ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされました。護衛騎士と悪役令嬢の恋愛物語
第60話 聖女視点6 私は逆らってはいけない化け物に逆らった事を知った時は二度目の人生が終わっていました
第60話 聖女視点6 私は逆らってはいけない化け物に逆らった事を知った時は二度目の人生が終わっていました
黒い十字架の残骸がベルファストによって回収されたのはとても悪い事だった。
このままではまずい。
原型が残っているならば、ロンド王国の大聖堂に問い合わせが来れば、封印された闇の魔道具を勝手に持ち出したのがバレてしまう。それは絶対に避けたかった。
こうなればその証拠品を抹消するしかない。
そのついでに目の上のたん瘤だった偽聖女を消しても良いだろう。
どうせならば、偽聖女を捕まえて火あぶりの刑にしてもいいし、兵士たちの慰みものにさせても良いのではないか。
私はそう考えると、嬉しくなった。
ついでにハロルドも捕まえて、私が篭絡しても良い。
私はロンド王国とベルファスト王国の2国を支配下に置くのだ。
そう、私の愛人のエイベルと騎士団長に得意そうに話した時だ。騎士団長が反対したのだ。
「あの公爵令嬢のキャサリンですが、ベルファストの伝説の建国の聖女と一部で噂されております」
「そんなのはあの女のハッタリにすぎないわよ」
私が言うと、
「伝説の聖女は竜を支配下において、逆らう者共を一掃したのです。なんでも、ベルファストの王宮にキャサリンが竜を連れて現れたという噂がありまして」
「ハロルドに箔をつけるためのでまかせだろう」
エイベルが馬鹿にしたように言った。
「そうだとは思うのですが、用心するに越したことはございません」
「でも、セドリック、どこにも竜はいなかったわよ。ダンジョンの中にでも潜ましているの?」
私が聞くと
「いや、それはわかりかねますが」
「そういえば、キャサリンの後ろに爬虫類のペットのようなものがいたぞ」
「えっ、あの気持ちの悪い目をした生き物でしょう?」
お貴族様が爬虫類のペットを飼っているってどういうことなのかと思ってしまう。
まあ、あの単細胞にはお似合いなのかもしれないけれど。
「あれが龍だとか」
「そんな訳ないでしょう。あんな小さいのが竜なわけないわ。子竜を捕まえてペットにしたっていうのならばわかるけど」
「あの大きさで、我らを一掃するのは無理があろう」
「本当よね」
私たちは笑った。
「しかし、火のないところには煙は立たぬと申します」
なおのことエイベルが言い募ってきた。エイベルの天然のかんが働いたのだろう。後になってそう思えたのだが、
「その方も慎重派だな」
「本当に。でも、その慎重さも大切よ。セドリックはどうしたいの?」
「キャサリン殿には申し訳ありませんが、死んでいただいたほうが良いかと」
「判ったわ。あなたの好きにしなさい」
私はキャサリンの泣き叫ぶさまを見て楽しむのは諦めた。セドリックの心配事のほうが大切だ。
「その代わりにハロルドは私が手懐けるわ。黒い十字架はエイベルがお願いね」
私は偽聖女をセドリックに殺してもらって、二国に君臨する聖女になるのだ。
やっとヒロインに成れる。
そもそも、キャサリンは悪役令嬢なのだ。それが何をとち狂ったか、変な動きをしてヒロインのように振る舞っていてくれたけれども、もうここまでだ。
夜中に起き出した私達はゆっくりと敵陣に迫った。
総勢は30名。残りは、事が起これば即座に全軍でベルファスト軍を制圧できるように待機させてあった。
私達はあっさりとベルファスト軍のテントの中に潜入できた。
こいつらは馬鹿だ。私達が襲ってくるなんて少しも少しも疑っていないのだろう。本当にあまちゃんだった。
私達は偽聖女のテントの傍にすぐに来れた。
エイベルは黒い十字架の破壊、セドリックは偽聖女の始末、私はハロルドを篭絡することだ。
私はハロルドのテントに潜り込んた。
そして、自分の胸をはだけけるとそのまま、ハロルドに抱きついたのだ。
「な、何をする」
ハロルドがきっとして目を開けて私をどけようとしたが、その手を私の乳房に触れさせたのだ。
「ゲッ」
ハロルドが思わず手を引っ込めようとしたところを更に押し倒した。
胸でハロルドの顔を挟んだのだ。
この手で正気を保てた男はいまだかつていなかった。
最初は抵抗しようとしたハロルドも偽聖女の貧乳ではなくて私の豊かな胸の前に陥落したのだ。
その時だ。
バシーーーン
凄まじい音がして、私とハロルドのテントが吹っ飛んだのだ。
「えっ」
そして、一斉に明かりがつけられた。周りには魔導灯を手にしたベルファストの兵士たちが充満していたのだ。
図られたみたいだ。でも、王太子のハロルドは私の手の中だ。
「ハロルド、もっと」
私はハロルドに更に胸を押し付けていた。
偽聖女が私に婚約者を取られてプルプル震えている。ザマア見たことか。
「動くな」
偽聖女の後ろからナイフを手にしたエイベルがニセ聖女を拘束した。
「動くと、この女の命がないぞ」
エイベルが叫んでくれた。
「ああら、単純エセ聖女はあっさりと捕まってしまっの? あんたのハロルドも、あんたのペチャパイじゃ不満だそうよ。ほうら、私の豊満な胸のほうが良いって言っているわよ」
私は、偽聖女に見せびらかすように呆けているハロルドの顔に胸を擦り付けたのだ。
「本当に貧弱な乳だな」
エイベルが偽聖女の胸に触れた。さすがエイベル、やることがえげつない。
しかしだ。私達は偽聖女を怒らせすぎたらしい。
「何するのよ、変態!」
偽聖女は思いっきりエイベルを張り倒したのだ。エイベルが押し付けていたナイフ諸共エイベルは吹っ飛んでいった。
「な、何を、皆、やっておしまい」
私は慌てて騎士達を偽聖女に向かわせた。
そうだ。ハロルドに降伏の命令をさせなければ。
しかし、私がハロルドになにか命じる間もなく、何故か偽聖女は武装した騎士達を一瞬で片付けていたのだ。
「この淫乱、許さない」
憤怒の形相でこちらに来るんだけど。うそよ。偽聖女がこんなに強いなんて聞いていない。
「ちょっと、まって、止めて」
私は慌ててハロルドから離れた。このままでは殺されてしまう。
私は必死に逃げようとしたが、震えて体が動かなかったのだ。
ベルファストの騎士達が、何故偽聖女を助けようとしなかったのか、よく判った。
と言うか騎士達は皆必死に伏せているんだけど・・・・。
こいつは誰よりも強いから放っておいても良いのだ。
そんな、私は絶対に逆らってはいけないものに逆らってしまった事実を初めて知ったのだ。
今更遅いが・・・・。
「あなただけは絶対に許さん」
そう叫んで、偽聖女の張り手が私の顔に激突して、私は人の耐えうる以上の衝撃を受けてしまった。そう、私は次の瞬間空の彼方へ張り飛ばされたのだった。
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