理想郷からの逃避
海波 遼
序
数年前のことである。
ある地域で内戦が起きた。巨大な国の支配に、一部の政治家や学生達が反旗を翻したのだ。
彼らは、「解放戦線」と名乗り、巨大な国からの独立を測った。しかし、戦況は困難を極める。彼等は傭兵を雇い入れ、やっとのことで掴んだ勝利も喜びには遠かった。夥しい量の死体、傷病人、孤児、難民、瓦礫。自分達の描いた『理想郷』とは全く違う。不満がくすぶっている中、リーダーを名乗っていた男は、一人の英雄にその罪をなすり付けることで、自分達の行いを正統化しようとした。
――ヴィクトール・シュヴァルツという寡黙な一人の英雄に。
しかし、彼等の目論見は失敗に終わった。誰かが彼を助け出していた。
彼の仲間は、手の届かない場所にいるはずなのにである。リーダーを名乗った人物が最後に見たのは、もぬけの殻になった彼の牢屋だけでだった。
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