第2話 世界を摘み取る剣閃


「あんなに大きな化け物をあっという間に……騎士様は、本当にお強いのですね」

「我が半身ですから、強いのは当然です。でも、惚れてはいけませんよ。我々と貴女は、住む世界が違うのですから……」

「い、いえ、滅相もありません!

 ……それより天使様、何か変です! 地面に服が散乱しております。それに、王都だというのに、人通りが……皆、何処かに避難しているのでしょうか?」


 統夜がドラゴンを浄解して吸収すると、閑散とした広場に戻る。薄暗い天気の中、稲光で時折照らされると、広場のあちこちに服が散乱していた。それも、上下一式、老若男女問わず、鎧までも……


「(統夜、急いだほうが良いわね。この大きな街の人間全部が歪獣化しているのかも……さっきのドラゴンは、何人分でしょうね?

 それと、あの塔に吸われて、地脈からの調査が出来ないの。索敵も近くしか感知出来ないけど、塔を守るように群れているわ)」

「あの塔から潰すか」


 統夜が一番近くの塔を指差し、方針を決めたところ、異議を唱えるものが居た。


「お待ち下さいませ、天使様! あの塔が祈祷の為に建てられた物ですけど……」

「ええ、分かっています。地脈から吸い上げたマナを、凝縮しているのでしょう。私の魔法で壊せないので、物理的に……」

「いえ、そうではなく!

 塔は5つ作られたと聞いています! 城壁の4隅と、王城の玉座の真上だと……怪しくありませんか?!」


 シスターが指差した方向、王都の中心の王城には、尖塔が立っていた。しかし、他の塔の用に光っている宝珠はない。時折、雷が塔の尖端に落ちているだけだった。


「(今の見た?! 雷の魔力が塔の内部に落ちていったの……あれは、只の避雷針じゃなくて、マナの吸収装置? えーっとそうなると4つの塔は……

 どうする? 先に塔を壊せば黒幕の思惑を潰せるかも? 少なくとも、食事の邪魔は出来ると思うよ)」


「……元凶はその玉座か。

 娘、城の塔の真下で相違ないな」

「は、はい! お父様も訝しんでおられましたから、良く覚えております。遠くに見える、3階のバルコニーの奥が玉座です。恐らく陳情に行ったお父様もそこに……いえ、王都がこの惨状では、望みは薄いでしょう」


 門前の広場を見るだけでも、王都の荒れようは目に取れる。衛兵は疎か、人っ子一人居ない中、黒い歪獣が闊歩しているのだ。


 そして、シスターの諦め掛けた憂い眼差しは、2人にとって見慣れたものであった。

 ……否、救おうとして手から零れ落ちるのは、見慣れたく無い。

 そんな思いが、統夜に決断させた。


「玉座を目指す。行くぞ〈雷駆輪〉!」


 言葉少なくも、方針を口にした統夜は、足元に雷の車輪を出し走り出す。大通りを先行した。

 しかし、ドラゴンを倒した事で注目を集めたのか、脇道から続々と歪獣が溢れ出す。それも、黒い獣型だけでなく、人型も混じって、群れを成した。

 統夜が建物の壁も使い、縦横無尽に走り回り、切り捨てて行くが遅々として進まない。それを見たフィーアは、馬頭上から浮かび上がり、振り返る。


「……貴女は帰りなさい。ここから先、命は保証できないわよ? 私が最優先で守るのは、我が騎士なのですから」

「いいえ、ここまで来たのです。最後までお供させて下さいませ。わたくしにも神の御加護がありますから、身を護ることは出来ます。

 穢れ無き聖なる光よ、邪悪なる魔の者から、我らを守る鎧となれ、〈ホーリープロテクション〉!」


 馬ごと薄い膜に包まれる。フィーアからすれば、拙い低級魔法ではあるが、覚悟は見て取れた。言うことを聞かない子供を見るような母親目線で、こう返す。


「好きにしなさい。死んでも知りませんよ。

 私は、我が騎士の援護をします」


 浮かび上がったフィーアは羽を広げて、詠唱を始める。羽が白く輝き始めた。


 「嘆きの川に降り立つ愚か者に告げる、光も、風も、命も、等しく停滞せよ。悠久の氷棺ひょうかんにて、祖の形へと還れ。〈コキュートス〉!!」


 力ある言葉で白い羽根が舞い散ると、大通り一帯がブリザードに見舞われた。生きとし生ける者を凍らせる極寒の吹雪は、歪獣をも凍らせる。黒い群れは瞬く間に氷柱の林となり、粉々に砕けて雪と散った。

