襲撃の理由
「しかし、随分な数がいたんだな」
『ああ』
「どうすっかなぁ、さすがにこの人数の怪我人を転がしておくのは問題だ」
「お困りですかな?」
「「『 うおっ!? 』」」
突然現れた第三者に間合いを取るオレ達。そこに現れたのはクロムだった。
「クロム、よくここが分かったな」
「ええ、家にも襲撃がございましたので」
「……殺す、ニャ」
「いけませんよブランフィオ。無用な殺人は」
「無用じゃない、ニャ」
ローネ先輩の注意にも素知らぬ顔だ。
「えっと、お知り合い、かしら?」
「ご挨拶が遅れました。ジャールマグレン様にお仕えしております、クロムと申します。以後お見知りおきを。ご主人様とブランフィオがお世話になっております」
「お、おお」
「はあ」
『これはご丁寧に』
「ああ、お仕え、ね。もうあんた隠す気もないんやないの……」
と、クロムが丁寧にごあいさつ。それよりも。
「家は大丈夫か?」
「敷地内に来る前に片付けましたのでご安心を。現在はワンダとツーラに守らせております」
「そうか。襲撃の目的は聞けたか?」
「はい。端的に言いますと、お金ですね。それと少々恨まれている方への報復も含まれていたそうです」
クロムがちらりとラファーガとローネ先輩に視線を向けた。
「あー、なんかすまん」
「おかしいわ。大体全部片づけてきたのにっ」
「ご主人様、こちらへ」
「うん? ああ、分かった」
どうやら内緒話があるらしい。執事服のクロムに連れられて(ブランフィオは付いてきた)みんなから離れる。
「どうやらご主人様が『オークション』によって多大な資産を受け取れることが噂になっているらしいのです」
「オークション? ああ、地竜の件か」
「はい。どこまでの話が本当か分かりませんが、さる侯爵家がオークションで金貨百万枚以上の値を付けたそうで」
「は?」
地竜が金貨で百万超え?
「まだ結果を聞いてはいないが、血肉や内臓を売っても金貨で数百とかだったんだぞ?」
「ええ、私もそのように聞いておりますが、彼らはその情報に確信を持っておりました。ご主人様が入金相手であることも」
金貨で百万枚とは、さすがにオレもそんな数の金貨なんか目にしたことがない。
もちろん金貨は城に大量にあるが……魔王城にいるに辺り、オレ自身が買い物に行くことがほとんどなかったのだ。城下町はあるけど人間の体のオレは城下町に一人で降りると危険、姉上などと一緒におでかけになる。
そうなると従者も来るわけで……お金の管理はほとんど人任せ、人間の街に来て初めて自分のお金というものを持ったレベルだ。
「別の街から話が流れてきているようですな。オークシニアから情報が流れたのか、冒険者ギルドから情報が流れたのか……」
「つまり?」
「今後も、ニャ?」
オレとブランフィオの言葉にクロムが頷く。
「そりゃ……厄介を通り越して、だな」
「金額が金額ですので、私共では対応できないレベルの相手が送り込まれてくる可能性も十分に考えられます。少なくとも私と副長、それにスクワーチウォーカーの二匹では艦長をお守りすることはできません」
「ぉぉ……どうするか」
マジでどうするか。
「解決策はあります、ニャ。でもとても悔しいです、ニャ」
「解決策?」
「ほお」
苦い顔をするブランフィオ。その表情と言葉に疑問に思うオレと、ブランフィオに感心するクロム。
「セレナーデ様に、頼るんです、ニャ」
星間移民計画用先行調査艦型『ダンジョン』ヘンリエッタ てぃる @tail0025
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