雨降り佳人、プルヴィロア

M.S.

雨降り佳人、プルヴィロア

 【もう炎旱えんかんの月にもなろうという頃、時期でもないのにそれでも連連れんれんつ雨粒が絶えない事を、あなたは窓の内側からいぶかしみます▼】

 【この地特有の気候かと思いきや、村の農夫達も長く続く雨天に作物が疲弊し、水分過剰による実の膨れや土壌病が増えていると嘆いています▼】

 【このままでは、村の人達がかつえてしまうかもしれない──▼】

 【そうあなたが近い未来を悲観し始めた時、家の扉、その呼び鐘が鳴ったのが聴こえてきました▼】


 【どうやら、隣家の農夫の方が訪ねてきたようです▼】

 【農夫は家屋に入った途端四つ這いにくずおれてしまい、うかがった顔は憔悴しやつれ、体調が悪いのが容易に見て取れます▼】

「済まない、不躾ぶしつけに......」

 【あなたはどうしたのかたずねると、農夫は狼狽うろたええつつも訥々とつとつと話し始めました▼】

「〝雨降あめふ佳人かじん〟が、遂にこの村近くの湖にやって来たらしい......。今年は可笑おかしいと思ってたんだ。雨が去年より続き過ぎてるし、村の年寄り達もこんな事は初めてだって、言ってる」

 【あなたを見上げた農夫はけた頬をして、瞳には絶望を載せています▼】

「もう三日、大したものは口に出来ていない。妻も子も、飢えてしまう......。貯えも食糧も無い状態で村を出られないし、何より先祖代々の土地を、捨てたくなんてない......」

 【遂に農夫は顔を床に埋めてしまい、両手を組んで祈りの所作になってしまいました▼】

「頼む、あんた、流れの戦士だったんだろう? なんとかならないか......? 別に雨の魔女を倒すのでなくとも、何処かに追い出してもらうだけでも──」

 【そこで、農夫は口をつぐみました。口をいて出た言葉の浅ましさに、遅まきながら気付いたようです▼】

 【仮に〝雨降り佳人〟をこの村から遠ざけたとて、この村は良くても、その先の土地の人達は結局〝雨降り佳人〟のさいなまれる事になるのですから▼】

 【〝雨降り佳人〟の問題を根治するには、彼女の殺害が望ましいと思われました──▼】

「うう......。どうすれば......、あ、あんたなら、なんとか出来るんじゃないのか......? あんたは──戦える人、なんだろう?」


『あなたの経歴を設定してください▽


 名前:

