赫き蝶の、屍肉喰らう波間

民俗学を根底に据えた、正統派の
ホラーである。
 平家の落人伝説、七人御先、九相図の
ある寺、そして溺死者に群がり喰らう
血の如き赫い蝶…。首、井戸、洞窟、海。

血に色濃く残る怨念は現代へと蘇り、
不遇であった想いを遂げる。因果応報の
複雑な糸は絡み縺れて、読む者を奈落へと
引きずり込む。

永い時を経て蘇る呪いとは何だったのか。
そして、彼を襲う恐ろしくも哀しい
因縁とは。

これ程までに美しくも陰惨な物語を編じる
作者の書庫には、他にも古典的浪漫を
感じさせる魅力的な作品が沢山あるが、
先ずは一つ、じっくり読まれると良い。
虜になること請け合い。
土地や歴史的な考証にも決して手を
抜かない作者の、恐ろしくも哀しく美しい

極上の怪奇譚を。

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