星を目指して待ち受けるものとは?

 ──“僕は、あの星みたいになりたい。”


 それが、今回ご紹介する秋野凛花さん作『明け星学園』のキャッチコピー。
 一見すると、夢見る主人公が発する真っ直ぐなセリフと言えるでしょう。そしてあらすじをチラリと見れば、「この物語は異能力学園系のお話か! じゃあ学園の中で主人公が頑張るお話かな?」と思うに違いありません。

 しかしこのお話、そう真っ直ぐにはいかないようで……。

──

 まず主人公は明け星学園に転校してきた伊勢美灯子という少女。
 何に対しても無気力で無関心。人に対しても素っ気ない……この時点であれ? となるはず。そう、キャッチコピーに見合うような少女ではないのです。
 ただ、『──この人を、超えられたら、私は。ここに来た本当の目的を、達成することが、出来る。』という強い思いだけが、読者をひたすらに惹きつけます。

 そしてもう一人の主人公と言えるのが明け星学園の生徒会長・小鳥遊言葉。
 活発で人望も厚く、(時に計算し尽くされた)自由奔放さを見せつける、まさに灯子とは真逆なトンデモ生徒会長。そして一人称は……「僕」!! やったねみんな!! 一人称「僕」系女の子が来たよ!!!!
 じゃあキャッチコピーもこの人のものなのか……そう考えても、貴方は違和感を覚えるに違いありません。何故ならこの生徒会長、逆に「みんなから憧れられる側」であり、追いかける側ではないのです……少なくとも、序盤は。こう述べたのは他でもありません。明朗な彼女も、何かを抱えているような素振りを見せるからです。

 異能力学園もの特有の激しいバトル・数々の事件・性別を問わない様々な関係性が詰まった魅力的なこの一作。
 果たして「キャッチコピーは一体誰の『言葉』なのか」……そこにも注目して読み進めるのはいかがでしょうか。

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 基本的にはハラハラドキドキ、読んでいて楽しい物語です! 秋野さんの得意分野であるコミカルな文体やセリフの掛け合いにハマること間違いなし。主人公がさっぱりとした性格であるのに対し、それでも楽しめるのは作者さんの技量でしょう。
 しかし。星、とは。……遠くにいる分には美しく手を伸ばしたくなるものですが、いざ触れてみるとどうなるか分かりません。灼熱かもしれない、極寒であるかもしれない、想像と違うものかもしれない。

 “星”を目指す人物が、そうして彼らが、どんな結末に辿り着くのか。


 ぜひ一緒に見守りませんか?

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