 素性:▷傭兵  出自:▷平民

     義賊      貧民

     弓士      貴族

     魔術士     素封家

     放蕩者     謎   』


『以下の内容でよろしいですか?▽


 ▷はい いいえ


 名前:■■■■ 

 素性:傭兵 

 出自:平民(特性⇒体力+5 筋力+5)』


『経歴を設定しました▽』


 【農夫は、最早祈るべき神の所在も解らないと言うような顔で、懇願します▼】

「■■■■さん、お願いだ。村が飢えてしてしまう前に、どうか──」


 【あなたは物事の濫觴らんしょう──〝雨降り佳人〟の仔細を訊こうと、村長の家へ訪れました▼】

 【流離さすらいの果てにあいだ、この村に辿り着いたあなたは〝雨降り佳人〟の風貌や佇まいなどの特徴を知らなかったのです▼】

 【武装した姿で訪れたあなたを見て村長は瞳孔を開き、よそおいの訳を訊きます▼】

「その姿は、一体......?」

 【あなたは近い内に〝雨降り佳人〟と相対あいたいする事と、それに際して彼女の特徴を教えて欲しいむねを村長に伝えました▼】

 【村長はそれを聞き、思いのかたしと言うような顔をします。言葉を探していたのか、しばらくの沈黙の後──▼】

「致し方、無い、か。彼女は無辜むこの人々を苛み過ぎた......。そろそろ、べて目をらしていた事を、片付けねばなるまい」

 【それから、村長は〝雨降り佳人〟について述べ始めました──その口吻こうふんは、聞くだにいたい罪状を苦しく語る、断罪官のようでもありました▼】

「〝雨降り佳人〟──プルヴィロアの出生については、恐らく誰も知らないだろう。彼女は、いつ、何処でも忌避され、遠巻きにされていて、特定の故郷など在りはしなかったのだから──■■■■さん、あなたみたいにね。......けれど、故郷は無くともプルヴィロアを取り上げた育ての親は居た。名をオウラと言う。プルヴィロアは、幼少の内はオウラと共にこの地方を転々としていた。その時にプルヴィロアは、育ての母オウラに魔術の手解てほどきを受けていたのだろう......」

 【流浪の一族、そしてそのはみだし者でもあるあなたにも、故郷はありませんでした▼】

 【あなたは、この地で二人きりの逃避行をしていたというオウラとプルヴィロアの、当時の心象を自身の胸の中に重ね──憫察びんさつします▼】

 【故郷が無い──それは換言すれば、帰る場所が無いとも言えてしまうでしょう▼】

 【先刻自家を訪れて来た農夫を、あなたは思い出します▼】

 【『先祖代々の土地を、捨てたくなんてない』とこぼした彼の言を、思い出します▼】

 【。そんな大切なものとしての故郷を、始めから一つ、手からこぼし落としてプルヴィロアは生きてきたようです▼】

「初めは、些細な事だった。川の水が少し増えたり、天の機嫌が少し悪いとか、そんな事だった。そういう傾向がこの地方各地で見られ始めたのが、今から十年前──プルヴィロアが魔術使いとしての頭角を現し始めた頃であると同時に──彼女の母オウラが何者かに殺されてしまった年でもあった......」

 【揺り椅子に座ったまま村長は顔を、壁に嵌められた窓に向けて、そこから曇天と篠突しのつく雨を眺めます▼】

「それからというもの──今ではどうだろう? 彼女のそばで雨は止む事を知らず、土壌は冷めて作物は弱り、山の方では土砂が崩れている。この村が土砂に埋もれないという保証も無い。このままでは、手遅れになる......。それか、もう遅いのかもしれない......」

 【村長は天から視線を外し、こうべを垂れ、言います▼】


「──この海をひっくり返したような雨そのものが、彼女──プルヴィロアの怒りであり、涙でもあるという事に気付くのが、遅かったのかもしれない」


 【最早、それは懺悔でした。どうしようも出来ない事だと分かっていても、知ってしまっていては悔恨の念を秘める事は難しかったようです▼】

 【あなたは村長に礼を言い、外套がいとうひるがえしながら村長の宅を後にします▼】

 【その背に村長は最後、痛切にこいねがいました▼】

「どうか──プルヴィロアを助けられないか? 他所よそから来た貴方あなたに、今まで等閑おざなりにしていたこの地のわだかまりを頼むなんて言うのは、筋が違うのも分かっている......。けれど、もう、私は、彼女を助けてくれと、そう頼まずには居られないんだ......」

 【あなたは今までの経験として、相手の仮想を頭に思い浮かべておいた方がはかどやすいと思っていたのですが、偶にそれが憐情の呼び水となって逆効果になってしまう事があり──▼】

 【そして、今回がそれなのではないかと、思わざるを得ないのでした▼】


 【プルヴィロアが居を構えているらしい《シュメリヤ》──それは《エルニニア山》のふもとを西へ迂回した先にあります▼】

 【その道程、山を囲むように敷かれた《エルニニア街道》をあなたは《シュメリヤ湖》を目指し歩いています▼】

 【雨具として羽織ってきた織目の細かい厚手の外套は、それでも随分雨を吸ってしまい、のしかかるようでした▼】

 【目的地まで、半分の道程を越えただろうか▼】

 【そう思った頃──▼】

 【街道が延びる地平の向こうから、なにやらみつなる陰影が見えてきました▼】

 【此方こちらに近づいて来たそれは、狼でした▼】

 【ただし──水で形成された狼です▼】

 【精緻な彫刻のようでもあり、しかし揺蕩たゆたう流動的な体表は明らかに水のそれで──雨と水を扱う彼女──プルヴィロアがけしかけた魔性ませいの生物だろうと類推出来ました▼】

