メガネから入る

七村 圭(Kei Nanamura)

本文

◆設定◆

相内あかりは高校二年生。一年生のときは平の生徒会員だったが、二年になり会計に抜擢された。でも計算はそんなに得意ではない。なので形から入ろうとメガネをつけてみた。いままではコンタクトだったのを、わざわざ雰囲気づくりのためだけにメガネにしたのだ。「似合いますか、会長さん~?」


●登場人物●

相内あかり:高校二年生。一年生のときは平の生徒会員だったが、二年になり会計に抜擢された。でも計算はそんなに得意ではない。すぐ調子に乗っては失敗するものの決してくじけないタイプ。



↓↓↓ 以下、本文 ↓↓↓






 おはようございます、会長さん!


 え? 六時間目終わってもう夕方なんだから、おはようはないだろ?


 いやいやいやー、あかりにとってはいまからが本当の学園生活の始まりなんですよ~?


 そんなの遅番のアルバイトみたいだっていうんでしょ。たしかにコンビニとかファミレスだと、十六時出勤でもおはようっていいますけど。


 あかりは生徒会の仕事に全力を注ぐため、夕方から再び「おはよう!」って気合を入れるんです。これが私なりのコンセントレーションいわゆる集中力の整え方で――


 ああっ、そんなことはどうでもいいんですっ! 会長さん、ほら、これ! 見てください見てください。どうですか、これっ?


 ――髪型は変わってないです! どんだけあかりのことみてくれてないんですかっ! これですよこれ!


 ――リボンは前のままです! 「ここ」をしっかりアピールしてるじゃないですか! これで気づかないなんて罪ですよ罪!


 ――落ちついた性格になった? まあ、あかりもこうして生徒会の会計の役目を仰せつかったわけですから、多少なりともいままでとはちがう理知的で冷静なあかりを――


 って、ちがーーーーーう!!


 これですよこれ! メ・ガ・ネ! なんでメガネのことに触れてくれないんですか!!


 ほら見てくださいよ、このフレーム! 上があいてて下がまっ赤なんて、すごくオシャレでしょ?


 もう一度つけますよ。――フフン。どうですか会長さん。理知的で冷静に見えるでしょ。


 これで私も、この由緒ある生徒会の立派な会計役にふさわしくなったも同然ですよね――


 うう、それは言わないでください。あかりが数字に弱いことは言わないでください……。


 で、でも、会計になったからには、あかりもがんばります!


 というわけで、まずは形から入ったわけですよ。いままではコンタクトでしたけど、これをつけてれば、ちょっとは会計っぽくみえますよね?


 あ、わかってますわかってます。メガネをかけたからって数字に強くなるわけじゃないことくらい。


 でも「服装を正している料理人が一流とは限らないが、一流の料理人は服装を正している」っていうじゃないですか?


 あかりもそれにあやかって、一流の会計っぽい外見に身を正したわけですよ!


 えっ、「服に着られてる」ならぬ「メガネにつけられてる」……? そ、そんなぁ……。


 でもこんなことであかりはめげません!


 あかりは毎日家で作る料理で、材料と味付けの配分を正確に頭の中で記憶してるんですから!


 生徒会の会計くらいお茶の子さいさいですよっ!


 とにかく、あかりはこれからメガネスタイルでいきますから! いや、ちがうな。コホン――。


 これからわたくしは、メガネスタイルでいきますわ。……こんな感じでどうですか?


 フフフ。これであかりもスクールカーストの上位に君臨――


 えっ、昨日提出するはずの書類がまだできてない? それ早く言ってよ田中君~!


 えっ、おととい出した体育祭の予算の金額がちがう? それ早く言ってよ佐藤さ~ん!


 あっ。


 ……えーっ、と。


 わ、わたし、相内あかりは、このメガネに似合うような会計になることを誓いますっ!

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メガネから入る 七村 圭(Kei Nanamura) @kestnel

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