君にさく薔薇

薔薇だ、と思った

君の背中に無骨な鉛の種が

植えられて、まわって、薔薇になっていく

ストップモーションみたいに、

抉られた土壌の君は

倒れてくずおれていく、赤く、あかく

もう母音すら分からない騒音の中

君の「E」だけが耳の奥で響いている

響いていた、けれど

世界は束の間無音となって

ただ呆けたように

背中に生えた幾つもの鮮やかな紅を

見つめていることしか、


あ、




わたしの胸にも、薔薇がさいた

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とある文藝部員の遺書 鹿衣 縒 @y_csk_

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