第4話 宇部市、最高!
「……で、最後に『宇部市、最高!』とカメラ目線で叫んで終了です」
そう言って、アマチュアWEB作家『宇部松清』は、資料をテーブルに置いた。
会議室である。
宇部市をPRするためのショートムービー企画の会議である。
一応は成功ということになっている『轟エビ太郎&がざみん』、そして『宇部ドッグ』の考案者である宇部松清氏に、今度はPRムービーの脚本も書いてもらおう、と
「良いですね! 今回も当たりますよ、これは!」
当たるわけがない。
宇部市をPRするのなら、もっと名所とか、特産品とか、そういうのを前面に出していかないといけないのだ。それなのに、フィーチャーされたのはエビ太郎の気持ち悪さとがざみん(笠見さん)のヤバさである。もちろん本物の笠見さんはこんなのじゃない。普通に可愛い。俺の彼女だ――なんて言えたらどんなに良いだろう。
出来ることなら強く反対したい。
課長、頭イカレたんですか? ってズバリ指摘してしまいたい。そんでこのアラフォーアマチュア作家に関しても「とりあえず観光したら帰れ」って言ってしまいたい。
だけれども悲しいことに、上には逆らえない。
きっとこの案は通るのだろう。
何事も、人のせいにするのは良くない。
それでは人は成長しない。
だから何事も、まずは誰かのせいにしないで、こちら側にも何か落ち度はなかったか、もっと事前に出来ることはなかっただろうかなどなど、話し合いを重ねることが重要なのではないかと思うのだ。
ただ、それは話し合いを重ねられることが前提なのだ。
結局俺達下っ端の声は届くこともなく、あれよあれよと様々なことが進められてしまうのである。
そうして数日後、不本意ながらもPRムービーは完成し――、
「いやぁ! さすがは宇部先生です! 今回もばっちり話題を掻っ攫いましたね!」
『まさか私も当たるとは思いませんでしたが、良かったです』
まさかのネクストブレイク。
「この調子でぜひ続編も!」
『そうですね、次は私、もっと攻めた内容でもイケると思うんですよ。いっそがざみんをバトルヒロイン、エビ太郎を怪人ということにしてですね、最後は爆死です。大丈夫、うまいことカラッと揚がったことにしてエビフライになります!』
どうやら俺は次の作品で爆発の後、エビフライになるらしい。
もう色々諦めた。
戦うだけ無駄なのだ。
何が大丈夫だというんだ。
何もかも、あのエッセイとこの作者が悪い!
そして何よりも、それに目をつけた課長が悪い!
それゆけ、宇部市未来企画部地域盛り上げ課! 宇部 松清 @NiKaNa_DaDa
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