衛隊のレベルが10になりました』だとか『地下2階のモンスターをゴブリンと名付けました。』とかに染まっていた。


ちなみに洞窟はダンジョンで怪物はモンスターと海外でも通じる呼び名に変更された


ステータスも日本に留まらず世界中に浸透していったが、スキルや魔法の存在はまだ公開はされていないのは危険だからだろうか?


まあ俺は誰かに教えたりはしないが、レベル1からスキルや魔法を使える奴もどこかにいるはずだから周りには注意しておこうと思う。


「もうすぐ夏休みだなぁ~」


「もうすぐって言ってもあと一か月あるけどな……。」


なんて会話をしていたある日、またも世界を震撼させるニュースが舞い込む


『まずはこちらの映像を御覧ください。』


テレビ画面には何の変哲もない森林が映っていた


(ああ、やっとたどり着いたのか……。)


『こちらの映像はなんとダンジョン内の映像なのです!ダンジョンの中に森林だけではなく空まであるというなんとも信じられない光景です!!』


(地下10階以降は洞窟エリアから変わるのは異世界共通っぽいな。)


『さらに驚くべき事に自衛隊が木を伐採したのですが、なんと数時間で元通りになっていた事が確認されました!!』


(木だけじゃなく作物も無限に取れるからダンジョン栽培は異世界では当たり前に国が管理してやっていた。広い階層だと街ができているところもあったなぁ~。)


テレビではコメンテーター数名に話が振られ、農作物なども育てれば…みたいな話が繰り広げられていた。


(まあ普通はそうなるよな。)


―――――――――――――――――


なんやかんやでさらに一か月が過ぎ夏休み直前


「あー、今年も男だらけの水泳大会になりそうな夏2022」


「ほんとそれな!なんで幼馴染が男なんだよっ!!アキラ今から性転換してこいよ。」


「いや、性転換しても男だから……。」


虚しい会話をしながら下校中、俺たちの目の前で事件は起きる


それは一見なんの変哲もないオジサンだった


オジサンの前方には信号待ちの2人の女子高生、後方には俺とアキラ


オジサンの何気ない呟き「風よ吹け」が俺とアキラの耳に入る


すると突然風が吹き前方にいた女子高生達のスカートが捲れてパンテーが……。


「「きゃっ!!」」


オジサン+他2名はパンテーに釘付けに……


(いやいや、違うだろ! このオジサン風魔法使ったな……。)


オジサン含め俺達は女子高生に睨まれ再び帰路に着くと


「なあ優希。さっきのオッサン風よ吹けって言ってたよな?」


「ああ、そうだな。」


「あれってさ、たぶん魔法じゃないかと思うんだけどどう思う?」


(こいつアホなのに感だけは鋭いんだよなぁ。とりあえず話は合わせておくか。)


「魔法かどうかはともかく、パンテーが見れる超能力的な何かじゃないか?」


「だよな!ということは俺にも使える可能性があるんじゃないか?」


「可能性はあるかもしれないが具体的にどうやるんだ?」


「わからん!あのオッサンに聞いてみるか?」


「もういないから無理だ。」


「ちっ!」


「そんなにパンテーが見たかったのか?」


「ちげーよ!!ファイアーとかサンダーとか色んな魔法使ってみたいじゃん!」


「戦いはノーサンキューだけど空とかは飛べるなら飛びたいかもな」


(ほんとはもう飛べるけどスキルが普及してきたら覚えたって事にしよう。)


アキラはその後もあんな事いいな出来たらいいなと妄想を膨らませていた


そんなアキラ少年の口は軽く、終業式までの間に学校中に魔法の事が広まっていた。


そして待ちに待った夏休み


俺とアキラは一番近いダンジョンを見に来ていた


このダンジョンは運良く港付近に出現したので広いスペースを確保できているが、住宅街のど真ん中に出現したダンジョンもあるらしいので近隣住民は引っ越しを余儀なくされたとかなんとか…。


ダンジョンの周りは金網が張り巡らされていて中に入る事はできない、自衛隊による警備は厳重で銃を持った自衛隊員も数名見かけた。


(コンクリートの上にゴツゴツした岩肌の入り口だけが出現したみたいな感じで違和感しかないな。)


「ダンジョンにはいつ入れるんだろ?」


(またアホな事言いだしたよ……。)


「さあ?数年もしくは数十年先じゃないか?」


「数年ならギリ、数十年はムリ!」


「なんでそんなにダンジョンに行きたいんだ?」


「え?レベル上げに決まってんじゃん!」


アホ回答に頭が痛くなりそうだったが、命について30分ほど講義してやると渋々レベル上げを諦めてくれた。


(ダンジョンは命がけだ。アキラの他の連中の中ではどこかゲーム感覚に考えてる節がある。恐らく犠牲者が出るまでは誰も理解しないだろうな。)


この時の俺の考えがすぐに実現するとは、まったく思っていなかった。

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