物体と化す
柊三冬
第1話
振り向くとそこには君がいた。
こちらを向いて手を伸ばし、必死になって走ってきたことがひと目でわかるほど髪も服装も乱れている。
バレないように、とか意識はしていなかったけど、気づかれるようなことをした覚えもない。
何故ここにいるとわかったのだろう。
足を伸ばすと体がふらついた。
君と一緒に、知らない大人たちが私の方を見る。
君はあと数秒で私の元にたどり着くだろう。
駅のホームにアナウンスが響く。
疲労に染った顔が上塗りされるのに時間はかからない。
───ガタンゴトン。
重力に身を任せると、染み付いた痣に痛みが走った。
視界が眩しい。
耳障りな音が響く。
背中に汗が滲んだ。
マフラーも手袋もつけているのに。
これは執着なんかじゃない。
言い訳じゃないけど、もし君に尋ねられたらこう言うよ。
───この冬の残暑は酷かった。
物体と化す 柊三冬 @3huyu
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