 【あなたはいつでも対応出来るよう、背に担いでいた大剣に手を掛け、低く構えます▼】

 【並んで寄って来る三匹の狼──《逃げ水の水狼》、その内真ん中の一匹が──ゆくりなく口を開きます▼】

「どちら様? もう此処ここは私の領域なのだけれど」

 【どうやらプルヴィロアが、使役している魔物を介してあなたに語り掛けているようです▼】


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷話し合いに来た


  お前を殺しに来た


  返答せず、《逃げ水の水狼》を叩き斬る』


 【話し合いに来た、とあなたは伝えました▼】

「そう、話し合い、ね」


『好感度

  1000+102 ⇒ 1102』


 【しばらく値踏みするような沈黙があった後、プルヴィロアから言葉が返ってきます▼】

「今更何について、話すの?」


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷あなたが起こしている水害をなんとかして欲しい


  どんな手法で死にたいか選ばせてやる』


 【あなたが起こしている水害をなんとかして欲しい、とあなたは伝えました▼】

「......それは難しい話ね。私も、雨を自分でぎょしきれる訳ではないの」


『好感度

  1102-157 ⇒ 945』


もっとも、操る事が出来るのなら、いちいち人を困らせたりなんてしていない。......あなたにはわかる? 自分が寝ている間に──自分の涙が誰かを溺死できしさせているかもしれない、なんて馬鹿げた悲観に桎梏しっこくされる気分。解らないでしょう?」


『あなたは何と返事しますか?▽


  ああ、解らないな


 ▷そんな状態では、おちおち眠る事も出来ないな


  お前がさっさと自害すれば良い話だ』


 【そんな状態では、おちおち眠る事も出来ないな、とあなたは伝えました▼】

「ええ......。そうよ。私は──私は母が殺された日から浅い眠りを貪る事しか出来ない。怖いのよ。寝ている間に殺しているかもしれないし──殺されるかもしれない。母みたいに......」


『好感度

  945-344 ⇒ 601』


「そして貴方も──私を殺しに来たという訳でしょう?」


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷それは違う


  ご明察だ』


 【それは違う、とあなたは伝えました▼】

「......だったら、一緒に泣いてくれる? 一緒に泣いてよ。私が居る湖畔の隅にまで居らっしゃいよ。それが出来ないのなら──私が泣かせてあげる」


『好感度

  601-54 ⇒ 547』


 【ただ、あなたが流すのは、赤い方よ──▼】

 【そう言い放ったのを最後に《逃げ水の水狼》はプルヴィロアの支配から解かれて──獣性の本能の解放します▼】


『逃げ水の水狼達が現れた!▽』

『逃げ水の水狼Ⅰの攻撃!

 ■■■■は《磊加らいかの大剣》で防御!▽』

『逃げ水の水狼Ⅱの攻撃!

 ■■■■は12ダメージ!▽』

『逃げ水の水狼Ⅲの攻撃!

 ■■■■は《磊加らいかの大剣》で防御!▽』

『■■■■の攻撃!

 逃げ水の水狼Ⅱは67ダメージ!

 逃げ水の水狼Ⅱは力尽きた!▽』

『逃げ水の水狼Ⅰの攻撃!

 ■■■■は《磊加らいかの大剣》で防御!▽』

『逃げ水の水狼Ⅲは能力 《流涎弾》を発動! 

 ■■■■は25ダメージ!▽』

『■■■■の攻撃!

 逃げ水の水狼Ⅰは72ダメージ!

