翼で女の子がただ飛ぶだけの話。

死神@296

これが青春真っ只中 〜ある学生女子の心の中〜

友達に彼氏ができた。自分も早くと焦った。

親には勉強しなさいと怒られた。

クラスメイトには笑いものにされた。

先生には「お前はなぁー」と失望された。

近所の人は妹の方を味方した。

自分の初恋も儚く終わった。


新しい恋を探せよーといつも言われる。

でも無理なんだ、できないんだ。

あれほど大好きだった初恋の子に

彼氏いる、と言われてあっけなく恋が終わった。

自分はいいわゆるレズビアンだった。

自分が男だったら、と何回思ったことか。

こんな馬鹿なことしなければ、と何回後悔したことか。

自分なんか、と何回失望したことか。

母に遠回しに行ってみたら

あんたがそんなのだったらショックと言われた。

きつかった。悲しかった。そんなのって。

その日の夜は自殺を試みた。

でもあの子が悲しむかも、と思って諦めた。


自分が、もし普通の女の子になって、

普通に男の子に恋をして、

普通に幸せな家庭を築けたら

どれだけ幸せなことか。

周りだけじゃなくて、自分も幸せになれるのに。

好きに女の子に恋してるわけじゃないのに。

男の子が嫌いってわけじゃないんだけど、

本当だったら女の子は男の子、

男の子は女の子を一途に思わないといけないのに。

なんで自分はできないの?

なんで女の子が好きなの?

なんで自分なの?

なんでみんなと違うの?

なんで女の子に恋しちゃいけないの?

なんで? なんで?

なんでこんなに難しいの?

生きるだけでこんなに辛いの?

なんでみんなから批判されなきゃいけないの?

みんな同じなのかな?

自分より辛い人がいるって知ってるのに。

なんで自分中心に考えちゃうのかな?

他の人のことも考えなさいって習ったのに。

学校の授業でやったのに。

みんなが悪いわけじゃないのに。

異端者な自分が悪いだけなのに。

自分が受け入れられる世界線なんてないのに。


男の子から告白された。

好きです。付き合ってくださいって。

クラスメイトだった。

いつもクラスの中心にいるような存在が。

幸せになるために自分も普通の恋をしなきゃいけないのに。

でも告白された途端吐き気がした。

めまいがした。足元がふらついて、

頭の中が真っ白になった。

気づいたらごめん。

って断ってた。

ごめん。ほんとにごめん。

その子は泣いて、その場を立ち去っていった。

君が悪いわけじゃないのに。なんで泣くの?

全部私が悪いの。私が悪いの。

みんなと違う心を持っているから。

本当は心を押し殺して、無理矢理にでも

その子と付き合ったら良かったのに。

その子の心に傷をおわしてしまった。

ごめん。本当にごめんなさい。


そこから人が変わったように、

愛想笑いが上手になった。

人と話を合わせることが上手になった。

親の話を聞くようになって勉強に励んだ。

苦手なものとか嫌いなことも全部やって、

好きなことをする時間を削って

人並みに努力して、

それなりの結果をだして

過去の分以上に巻き戻せたけど、

心をどれだけ苦しめても、

痛めつけても、殺しても、

女の子が好きっていう事実は変わらなくて、

ずっと頑張ってきたのにどうしてなのかな、って 

もう「普通の人」になれたはずなのに。

なんでそこだけ普通になれないの?

他の人と違うんだよ、

みんなよりも努力してるのに

ずっと悩んでた。まだ必要なの?

何がいるの?普通の人間になれるの?

いつになったらみんなと本気で立ち向かえるの?

本気で喧嘩して、

本気で遊んで、

いつになったら本気で人と関わり会えるようになるのかな。

もう戻れないのかな。


「-・-・・ ・・-・- ・-・・ ・・ ・- ・-・ ・・・- ・-・ --- -・・・ ・・ ・- ・- ・-・-・ -・ ・・  」

そうなのか。そうなんだ。

心を押し殺してから

ずっと考えてた。

何が大切で、何がいらないのか。

答えはもう出た。

普通の人は大切で、

異常者はいらない。

先生も親も友達もクラスメイトも近所のおばさんも

そんなことを言っていたのか。

頭が悪くて全然気づかなかったよ。

ごめんね、今まで私という人がいて、

傷ついた人たち。

特にあの子と男の子。

でもやっとわかったよ。

それが答えだったのか。

なんだ。簡単じゃないか。

ははははは!!!

初めて心の底から笑った気がした。

初めて心の枷を外した。

ねぇ、みんな、

何をすればいいのかわかるよね。

お利口さんだもんね。

いい子だね。

よし、お利口さんは心の鎖を外して、

一緒に羽を伸ばして、

ビルのてっぺんから






一緒に飛ぼう。

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