12話 意図せぬ再会~ガンマニア~

「きゃァァァ――」


 来ないで来ないで!


 私は逃げるしかなかった。

 グールは一匹じゃない。

 大きな声を出したせいで、他のグールも次々と姿を現す。


 沢山のグールが私目掛けて全力で走ってくる。

 食い殺す気満々だ……。


「もう、いつまで追ってくるのよ!」


 と、その時――


 遠くから銃声が聞こえた。

 ドドドド――ピュゥン――ドドドド――ピュゥン。

 この音は、アサルトライフル? リアルな銃は使えなくても何故か音で判別できる。

 って、そんな事より……銃声?


「……え?」


 私は辺りを見渡し、音がする方を眺める。するとあの小屋の男が、煙草を加えながらアサルトライフルを乱射していた。


「――うわっ、危なっ!」


 私は被弾しないように咄嗟にしゃがむ。

 あの男は、私に被弾するかもとか考えているのだろうか。

 とか思いつつも、内心安堵している私がいる。


 ――ワンワン!


 犬は男の方を向き吠え続けている。


「危ないって!」


 私は犬を手繰り寄せると、岩陰に隠れるように犬を抱きしめて縮こまった。


「姉ちゃん、どいてな。そんな所いると誤射しちまうぞ」


 私は急いで近くのボロ車の陰に隠れて、銃声が止むまで身を潜めていた。


 犬を抱きしめる……いや、しがみついているの方が正しいか。そうする事で、恐怖を打ち消せるような気がした。


 男は楽しそうに銃を乱射している。

 実際にあんなグールを目の前にして、よく笑って撃てるよね……。


 しばらくすると銃声が止み、男が近付いてきた。


「なんだ姉ちゃん。銃の撃ち方も知らねぇのか? 教えてやるからこっち来な」


 そういうと男は小屋の方に歩き出した。


 私は、銃やL.A.T.E.の使い方を教えてもらえると思い、辺りを不自然に見渡しながら、渋々その男に付いて行った。


「まずは姉ちゃんが持ってる銃、見せてみろ」


 私は言われるがまま、持っている銃を渡した。


「へぇ、10ミリピストルか。まず銃ってのは、安全装置を外さなけりゃ使えない。いくら撃っても弾は出ねぇぞ。10ミリピストルの安全装置はここに付いてる」


 男はそう言って、持ち手の上に付いたポッチみたいな所を指さした。


 そしてカチカチと上下に動かし、実際にやって見せた。


「ここを下にすると安全装置解除だ。逆に上にすれば安全装置がかかっちまう。弾は出ねぇ。わかったか?」

「へぇ……」


 私は、男からピストルを受け取ると、カチっと下に動かして安全装置を解除し、一発撃ってみる。


「おいおい、弾の無駄遣いすんなよ」


 なんで助けてくれたんだろう……。

 銃の扱い方を教わりながらも、私の脳裏にはその疑問が広がっていく。


「あ、ありがとう」


 私は教えてくれた恩として、一応お礼を言っておく。まだ信用したわけじゃないけど。


「そういや姉ちゃん……L.A.T.E.も使ってなかったよな? ついでだから教えてやる」


 そう言って男は、自分のStayGirlステイガールの上に付いているボタンをカチっと押した。


 男の視界は私にはわからないから、時間の流れを感じる事は出来ないけど、どうやら男の中では流れが遅くなっているようだ。


「ここ?」


 私も男の真似をして、StayGirl上のボタンを押してみた。


 ――すると時間の流れが遅くなる。


 男に銃を向けて、頭や体に合わせてみると命中率が表示された。

 すぐ目の前で銃を向けているから、命中率は全部位100パーセントだ。


「おいおい、俺を撃つなよ?」


 男は向けられた銃口を掴み、体をよじらせる。

 誰も撃とうとは思っていない。例えゲームの世界でも、人殺しにはなりたくない。


「色々……ありがとう」


 私は照れくそうにそう言うと、小屋を後にしようと男に背を向ける。


「おい、ちょっと待てよ」


 私はまた、何か要求されるのかと思いヒヤヒヤしていた。

 銃の撃ち方もL.A.T.E.の使い方も教えてもらったし、何より助けてもらったし……。


「な、なに?」


 恐る恐る男に目線を向ける。


「お前、ここに来たばかりか? 中、入らねぇか?」


 私は助けてもらった事もあり断りずらく、少しくらいならと思い寄っていく事にした。


「……うん」


 男は私の返事を聞くと、すぐに笑顔を見せ、小屋の扉を開けた。






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 次の更新は09月27日16:03

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