第194話薬師如来のお言葉 瞳とエレーナに「世界を救う」華音の子

華音と柳生隆が、そんな話をした日の夜、それも深夜だった。

眠っていた華音は、異変を感じて、天井を見あげた。


そして、驚いた。

「あなたは・・・」

どうみても、奈良薬師寺の薬師如来が天井に映り、そのお目も輝いている。


その華音に、おごそかな声が降って来た。

「華音、子をもうけなさい」

「二人になります」

「この日本で育つ子」

「それから、ローマで育つ子」

「華音の子二人が、世界を救います」

「戦禍に泣く子を、華音の子二人が救います」


華音が、天井の薬師如来に手を合わせると、薬師如来は眩い瑠璃光に包まれ、そのお姿を消した。


華音が合掌を解くと、右にエレーナ、左に瞳を感じた。

二人とも、生まれたままの姿。



その時間は、眩い夢のよう過ぎ、華音は眠った。



カーテンを開ける音と同時に、穏やかな日の光、愛らしい小鳥の声、涼やかな風が、素肌の華音を目覚めさせた。


瞳とエレーナも、何も身に付けていない。

「ありがとう、華音」(声は同時だった)


華音は、恥ずかしい。

「結婚式・・・しようか?」

瞳とエレーナが、頬を赤らめて頷くと、寝室のドアが開いた。


シルビア、春香、久保田紀子が入って来た。


シルビアは、いつになく、神妙な顔。

「つつがなくですね、おめでとうございます」


春香もめずらしく、言葉が丁寧。

「これは薬師様のご指示ですよ、ありがたいことです」


久保田紀子は、その目を輝かせて、エレーナと瞳のおなかに手を当てた。

「大切に、大切に」

「この、おなかの中に、世界を救う二人がおられます」


瞳とエレーナは、抱き合った。

「がんばろうね」

「一緒に育てましょう」


その後は、全員で露天風呂に入り雑談。


シルビア

「華音、生まれた子に訓練するの?」

春香

「華音自身は、政府の仕事もあるから、無理やな」


華音は、苦しそうな顔。

「柳生の総力で、訓練を施すよ、霧冬じいさんも、年だから」

「でも、キツイ修行で、可愛い子にはさせたくないな」


久保田紀子は、華音を真顔で見た。

「雄嶺御大と華音の母さんは、それだけ偉かったってことや」

「薬師様を信じて、華音に修行させた」


エレーナは、瞳の手を握る。

「信じるしかないよ、瞳ちゃん」

瞳も頷く。

「大丈夫だよ、華音君の子供だから」


華音は、目を閉じた。

「いつか、奈良に帰ろうと思ったけど、無理」

「政府の仕事が、忙し過ぎる」

「自分で蒔いた種だけど」


シルビアが華音の横についた。

「それも、薬師様のお気持ち」


春香も華音の横につく。

「心配ない、そのお気持ちで、世は確かに動いた」

「でも、まだまだ、不安は強い」


瞳とエレーナは、華音とシルビア、春香の並んだ時の眩い瑠璃光を実感。

「薬師様の御光だね・・・」

「あれ?おなかが・・・何か?小さな反応?」

エレーナは笑顔。

「うん、おなかの子も喜んでいる」




※三田華音君の不思議な日常(2)これにて終了します。

ご愛読ありがとうございました。

尚、「続き」は、現在、構想中です。

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三田華音君の不思議な日常(2) 舞夢 @maimu

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