 逃げ水の水狼Ⅰは力尽きた!▽』

『逃げ水の水狼Ⅲは遁走した!▽』


 【プルヴィロアが嗾ける魔物を次々と斬り伏せて、三日の後にあなたは《シュメリヤ湖》、そのほとりに辿り着きます▼】

 【頭巾を取り、ざっと見回しても、その湖の全貌は収まりきりません。あなたは畔を一周してプルヴィロアの住居を探す事にします▼】

 【どうやら湖は真円の一部を大きくへこませて歪んだような形をしているらしく、凹んだ部分が湖面に突き出てその部分は半島のような地形になっています▼】

 【その半島部分の中程に──小さな小屋がありました。覗くと、寝台と小さな卓、その机上にはランタンといくつかの書物しか置いておらず、あまり生活感はありません▼】

 【家主──プルヴィロアも居ないようなので、その場を後にして、あなたは岬の方へ向かう事にしました▼】


 【湖畔のみぎわには、雨粒によって地に落とされた木々の葉が集まるように打ち寄せていました。風も波も無いので、永い事湖面で揺られて此処ここまで辿り着き、やっとの事でくつろいでいるのでしょう▼】

 【岬周りの空は何も遮るものは無く、曇天から湖面への道のりを、雨は悠々と落ちてきます▼】

 【雨に叩かれ、乱れる水面みなもはプルヴィロアの心象風景にも見えますが、雨が降るから乱れるのか、乱れるから雨が降るのかは判然としないようで、両立しているのかもしれません▼】

 【そんな風景の中──そんな風景を背景に、プルヴィロアは此方こちらに背を向けて傘を差し、岬の端にしんと立って居ました▼】

 【あなたの足音が、雨足に隠れているのかプルヴィロアは気付きません。向こう岸の方を何と無しに眺めています▼】


『あなたはどうしますか?▽


 ▷後ろから声を掛ける


  黙って近付く


  背後から不意打ちする』


 【あなたは後ろから声を掛ける事にしました▼】

 【あなたが名乗ると、ようやく雨降り佳人──プルヴィロアは此方こちらを向き、その風貌が明らかになります▼】

 【襞飾ひだかざりの付いた黒々とした傘の下から現れた顔というのはか細い印象の顔立ちで、肩越しに見せる流眄ながしめはこの世の全てに憂いているような鈍い光沢をたたえています▼】

 【常に湿潤しつじゅんしている所に身を置いている所為せいか、その黒髪は水をかぶって濡れたように光り、癖はありません▼】

 【身に着けている青褐色あおかちいろの、くるぶし丈の外衣は袖無しの上衣らしく、更にその上から肘辺りまでを覆う肩衣かたぎぬを羽織って二重にしているのが窺えました▼】

 【その色が元々の衣装の色なのか、雨を吸ってそうなったのかは分かりませんが、あまりにも青白いその顔とは対照的に、その外衣はあなたの目には重々しくえます▼】

「本当に、来た」


『好感度

  547+233 ⇒ 780』


 【使役生物を介した時とは違い、夾雑物きょうざつぶつを含まないその声音は、彼女の風貌にそぐわない幼さが見え隠れしました▼】

「私を、殺しに来たの? どうせなら、後ろから一突きにすれば良かったのに」


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷そんな腹積もりは無い


  確かに、そうすれば良かった


  それではつまらない』


 【そんな腹積もりは無い、とあなたは伝えました▼】

「ふうん、堂々と、という訳ね」


『好感度

  780+34 ⇒ 814』


「そんな騎士道精神をひけらかした所で、私が手心を加える事は無いわ──必ず、殺す。貴方も」


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷闘いたい訳ではない


  さっさとやろう』


 【闘いたい訳ではない、とあなたは伝えました▼】

「......今まで、私を殺そうと何人もの人がやって来たわ。生まれた場所でうとまれ、住処を追われ、安住も寧日ねいじつも無くなって──遂には母を奪われた。だから、返報へんぽうしてやったの! 何人も、何人も、何人も、何人も。今更いまさら平和主義者のうそぶ戯言ざれごとに貸せる耳なんて、無いんだから」


『好感度

  814-76 ⇒ 738』


「お喋りは好きじゃないの。構えて。見せてあげる。私──プルヴィロアの、悲哀と涙の魔術を──」


『雨降り佳人、プルヴィロアが現れた!』

『プルヴィロアは魔術 《水の円弧刃:三連》を発動!

