嫉妬を隠せない惨めな私、隣の友人妬んでる私、鯨と一緒に海に抱かれたいの

揺れたりぶら下がったりする気持ちが、よく伝わってくる。
比喩を多用した作品だと思う。
素直に上手い。

ぬいぐるみの鯨を「くじら」、写実的に精緻に描いた鯨を「クジラ」、実在する生物の鯨を「鯨」と表記を使い分けているのは面白い。

凜花のクジラをみると、自分の名前「絵乃」も嫌いになっていく。
絵乃は自分の名前なので、自分を自分で嫌いになっていくのも同じ。
悪循環にハマっていく。
だから、ゴミ箱でみつけた凜花のラフをこっそりポケットに入れて持ち帰り、構図を真似て描こうとしたのだろう。

凜花が噴水に濡れたのは、主人公の行いを水に流した意味合いもあるだろう。
言葉ではなく描写することで隠喩で表している。
つまり主人公をゆるした。
主人公もそれがわかっている。
友達同士になれたから、
「数年後のあたしたちは、くじらになっているだろうか」
と最後、新しい未来に思いを馳せることができるのだろう。