ここには英雄はいない……だが、それが良い!

戦争という巨大で無慈悲な非日常の中、淡々と、だが時にしたたかに“日常”を生きる主人公ハンスのキャラクターが良い。
戦争の悲惨さ、あるいは東欧の諸国家の複雑な政治的事情、などといった事柄も盛り込みつつ、重苦しくならないよう、難しくなりすぎないよう、絶妙なバランスで描かれている。
物語はまだ半ばだが、主人公ハンスも、マリーヤも、エリザヴェータも、僕にとってはただの紙の上の文字だけの存在ではないように感じられる。彼と彼女らが、この戦争を生き延び、幸福になれるよう切に願ってやまない。