 そして、吹雪が晴れると、氷漬けになった大通りの真ん中に、氷のが出来ていた。


「では、行きますよ。玉座への直通です」

「ええぇ!!」


 再びフィーアを頭の上に載せた馬は、命令に従い階段を駆け登り始めた。緩やかな階段なので踏面は広く、魔力で身体強化された馬は、文字通りに駆け上がるのに、そう時間は掛からない。


 バルコニーに辿り着く頃には、後ろから追い掛けてきた雷の車輪が追い抜き、玉座へ続く扉を斬り刻み雪崩込んだ。



 玉座の間は暗く、時折ステンドグラスから稲光が光るのみ。赤い絨毯の上には、服や鎧兜が散乱している。


「天使様、降ろして頂けませんか?」


 シスターは、縛り付けていた魔法のリボンが解かれると、馬を降りて兜を手に取った。


「やっぱり、わたくしの領地の騎士団の物です! お父様……」

「騒がしいな。表を騒がせていたのはお前達か」


 暗闇から男の声が響いた。次いで床を叩く音が聞こえると、壁に並んだ燭台が順に灯っていく。明かりが増えるにつれ、玉座に座った男が姿を表した。黄金に輝く王冠に、黒い錫杖、豪奢な服を着た壮年の男が、煩わしい物を見るかのように、見下ろしていた。


「小さな翼だが、貴様も天使か? 全く、後少しで世界が手に入ると言うのに「お父様?!」」


 王様ぜんとした男の言葉遮ったのは、兜を取り落としたシスターだった。


「お父様……生きていらしたのですね……

 でも何故、王冠を被っていらっしゃるの? 陛下はどちらに……」

「ああ、この入れ物の娘か。この街の人間は全て生贄にした筈なのに、天使に助けられたか?

