第61話 聖女を張り倒した後に龍が巨大化してロンド騎士団を殲滅したと聞いて、父が全権大使で乗り込んできました

翌朝、私が目を覚ました時はもう昼過ぎだった。


私の胸には龍がいて、そして、私の寝袋の横には鎧を着たまま寝ているハロルドがいた。


ちょっと待って! 何でここでこいつが寝ているのよ。


私はムッとした。


昨日こいつは、はだけた淫乱聖女の私とは比べようもない大きな胸に顔を挟まれて、喜んでいたのだ。絶対に許せない!


でも、流石に一晩寝て、怒りも少し収まっていた。寝起きも私はパワー全開ではない。それにいくらなんでも寝ている奴を張り倒すほど私は鬼ではないのだ。普通は。



でも、なんかハロルドは幸せそうに寝ているのだ。


昨日の淫乱聖女を思い出しているのか!


私が徐々に怒りに火が付き出した時だ。




「キャサリン」

ボソリとハロルドが寝言を言ったのだ。


えっ? 私? 本当に?


私の怒りは驚きに変わってそれが羞恥心に一気に変わってしまった。


ハロルドは私のことを寝言で呼びながらニヤニヤ笑っていたのだ。


呼ばれれば私も嫌な気はしない。何を想像しているのかと少し気にはなったが・・・・


私は振り上げた拳を持っていきようが無くなって、馬鹿にしたようにこちらをみた竜がむかついたので、思いっきり叩いていた。


でも、その後痛みのあまり、手を抑えてのたうち回ったのだ・・・・





私が気絶した後は大変だったらしい。


我軍に襲いかかろうとしていたロンド軍に龍が巨大化して蹴散らしたそうだ。


幸いなことに周りは林しか無かったので、兵士以外には被害はなかったようだったけど。


その後処理や、私が弾き飛ばしたエイベルや淫乱聖女らの捜索も大変だったらしい。


半死半生のエイベルは見つかったが、淫乱聖女は見つからなかったらしい。


うーん、宇宙まで殴り飛ばしたのかも・・・・あの時は本当に切れていたから



今回のロンド王国軍によるベルファスト王国軍への襲撃とそれに逆襲して殲滅させられた件を知ったロンド王国王宮は恐慌をきたしたらしい。


魔物討伐に行っていた騎士団が、本国の判断を仰がずに、王太子を中心にして隣国の魔物討伐軍にいきなり夜襲をかけようとして、なおかつ失敗して、殲滅させられたのだから。


何でも巷では、王太子に振られて更に攻撃されて怒り狂った私が、竜に変身してロンド王国軍に襲いかかったというのまであるのだから。



竜がいかに恐ろしかったか、生き残った兵士たちが口をそろえて言うのだ。


目のいい兵士たちには怒り狂った私が確かに聖女を殴り倒すのを見たというのだ。その後に怒り狂った竜が現れてロンド王国軍に襲いかかったと・・・・


「いやいやいやいや、ちょっと待って、襲いかかったのは龍だから。私じゃないわよ」

それを聞いた私が怒って訂正したが、


「まあまあ、キャサリン様。ロンド王国は未来の王妃様の貴方様を恐れているのですから。そのままにしておいてはいかがですか」

エイブさんは完全に面白がっているんだけど、


「いや、それは良くないでしょう。そんな噂が流れたら私、嫁の貰い手が無くなるじゃない」

私がぶすっとして言うと


「はあああ、何を言っているんだ。キャサリン。お前は俺の婚約者だろうが」

ハロルドが怒っていってきた。


そうだった。忘れていた。


「何言っているのよ。私はまだ許していないんだから。淫乱聖女の胸の中で喜んでいたエロハロルドを!」

「いや、あれは魅了にかかってだな・・・・」

「勝手に魅了のせいにするな」


「いやあ、若いとは良いことですな」

「本当に、ただ、若い者たちには酷ですからな、痴話喧嘩は程々にしていただかないと」

エイブさんと伯爵は訳のわからないことを言ってくれるんなだけど。


「いつ、私とハロルドがイチャイチャしたっていうのよ」

私が文句を言うと


「まあまあ、夫婦喧嘩は犬も食わぬといいますからな」

エイブさんの言葉に


「まだ夫婦じゃない!」

私の言葉は周りに完全に無視されてしまったのだ。


そんな所に全権大使として私の父がやってきたのだった。








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