貴方は自分の人生の筋書きを自分で描けているだろうか。

主人公の修が気の進まない合コンで出会ったのは、高飛車でやけに交戦的な美梨。どういうわけか一夜を共にすることになった挙句、トラウマを植え付けるような鮮烈な台詞をお見舞いされる。

時空を駆けるタクシーについては、個人的にはガルウィングドア搭載のデロリアン的な仕様を想像してしまう(イメージをぶち壊していたらすみません)が、乗り込んだ二人(+1名)が行き着いたのは過去ではなく、何とも色鮮やかでキラキラした夢のような世界だった。もしかすると、彼岸とはそのような場所なのかもしれないが。

まるで元いた世界の人物相関図を投影したようなその世界では、修は修としての自我を保ちながら、美梨にそっくりな侯爵令嬢の側にいて別人として認識されている。その公爵令嬢の我儘っぷりに翻弄されながらも、その世界での恋人や友人とのコミュニケーションを通して自身の在り方について思索を巡らせる。
そして、公爵令嬢もまた、自身では己の人生を選ぶことをができずに政略結婚に向かう身なのだと、気づいた時には……

展開を重ねるごとに世界が厚みを獲得し、人間って多面体なんだな(ウラオモテのみならず、それ以上ありそう)と思わせる構成が秀逸です。

いつまでも引きずり続ける三十点は、主人公が自らの人生を切り拓く糸口になる、かもしれません。

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