 ■■■■は《磊加らいかの大剣》で斬ってさばく!

 ■■■■は捌ききれずに23ダメージ!▽』

『■■■■の攻撃!

 プルヴィロアは魔術 《水帷の幌》で防御!▽』

『プルヴィロアは魔術 《水生夢死の霧》を発動!

 ■■■■は斬撃の風圧で防御!▽』

『■■■■は《磊加らいかの大剣》の能力を発動!

 地走る罅割れはプルヴィロアの足場を崩す!

 プルヴィロアの敏捷力が半減!▽』

『■■■■の攻撃!

 プルヴィロアは傘の持ち手でパリィ!▽』

『プルヴィロアは魔術 《乱れ寒椿》を発動!

 ■■■■は12、16、16、15、14ダメージ!1ターン硬直状態!▽』

『プルヴィロアは詠唱に入った!▽」

『■■■■は硬直して動けない!▽』

『■■■■は硬直状態から脱した!▽』

『■■■■は投げナイフでプルヴィロアを牽制!

 プルヴィロアは傘の中棒シャフトで弾いた!詠唱は途切れない!▽』

『プルヴィロアは魔術 《千尋の海の涙》を発動!無限の雨棘が降り注ぐ!

 ■■■■は装備を《磊加の大剣》から《閂鎹かんぬきかすがいの大盾》に変更! 《閂鎹の大盾》で防御!

 ■■■■は1、2、2、1、1、1、2、2、2、1ダメージに軽減!▽』

『魔術 《千尋の海の涙》の効果発動!

 戦闘に参加している地上勢力は敏捷力が半減!▽』

『プルヴィロアは魔術 《水帷の緞帳》を発動!3ターン自動防御効果!▽』

『■■■■の攻撃!シールドバッシュ!

 プルヴィロアは魔術 《水帷の緞帳》で防御!▽』

『プルヴィロアの詠唱は続いている!▽』

『■■■■の攻撃! シールドバッシュ!

 プルヴィロアは魔術 《水帷の緞帳》で防御!《水帷の緞帳》は攻撃に耐えられず崩れた!▽』


「しぶといわね......。でも、これで終わりよ!」


『プルヴィロアは召喚術 《オウラの眷龍》を発動!湖の水が《オウラの眷龍》の口腔に収斂しゅうれんする!召喚魔術 《清拭の奔流》が■■■■を照準する!

 ■■■■は《閂鎹の大盾》の能力を発動!絶対不屈の構えにより1ターン被ダメージ半減!《閂鎹の大盾》で防御!

 ■■■■は34、22、24、33、32、28、23、24、23、32......


「ぐっ......、なんで、死なないの......?」


......32、29、26、21、31、21、24、25、31、34ダメージに軽減!▽』


 【痺れた腕を緩ませ大盾の構えを解き、顔を上げると──プルヴィロアは疲弊した様子で胸を押さえ、地に膝を付いていました▼】

 【どうやら遂に、魔力が枯渇してしまったようです▼】

 【ぴちゃ、ぴちゃ、と足音を鳴らし、あなたはプルヴィロアに近付きます。寄って足音を止めると、プルヴィロアは観念したかのように体を弛緩させますが──▼】

「う、うう、嫌......。こんなの嫌ぁ......。私が、まさかなんて......。お母さん、助けて......。死にたくない......。寂しい、怖い、......怖い、怖い、怖い、怖い」

 【先刻とは打って変わり、気勢をすっかり削がれて、くすんくすんと鼻をすすっています▼】

 【今では彼女はもう佳人ではなく、最早駄々をねる幼女のようにうらぶれています▼】


『あなたはどうしますか?▽


 ▷手を差し伸べる


  侮蔑の言葉を吐く


  そのまま介錯かいしゃくする』

  

