エピローグ「天使は見ていた」


 天使の炎<目>は、その男を見ていた。

 乗り手の帰りを待つ荷馬車の中で、男は信心深い村長の皮<変装>を脱ぎ去り、その下に隠した獰猛なる本性を露わにする。

「フレアニス教会の罪人共か。とんだ聖職者もいたものだな。天使の使徒が判決を下すのが先か、我々人間が嗅ぎ付けるのが先か……」

 男は精悍な顔立ちに、煮え滾るような怒りを宿していた。

「人の罪を裁くのは人間でなければならない。貴様の好きにはさせんぞフレアニス……っ」

 男の背後に生えたその“存在”に、天使の炎は動揺に震える。

 しかしそんな揺らぎなど気付きもしないその男は、また善良なる村人の長の皮を被って、洞窟からの人の気配に笑顔を向けた。








 END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

フレアニスの天罰 けい @kei-tunagari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