 これはいかん。食べ残しはイカンなぁぁ」


 玉座から立ち上がった男は、錫杖を振るう。すると、黒い錫杖の先端から黒い蛇が伸びた。その黒い蛇が口を開け、シスターを襲う寸前、切り飛ばされた。

 太刀を振り上げた統夜は、残像を残す程の速度で玉座へ近寄り、斬りつける。


 しかし、錫杖で切り払われた。

 流れる様に切り返し、2度3度と剣戟が続く。押しているのは統夜の方。4度目の剣閃が、男の首を捉える寸前、左腕を盾にして後ろへ跳躍して逃げた。


 統夜は追撃を掛ける事が出来なかった。なぜなら、切り落とした腕が黒蛇へと変じ、襲い掛かってきたからだ。


「闇を払いし浄解の光よ! 罪深き者を打ち据えよ!〈ホーリー・ピラー〉!」


 光の柱が統夜ごと、黒い蛇を飲み込んだ。黒い蛇は霧散して消えていくが統夜は無傷、むしろ剣が光を吸収して輝き始める。フィーアの援護攻撃兼、エンチャント魔法だ。


 そして、玉座に背中を打ち付けながらも、再び座った男は顔を歪めた。

 同時に統夜も、光る太刀を構え直す。


「その剣、俺の呪いが効かぬとは……」「剣で浄解出来ない黒い錫杖……」


「「そいつは、翼か!!!」」


 同時に相手の正体を見抜いた。


 天使の象徴でもあり、力の源でもある翼。空を舞い、浄解や魔法を行使するだけでなく、熟練の天使であれば切り離して、己が一番扱いやすい武器へ変じることも可能。

 統夜が空を飛ぶ利点を捨ててまで太刀を選んだのは、魔法よりも近接戦闘を得意とする戦闘スタイルな事も一因だ。



 玉座の男は笑っていた。


「神め、天使二人とは、大盤振る舞いしたな。

 しかし、それも手遅れだ!」


 黒い錫杖が掲げられ、黒い蛇が真上に伸びる。玉座の真上に開いた穴、そこから宝珠が落下して来ていた。


「塔の先端の……? アレは駄目! 統夜!!」

「〈閃光刃〉!」


 統夜が光る剣閃を飛ばし、黒い蛇を切り飛ばす……が、しかし、別方向から伸びていた、別の黒蛇が宝珠を丸呑みした。


 蛇が膨れ上がり大蛇と変貌し、尻尾側で繋がっていた男の背中から、白い青年がと出てくる。

 男は糸が切れた操り人形の様に、膝から倒れ伏した。王冠がカラカラと音を立てて転がっていく。


「お父様!!」


 髪も肌も白い青年だが、身に纏った法衣は真っ黒。そして、大蛇と錫杖が姿を変え、一対の黒い翼となる。


「その黒い翼、やはり堕天使ね! 神に作られたにも拘わらず、呪いに呑まれ、裏切った神敵!」

「吠えるなよ、神の狗が!! 2対1だからといい気になるな!」


 堕天使の黒い翼から、全てを拒絶する闇が広がる。それに対し、フィーアが白い翼で守りの結界を張った。互いを中心とした力場同士が衝突するが、守りの結界が破られる事はなく守りきる。

 その様子に、堕天使が忌々しそうに舌打ちをするが、部屋の隅を見てニンマリと笑った。


「一つでは押しきれんか……だが、お荷物がいてはナァ」


 黒い羽が大蛇へと姿を変え、部屋の隅に飛び掛かった。そこには、父親の亡骸に縋り付いていたシスターがいる。


 大蛇が大口開けて呑み込む寸前、投擲された太刀が突き刺さる。その虚を付き、白い結界が広がりシスターを包み込む。


 それが狙いだった。


 天井の穴からは宝珠が3つ、連なって落下してきている。残る黒い翼を大蛇に変え、天井に放った堕天使が高笑いを上げた。シスターを守った2人には、妨害する術がなかった。


「ヒャハハハッ! お優しい馬鹿共だなぁ!」


 宝珠を喰らった大蛇と、堕天使の身体が膨張する。膨大なマナの塊は、堕天使の位階を押し上げ、新たな黒い翼を生み出す。2対4枚の黒い羽が広げられた。


「これで俺様は大天使に匹敵する力を得た! この世界を喰らい、神をも超える存在と為るのだぁ!!」


 黒い翼が、姿を変える。しかし、蛇ではない。太く、獰猛な牙が並んだ大口……それは龍のアギトだった。背中から生えた4つ首が、一斉に炎のブレスを吹き出す。


 白い結界は少しだけ耐えたものの、獄炎の如きブレスに消し飛ばされた。シスターと馬も消し炭となり、余波で城の壁が破壊され崩れ落ちる。


 煙が収まっていくと、瓦礫埋もれた小さな結界が現れた。しゃがみ込み、白との羽で自身を守った統夜だった。その腕にはフィーアが抱えられている。


「チッ、2人数分の翼で耐えたか。

 しかし、貴様の翼、半分は呪いで黒い……諦めて呪いに呑まれよ。そうすれば、我が配下に加えてやらん事もない」

「断る」


 迷うことなく一言で断じると、瓦礫を翼で吹き飛ばし、再度太刀に変じて構える。そして、その肩には焦り顔のフィーアが浮いていた


「(不味いよ! 本当に大天使クラス! 切り札切る?!)」

「(発動まで時間を稼ぐぞ、何分だ?)」

「(10分! 魔法で援護するけど、それまで耐えて!)

