第14話 帰還
少し時が流れたある日。
ついに、クレア・クレインの世界に再生のための『勇気ある者たち』が派遣されることが決まった。
クレアにそのことは伝えていないが、これで安心して帰すことができる。
クレアには、帰れる準備ができたと伝えた。
そしてアッシュはクレアとアリシアを連れ、あの世界に降り立った。
「うわっ、すごーい。アリシアちゃん可愛い」
「ありがとう」
クレアのテンションはやや高いようだった。
「行くぞ」
アッシュがそう声をかけ、クレアの母親が暮らす場所を訪ねる。
「ここって……」
「この前来たところ」
アッシュがオオカミを大人しくさせたところだ。実際、オオカミを大人しくさせたのは特殊な魔法によるものだが、この世界には魔法が失われているのでそういう話はできなかった。
そしてその時、アッシュは一瞬でクレアの母親の居場所を確認していた。
「あ……お母さん……お母さん!」
クレアが母親を見つけ、そう叫ぶ。
その声に気付いた母親は、こちらに振り返ると、とても驚いた顔をした。
一瞬訳がわかっていない様子だったが、母親はすぐにクレアに駆け寄る。
「クレア……生きていたの……?」
「うん……お母さんも……生きててよかった……」
二人は抱き合い、言葉を交わす。
「どうやって生き延びていたの?」
「この人たちに、助けてもらったの」
「あ……」
母親はアッシュたちに気付くと、すぐに立ち上がった。
「本当に、ありがとうございました」
「いえ。勝手にすみませんでした。ご心配されていることはわかっていたのですが……中々ここを見つけることができず……」
「本当に、本当に……」
母親はもう言葉も出なくなっていた。
「どうやって、こんな小さい子供を……?」
どういう意図なのか理解に苦しんだが、アッシュはなんとか答えをひねり出す。
「一人でいたので、保護させてもらいました。うちの周りには、貯蓄を分け合う人もいませんでしたし」
間違いではない。一人でいたから保護したし、アッシュの館にはしっかりと食料があった。神の世界で食料を必要とするのは、アッシュが意図的に生理現象を止めていない子供たちだけなのだから、分け合う人もいない。
「ご迷惑ではありませんでしたか……?」
「いえ。妹の相手にもなってくれましたから、助かりました」
「そうでしたか……」
アッシュはアリシアのことを妹と偽る。これが一番自然そうだと考えたからだった。
「それでは、僕たちはこれで」
仕事を終えたアッシュは、そう言ってあっさりその場を後にする。
アリシアも共にその場を後にするが、あまりにもあっさり過ぎるような気がしていた。
「アッシュ……! ……ありがとう」
クレアはアッシュの背中を見送りながらそう言った。
アッシュはそれに軽く片手を挙げて答え、その世界を後にした。
灰色の青鳥屋 月影澪央 @reo_neko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。灰色の青鳥屋の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます