13話 意図せぬ再会~サバイバルグッズ~
「俺はプリンな。よろしく! あぁ、名前は気にしないでくれ。プリンが好きなだけだ」
そう言って男――プリン――はゲラゲラ笑い中へ入って行った。
それにしてもプリンって……ネーミングセンスない。まぁ、それはいいか。
「私は……テン」
「姉ちゃん、料理とか出来てんのか? ゲームの世界でも腹は減る。料理できなけりゃ大変だろ?」
確かに。この世界来てからご飯はまだ食べてないけど。
どうするか考えないとな……。
最初はお腹減らないって思ってたけど、それは私の勘違いだった。
「ちょっと付いて来いよ」
プリンはそう言って小屋の外へ歩いて行く。
そしてインベントリから何かを取り出した。
「なに、これ?」
私がそう聞くと、プリンは満面の笑みで答えた。
「これはなぁ……サバイバルグッズだ!」
プリンはどや顔でそう言ったが、私にはよくわからなかった。なんでこんなものを持っているのだろうか。
「だから、何? これ……」
何故こんなものを持っているのかという意味の「何?」だったのだが。
プリンは実際にやって見せ、使い方を説明した。
畑に出来ているトウモロコシを一つ取り、サバイバルグッズの一つ、簡易料理セットっていうやつで焼き始めた。
「これで焼きトウモロコシができる。これは簡単なやつだけど、これに付いてる鍋を使えば煮る事もできる。こいつは何でもできるぜ?」
すごい! ゲームだと、この小屋にもある料理鍋を使わないと料理が出来ない。
それがいつでもどこでも出来るなんて……! それに簡単。
まぁゲームだとお腹が空くって事もなかったから、私はあんまり料理鍋を使った事はないけど。
「次にこれはテントだ。このテントは優秀でボタンひとつで一瞬で立ち上がる」
そう言うとテントに付いているボタンを押した。
すると本当に一瞬にしてテントが立ち上がる。
「なんでこんなの持ってんだ、って顔してんな? まぁそれは……秘密って事で! このサバイバルグッズ、テンにやるから理由は勘弁してくれよな」
そう言ってサバイバルグッズを笑顔で手渡した。
まぁぶっちゃけ、持ってる理由はどうでもいいんだけど、なんでこんな便利なものくれるのだろうか。
「え、いいの?」
私が聞くとプリンは優しく微笑み答えた。
「あぁ、持っていけ。別に俺はそんなのなくても生きていけるしな。男だからな。姉ちゃん何も出来ねぇみてぇだから、せめてそれだけでもあれば楽になんだろ」
少し嫌味っぽかったけど、サバイバルグッズをくれるという事で、私はありがたくそのサバイバルグッズを貰い、自分のインベントリにしまった。
「じゃあな。姉ちゃん町に向かってんだろ? 今度は気ぃ付けな」
そう言うと、プリンはどこかへ歩いて行ってしまった。
私が思ってる程、悪い人じゃないのかな。ただの酒好きのおっさん?
なんか見た目とか出会いが最悪だったから嫌って思ってたけど、実はいい人……?
ちょっとだけなら信用できるかも。
まぁ、プリンといたくなかったのはもう一つ、理由があるんだけどね。
体格がよくて無精髭、それにいつも煙草を咥えている。
大輔にそっくりなんだよね。格好も雰囲気も。違うのは髪型くらいかな。
だから私は、大輔を思い出したくなかったから一緒にいたくなかった……。
大輔の陰を感じてしまうと、甘えて頼りっきりになってしまうかもしれないから。
それに大輔には、
――俺以外誰も信用するな。
そう言われていたから。
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次の更新は09月28日
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大好きなゲームの世界に転移したニートは本領発揮する TEN @TEN_6
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