DON'T PRESS THE BUTTON

 ぼくは、また、ボタンの前に戻っていた。


 もう一度、ぼくは子鬼に会いたかった。

 はじめから、やり直したかった。

 今度は、子鬼を岩にしたりはしない。

 子鬼と一緒に、篝火の周りで踊るのだ。


 ぼくは、再びボタンを押そうとした。

 が、すんでの所で、ボタンが違うことに気が付いた。


 前のボタンはその下に【PRESS THE BUTTON】の表示があったはずだ。

 今度のボタンは【DON’T PRESS THE BUTTON】とある。


 ならば、このボタンを押しても、やり直すことはできないのだろうか。

 押すなというこのボタンを押したら、どうなるのだろう。

 なにが、はじまるのだろう。

 

 しかし、ボタンを押さなければ、なにもはじまらない。

 子鬼には二度と会えないのだ。

 ボタンを押す以外に、ぼくは、ぼくの愛しい子鬼に会う術がない。


 ボタンの前で身動きのできないぼくの頭の中で、ケラケラと藁人形が笑っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

BUTTON(藁人形は笑う)  水玉猫 @mizutamaneko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