第62話 ハロルドと結婚しました

まさか、私を捨てた父が来るなんて思ってもいなかった。何しに来たんだ? ここまで。


「これはこれは婿殿。お久うございますな。いや、今はベルファストの王太子殿下とお呼びしないといけませんかな」

「いやいや、舅殿におかれましてはご健勝なようで、私としても喜ばしい限りです」

「そう仰っていただけるとありがたいですな。娘は元気にやっておりますか」

「はい。元気にすごされていますよ。なあ、キャサリン」

私はハロルドに振られたが、無視して横を向いた。


「キャサリン」

ハロルドがもう一度言うが、私はムッとしてもう一度無視した。


「なにか機嫌が悪そうですな」

「いやあ、色々ございまして」

父の言葉にハロルドは笑って誤魔化している。


「まあ、シェイフィールド卿、若いものはそれだけ色々あるのでござるよ」

「本当に左様で御座いますな」

エイブさんと伯爵が分けのわからないことを言うんだけど。


「いやあ、このようなじゃじゃ馬ですが、殿下にもらって頂いて感謝の言葉もございません」

「人を売っておいてよく言うわね」

私がぶすっとして言った。


「何をいう、キャサリン。我が国の王太子に婚約破棄されてどうなるかと心配していたのだぞ。そこにもらって頂けそうな、御仁が現れたので、頼み込むのに必死だったのだ」

その言葉に私はムッとして見たが、


「殿下、今更婚約話だというお話は無しですぞ」

「いや、舅殿、それはない」

「左様でございます。キャサリン様は我が国の聖女様でございます。此度も貴国からの夜襲に一撃で対処頂きまして」

なんかエイブさんがさらりととんでもない事を言ってくれるんだけど。女性に夜襲に一撃で対処ってそれはないんじゃない。事実だけど。


「王族に二言なしということで宜しいですな」

でも父はそれに抗議もせずに全く無視していってくれるんだけど。


「当然です」

「ちょっと私の意見は無いわけ」

私がムツとして言うと、


「何を言う、キャサリン。お前、我が国では恐竜娘と呼ばれて恐れられておるのだぞ。」

「きょ、恐竜娘?」

私はぎょっとした。それ人間じゃないじゃん。


「そうだ。そのお前を奇特にもハロルド様はもらって頂けとのことなのだ。これを逃したら嫁にはいけんぞ」

「そ、そんな」

私がショックを受ける一方で、


「いや、舅どの。キャサリンと婚約破棄するなどありえませんから」

「そう言っていただけると有り難い。出来ましたら婚姻の時期など詰められたらと思っておりますが」

「ちょっと、何勝手に言っているのよ。私のことでしょ」

私は慌てて文句を言ったのだが、


「何を言っておる。この噂が広まってみろ。お前なんぞ殿下の相手にはふさわしくないと言い出す輩が出てこないとも限らないではないか」

そう言って父が強引に日程を決めだしたのだ。


結局、3ヶ月後に私とハロルドの婚姻が強引に決まった。


今回の王太子らがやってくれた落とし前は、王太子の廃嫡と一部領土の割譲と賠償で丸く収まった。なんか婚姻によって強引に収めたような気がするのは私だけではないはずなんだけど。







そして、今日はその結婚式の日だ。


教会の鐘がベルファストの王都に響き渡った。


私は純白な花嫁衣装に身を包んたで、こちらも白い王族の正装を着たハロルドにエスコートされてバージンロードを歩いている。


私の後ろにはニコニコした私の父と国王陛下がいて、参列しているロンド王国の国王の顔がひきつっているのは気のせいだうか。


エロ龍はカーラの胸の中でご満悦みたいだ。


後でまた思いっきり引っ叩いておかないと・・・・



なんかここまで怒涛の三ヶ月だった。お妃教育も衣装合わせもけっこう大変だった。貴族の顔と名前を覚えるのも。全ては無理だったので、今はカーラに横にいてもらって補佐してもらっている。


うーん。


なんか勢いに任せてというか周りに流されてここまで来たんだけど、これで良かったんのだろうかと思わないでもない。


まあ、貴族の結婚がこんなものだというのはわかっているつもりだけど・・・・


と考え事をしていると皆シーンとした。


「えっ」

皆私を見ているんだけど、何故?


「誓いの言葉だ」

ボソリとハロルドが言ってくれた。なんか怒っている。


ああ、皆終わったのね。


ここで誓いませんといえば良いんだけど、そんな事してぶち壊した日にはハロルドに殺されそうだし・・・・


「誓います」

仕方なしに私は誓った。


「では誓いのキスを」

えっ、嘘ーーー、まだ心の準備が


私はキスがあるのを忘れていた。


ハロルドがベールを上げて顔を寄せてくる。


えっ、早いって・・・・


私が抗議する間もなく、そのまま、唇を合わせてくれた。


終わった、と思ったら今度は舌を入れてきたんだけど・・・・ええええ、何で。


息が苦しくなって無理やり剥がそうとしたらやっとハロルドが離れてくれた。


皆唖然としてみているし・・・・。結婚式のキスで1分間もする馬鹿がどこにいるのよ。

私が睨みつけると


「式の途中で他のこと考えているからだ」

意地悪そうにハロルドが言ってくれた。


そう言われると言葉もないんだけど。


皆が歓声を上げてくれた。


ハロルドが手を皆に振って応える。

そうしながら私のおしりに触れてきたんだけど、その手を思いっきりつねってやった。


「痛い」

「余計なことするからよ」

私は済まして皆に手を振る。


「今日の夜が楽しみだな」

なんかハロルドがとんでもないことをボソリと言うんだけど。こいつひょっとして絶倫なのか。前世も含めて私はそういう経験がない。

少し怖くなった私だが、ハロルドは無視して皆に手を振っていた。仕方なしに私も手を振った。


ま、なんとかなるだろう。ここまで何とか来たんだから。

能天気で単純な私はあっさりと達観した。その結果がどうだったかはこの話には書けないが・・・・。


廷臣たちやその奥方たちが上げる歓声の中、私達はいつまでも幸せそうに手を振っていたのだ。





おしまい

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ここまで読んで頂いてありがとうございました。

評価レビューフォロー等、お忙しい中して頂いてありがとうございました。


これにて完結です。少し強引な終わり方だったような・・・・。


アルファポリスのHOTランキングで最高4位でした。


これからも閑話等上げていきます。


今後とも宜しくお願いします。

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ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされました。護衛騎士と悪役令嬢の恋愛物語 古里@3巻発売『王子に婚約破棄されたので @furusato6

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