 【あなたは手を差し伸べる事にしました▼】

「ぇ......?」


『好感度

  738+198 ⇒ 936』


 【プルヴィロアは理解が追いつかないと言う顔であなたを見上げます▼】


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷風邪を引くから小屋に行こう


  母親と同じ所に送ってやる  


  小屋まで来い、お楽しみの時間だ』


 【風邪を引くから小屋に行こう、とあなたは伝えました▼】

「......っ」


『好感度

  936+211 ⇒ 1147』


 【プルヴィロアはもう戦意を廃弱し、敵愾心てきがいしんを見せる事無く黙ってあなたの手を取ります▼】

 【プルヴィロアの手を引いて小屋まで戻る途中、彼女はまるで幼児退行したかのように、空いている方の手で目元をこすり、さながら玩具を取り上げられた幼子のように、わんわんと泣いていました▼】


 【小屋に着くと、あなたはプルヴィロアを寝台の端に腰掛けさせました▼】

 【体が冷えてしまったので、あなたは温かい飲み物でも、と思ったのですが、小屋を見回す限り、調理器具や食器は見当たりませんでした▼】


『あなたは何と声を掛けますか?▽


  落ち着いたか?


 ▷普段は何を食べている?


  貧相な体躯と思えば、飯も食べていないのか?』

  

 【普段は何を食べている?、とあなたは訊きました▼】

「......雨と涙とを、んでいた......」

 【それは卦体けたいたとえか何かだとあなたは思いましたが、プルヴィロアの、泣き腫らしながらも神妙しんみょうな表情を見て、実際の所それが事実なのかもしれないと思わせるには十分でした▼】


