花びらは、君へあふれる私の想い

童謡の『王様の耳はロバの耳』がふと浮かんだ。
本作の場合、言えないことを溜め込んだ結果、花を吐く。
短い話なのに、よく考えられている。

着眼点が面白く、花にしたことで負のイメージがきれいに転換されている。
なにより水仙を選んだところが良い。
水仙は全草、つまり、球根や葉、茎だけでなく、花にも毒が含まれているのだ。

由花は、瑞樹が好きだから力になろうとしている。
花びらが止まったので、瑞樹も彼女が好きだったのだ。
瑞樹にとって花は否定する毒そのもの。
だから、食べると「苦い。嫌いだ」となる。
でも、花は瑞樹の本音であり、由花が求めているものだった。
だから食べても「そんなにまずくないね」となったのだろう。
むしろ由花にとっては好ましいものだったに違いない。

瑞樹が由花を好きでいる間は、由花は花を食べられる。
きっと、花を食べても由花は死なないだろう。