 天翔ける光の姉妹達よ、呪いに呑まれし不浄を、汝が聖槍で撃ち滅ぼせ、〈ヴァルキリーズ・ジャベリン〉!!」


 白い羽が生み出した魔法陣から、光の玉が現れる。上空に浮かび上がった玉から、光の槍が射出された。

 設置型の自動攻撃魔法だ。一定時間毎に9回、光の槍を射出する。

 光の槍が龍の首に刺さるのと同時に、統夜も〈雷躯輪〉で加速した。


 牙を避け、ブレスを潜り抜け、首を切り裂き、首を足場に、時には空中を飛ぶ光の槍を足場にして駆け回る。羽の1枚が呪いで黒くなっている統夜は、空を飛べない。

 しかし、勇者時代に鍛え上げた剣技と体術で、3の龍の首と互角に渡り合っていた。



「〈月天・朧斬月〉、〈竜麟断〉!」


 幻影の刃と太刀が、最後の龍の首を挟み込むように両断し、切り飛ばした。斬り落とされた首は、霧散化して堕天使に戻っていく。


 戦闘開始から8分、時間稼ぎの筈が、龍の首を殲滅していた。しかし、統夜は油断無く太刀を構え直した。何故なら、堕天使は玉座に座ったまま、頬杖を突いて見ているだけだったからだ。


「見事、見事。

 しかし、つまらん男だ。そこは勝ち誇って油断しろよ。勝ったと思ったところを、絶望に突き落とすのが最高なのによ。

 ……喰らったぜぇ」


 その言葉と同時に、地震が起きた。

 否、世界が震えていた。


「アンタ! 種を、世界樹の種に手を出したの!! この世界を壊す気!!」

「ヒャハハハッ! 言っただろう、世界を喰らうってなぁ!」


 堕天使飛び上がると、背中から1本の龍が地面に向かって伸びていた。それは床を、地面を掘り進み。統夜が龍の首を倒すごとに、地中の龍を伸ばしていたのだ。

 そして、世界の中心たる種を喰らい、宝珠とは比べ物に成らないほどのマナを手にした。



 堕天使が、爆発するように膨れ上がった。それは膨張を続け、城を吹き飛ばし、街を押し潰す。広大な王都が巨大な竜によって滅んだのだった。


 一方、統夜とフィーアは、王都の外まで弾き飛ばされていた。翼でガードし着地するが、地震は続いている。そればかりか、至るところに地割れが起きていた。

 幾度となく、似たような光景を見てきたフィーアは憤慨する。


「むー、こうなったら、摘果するしかないじゃない! 今回は赤字よ!!」

「準備は?」

「今出来た! いっくよーーー!!!」


 フィーアが翼だけでなく、全身を輝かせる。背中の翼が順に外れ、周囲をクルクルと回り始める。1枚、2枚と続き、人形の体からも羽が出てくる。計6枚の羽が、統夜を中心に回り始めると、人形は糸が切れたように落下した。



 王都を下敷きにした竜が動き始めた。背中からは龍の首が次々と生えてくる。伸びた首は全部で8本、神話の幻獣、八岐の大蛇だった。

 王都の外の光を見たそいつは、狙いを定める。8本の口からレーザーを撃ち出した。8本のレーザーが捩れ、収束する。 巨大なレーザーは統夜を飲み込み、その背後まで一直線に滅びをもたらした。それには、シスターの街も含まれていた。

 想像以上の破壊をもたらした威力に、八岐の大蛇は笑いを堪えきれない。


「クックックッ、天使は殺した。しかし、まだ神には届かんな。他の世界も喰らって……」

「届くわけ無いだろう」


 上空から声が響いた。

 八岐の大蛇が8本の首で見上げると、そこには4対8枚羽を広げるの統夜が居た。翼の浄解の光で、上空の黒い膜が晴れ、そこだけ青空を見せている。


「な、なんだその姿は! 8枚など、神ではないか!! 何故、実の中に居る?!」

「神は世界の中に入れない。只の大天使だ。ただし、2人分の翼の相乗効果で、神に匹敵するがな」


「戯言を吐かすなぁ!!!」


 八岐の大蛇が再度、収束レーザーを吐くが、統夜に届く前に分解され、8枚羽に吸収されていった。

 唖然とする八岐の大蛇の頭上に、巨大な剣が出現する。8枚羽を束ねた翼状の剣は、光の羽根と刀身を伸ばし、巨大化していく。切っ先が世界を飛び出したところで、無慈悲に振り下ろされた。