『あなたはどうしますか?▽


  手持ちの食糧を分け与える


 ▷湖畔で茶葉を集めてくる


  隙を見て彼女の胸に、懐剣を突き刺す』


 【あなたは湖畔で茶葉を集めてくる事にしました▼】

 【プルヴィロアに待っているよう伝え、小屋を出ます▼】

 【湖畔の汀で、あなたは茶葉に使えそうな葉を選別し持ち帰ると、腰に提げていた小物鞄から火起こしや擂鉢すりばちを取り出し、茶葉の製作に入ります▼】

 【プルヴィロアは不安げな顔で所在無さそうに、あなたの手際てぎわを眺めています▼】

 【湖の水をして煮沸しゃふつし、不純物を取り除いた後、茶葉から汁をし出して何とか口に出来そうな茶が出来上がりました▼】

 【それを水呑みの器に移して、プルヴィロアに手渡します▼】

 【飲むように促すと、プルヴィロアはあなたを見上げた後、恐る恐る器に口を付けました▼】

「......! ぬくい......、味の付いた水、初めて......」

 【するとようやくプルヴィロアは顔をほころばせ、しずしずと微笑びしょうして見せました▼】

 【そのぎこちない笑みは、まるで生まれてから初めて相好そうごうくずし方がわかったと言うような、哀しくも無垢むくな笑みでありました▼】


『好感度

  1147+574 ⇒ 1721』


 【ふと、屋内が明るくなったように感じて、あなたは窓から空を見上げます▼】

 【すると丁度、あれだけ撫然ぶぜんとしていた空の分厚い曇天が割れて、そのひびの間から日輪の光芒こうぼうが、地に降り注がんとしている所でした──▼】


────


 【くだんの事について無事に終わったと村人達に伝えた後、あなたは《シュメリア湖》の畔に移住する事にしました▼】

 【プルヴィロアの精神不安定性が大雨をぶと分かった今、彼女を放って置くのは良くないだろうと考えたのです▼】

 【加えてプルヴィロアは、人間が人間らしく営むための生活能力が、いちじるしく欠けていました▼】


 【雨が冗多じょうたに降らなくなってある日、岬で青々とした空を見上げてぼうっとするプルヴィロアに、あなたは何をしているのか、と訊きます▼】

「雨が降らなくなって、何を口にすれば良いのか分からなくなっちゃった。陽の光も優しいけれど、お腹は膨れないもの」


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷一緒にご飯を作ろう


  村に、食糧をもらってくる


  だったら自分の涙でも飲んでいろ』


 【一緒にご飯を作ろう、とあなたは伝えました▼】

 【すると、振り向きざまに──頬を朱ににじませるプルヴィロアの顔を見ました▼】

「うん......」

 【きっと、稚児ちごでもないのに歩き方を教示されているような気になって、あなたの提案を面映おもはゆく感じたのかもしれません▼】


『好感度

  3947+324 ⇒ 4271』


 【簡易的にこしらえた台所で二人並び、あなたはプルヴィロアに調理について教えます▼】

 【命をおびやかし合った二人が同じ台所に並んで立つ様子は何処どこ齟齬そごを含んでいますが、あなたはそれに、居心地の悪さを覚える事は、何故なぜだか無いのでした▼】

 【むしろ、危うい綱渡りのような精神体系を持つプルヴィロアを見ていて手を貸さねばなるまいと、庇護的な思いのたけが生じる程で──▼】

 【つたない手付きで蔬菜そさいを扱うプルヴィロアの手元を見て、あなたは一層そんな気持ちを、胸に育てるのでした▼】

「......下手?」

 【視線に気付いたプルヴィロアは、あなたにそう訊きます▼】


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷そんな事はない、その調子だ


  まずまずだ


  不得手過ぎる、今まで魔術書しか触らなかったのか』


 【そんな事はない、その調子だ、とあなたは伝えました▼】

「ん......」

 【プルヴィロアは場都合が悪そうな顔をしながらも、気恥ずかしい様子でそう答えるのでした▼】


『好感度

  4271+412 ⇒ 4683』


────


 【雲一つない晴天の下、あなたは湖を一望できる場所に椅子を置く事にしました▼】

 【近くの森の木々から削り出した木材を加工していると、プルヴィロアが小屋からやって来ました▼】

「何を、しているの?」


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷外の空気を吸う間に、腰を落ち着けるものが欲しい


  精神過敏な出来損ないの世話も疲れるから、これで休むんだ』


 【外の空気を吸う間に、腰を落ち着けるものが欲しい、とあなたは伝えました▼】

 【すると、プルヴィロアは首をかしげます▼】

「椅子にしては、大きいみたい」

 【確かに、あなたが今作っている椅子は長椅子でした。一人で使うにはいささか座面が大きいでしょう▼】


『あなたは何と返事しますか?▽


 ▷座面が広ければ、二人でも座れるだろう


  座面が広ければ、昼寝に丁度良い』


 【座面が広ければ、二人でも座れるだろう、とあなたは伝えました▼】

「.....あ、ありがとう」

 【あなたの言葉を受けて少しもくした後、プルヴィロアはおずおずと礼を言います▼】

 【礼を言われる覚えも無いが、それが彼女なりの思いの表出なのだろうと、あなたはそう受け取りました▼】


『好感度

  4683+388 ⇒ 5071』


 【長椅子に二人腰掛けて、プルヴィロアがれてくれた茶をすすります▼】

 【茶を胃に下し、味について褒めようとした所──▼】

 

 【──水刃の花弁を持った睡蓮が、胃から体表を突き破って、次々と自分の腹の上に咲くのを、あなたは見ました▼】


「お母さん、やっと見つけたの......、私の、伴侶を──」


 【遂に自分の口からも睡蓮が咲き、暗転し掛ける視界で最後に見たのは、プルヴィロアに手を引かれて湖に引き摺られる自分自身と──共に湖底へ沈むプルヴィロアの、屈託の無いんだ横顔でした──▼】


『BAD END ルート《無理心中》

 彼女の水の花が、そのまま献花となってしまいました』


『好感度を上げ過ぎました』


『初めからやり直しますか?』

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雨降り佳人、プルヴィロア M.S. @MS018492

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