第3話『黒い巨躯(きょく)』

 ――黄昏迫る紅き空。


 若き乙女をあざ笑う黒い影。


 三日月の形に歪んだ口から覗いたのは鮮血に似た赤く長い舌。それは乙女の白くか弱い首に巻きついて、巨木のような腕の先は鋭い爪。命を懇願する乙女の四肢を鋭い爪が突き刺さる。


 黒い巨躯(きょく)の中央部から触手にも似た突起物が、乙女のまだ開かぬ花園の最奥を貫く。巨躯の中心部から脈打つように『種子』が乙女の体内に侵入する。


 熱い体液のほとばしりを受けた乙女は生まれて初めての快感に四肢を震わし甘く鳴いて悦の洗礼を素直に受け入れた――

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短編集 伊上申 @amagin

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