 圧倒的な浄解の光に、気圧された八岐大蛇は動けない。


「終焉の剣にて、マナへと還れ!」


 光の翼剣は全てを斬り裂いた。八岐大蛇も、王都も、大地も、大陸も、黒い膜も、世界そのものも……


 そして、世界樹の枝から切り離された世界が崩壊し始めた。斬られた断面から、翼剣の浄解の光であらゆる物が分解され、魂とマナに還っていく。それを、翼剣を解除した統夜が、8枚翼で吸収し始める。中空に広がるマナの光が、天の川のように流れて翼に還っていった。



 これが、大天使に課せられた仕事の一つだ。歪みから世界を救えなかった場合、実から枝へ歪みが逆流する前に摘み取り、まだ使える魂とマナをリサイクルする。


 8枚羽が吸収したマナと魂は、統夜の身体を通して凝縮される。胸の前で合掌した手の中に、虹色の魂魄こんぱく結晶が精製され、徐々に大きくなっていく。それと同時に、翼が黒く染まり始めた。一つの世界分の歪んだマナは、翼剣をもってしても全て浄解出来る訳が無い。その為、魂魄結晶へと濃縮する前に、翼をフィルターとして歪みを除去する。翼に溜まった歪みは呪いとなり、翼を黒く染め、大天使としての力を蝕む。言わば世界を滅ぼした事への呪いである。


 実の全てが分解され、巨大な魂魄結晶が精製され、一つの世界が終わりを告げた。

 憂いを帯びた顔の大天使は頭を振ると、迎えに来た船に戻って行った。




 世界樹の根本には神の住まう城がある。城門から出てきたのは一組の男女。男の方は、黒髪に4枚羽に戻った統夜で、羽が白く戻っている。その統夜と腕を組んで歩く、可愛らしい白いドレスを着た4枚羽の金髪少女が、ホクホク笑顔で話し始めた。


「何とか黒字になったわ~。羽を浄化する分も上乗せさせたし、大勝利よね!」

「あぁ、フィーアが事前交渉しておいたのと、堕天使の件の口止めが効いたな」

「ここの担当神、天使が5人も行方不明なのを隠していたからね。契約の不備を突けば、こんなものよ~」


 二人は談笑しながら、自分達の船に戻ると、船の動力炉でもある保管庫に向かった。その装置に報酬として手に入れた、手の平大の魂魄結晶を投入する。これで、2人が自由に使えるエネルギーとなるのだ。

 それとは別に、フィーアが胸元から爪の先よりも小さい魂魄結晶を取り出した。


「あのシスターちゃん、やっぱり助けられなかったね」

「気に病むな。元より救える可能性が低かった世界だ」

「そうは言ってもね……この中で待ってなさい。いつか、私達が作る世界に転生させてあげるからね」


 フィーアは棚に並ぶ瓶詰の一つをとり、シスターの魂の結晶を中に入れた。瓶の中には同様の結晶が沢山入っており、同一の瓶詰も沢山並んでいた。それは、2人が救えなかった世界から救い上げた、協力者達の魂魄結晶だ。

 暫く、物憂げに瓶を眺めたフィーアだったが、棚に戻すと笑顔で振り向いた。


「よし! これからも頑張ってお仕事して、昇神を目指そう!」

「ああ、勿論だ」

「そうと決まれば……先ずは、お風呂行こっ! 統夜も疲れたでしょ、背中流してあげる!

 あ! ファーちゃん、お出迎え?! お利口さんだねぇ。ヨシ、一緒にお風呂……待てぇぇ、逃げるなぁぁぁぁ」


 フィーアは猫を追っかけて、部屋を出て行ってしまう。日常に戻って来た事に統夜は苦笑して、その後を追った。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

近況ノートの方に、後書きと裏設定などを書きました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神退窮まるユグドラシル ~大天使のお仕事は摘果作業?!~ 泥酔猫 @dmonokira

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