第5話 処世と死生を学べるワナビの友! 『聊齋志異の怪』
私、『
中国怪奇つながり、文庫つながり、しかも角川文庫!
と思ったら……角川さんの完訳『聊齋志異』が既に古本でしか手に入らないなんて。そう言えば、私も図書室で読んだので持っていないかも……。
では、平凡社さん継続で三冊目を登場させるかと思ったら、こちらも切れていた(泣)
WHY!?
ほわーい? じゃーぱにーず・ぴーぷる!
こんなにファンタジー大好きで、ファンタジーはヨーロッパ以外ならば和風、中華と言われているのに。何故『聊齋志異』が消える? どこから大陸の習俗ネタを吸収するのだ。
『聊齋志異』は清の時代に怪異譚、怪談をたくさん集めて文字に残した本。
言うなれば、十八世紀中国版の『遠野物語』『グリム童話』のようなものです。
あの類の話からは否応なく伝わってくる、土地の風の渇き潤い、寒暖、光の濃淡、或いは匂いがありますよね。自分の馴染みのない土地で、文章からあれを漂わせるのは大変ではありませんか。そんな時に怪異の出番です!
迷信やそれへの反応が織り込まれていると読者(私)はそこから香って来る匂いが作品にも染みているように感じ易い。
それに怪異から始まると、頭から事件が起こっていて気になりません?
加えて、『聊齋志異』はご立派な理想通りには生きられない人間臭さが魅力。
何しろ作者に当たる蒲松齢さん、国立大学には受かったけれど卒業後の進路が決まらず、予備校講師しながらカクヨムに投稿してる、みたいな形でこの怪奇集を書き上げたのです。尚、存命中に商業書籍化は叶いませんでした。
そう! 正しく我らがワナビの星。
だから、後世の学者さんには、
「俗っぽい現実を生き残るメンタル礼賛!」
みたいなレビューを頂いています。
そりゃ、そうなりますよね。カクヨムで書き散らしている多くの作者は思うでしょう。理想でPVが上がるのか、理想より異世界転生、流行りのジャンルで目指せ、読者選考突破! 理想は書籍化したら考える。
こういう人に馴染む話が多い訳です。
だから、たくさん読んで頂こうと完訳『聊齋志異』と考えました。
とはいえ、買えないものは買えないので、電子書籍で生き残っていましたKADOKAWAさん『聊齋志異の怪』で語ろうと私、この度、これを購入。
奇跡が起きました! これ、これ。この方がここでのご紹介向き。
コンパクトな上に、<附 芥川龍之介と太宰治と『聊斎志異』>という章が付いています。何と、原典とそれを元にした芥川作品、太宰作品がセットで手軽に続けてチェックできるケアの良さ!
私もここに最終的には繋げたかったのですとも。流石です、角川ソフィア。角川さんにおける私のメイン食堂。太宰治さんの『清貧譚』か『竹青』に触れて終わろうかと思っていたので。
先日、カクヨム甲子園の企画として「『ヴィヨンの妻』を読む」読書会がDiscordで開催されました。私は音声を最後の方しか聞けず、途中まで内容が判らないのですが、トークに参加する人は少なかったのかもしれません。
高校生に「太宰、大好き」傾向があるので『ヴィヨンの妻』になったそうですが、カクヨムの環境ならば上記二作品が反応し易くないかな、とその時、私は思いました。カクヨム近代文学館にある上、テクニカルな視点が入る読書会でしたから『ヴィヨンの妻』なのですが。
『清貧譚』は「菊」を「小説」に置き換えると共感し易いですし、『竹青』は転生ものと似た発想。それだけに『竹青』は前途ある高校生向きではないですけれども。
そんなこんなで取り上げた経緯から、この本、とってもお勧めです。
忖度抜き!
忖度するなら第1話に角川さんがあるでしょう。完全にオタクが勢いで作ったから余所様を紹介し、「あ、角川さん、どこで出そう」と後から思ったのですよ。そんな人間が器用におだてたりできません。
ところで、すみません。私、本は死ぬ程、好きですが、出版社さんやレーベルや賞は「カテゴリー」的な認識で、調べたことがありません。本へ突進し、ハマった本と同じカテゴリーを読み漁って去るイナゴなもので実は……その、社会的に「角川」と「KADOKAWA」を同じ扱いにして良いのか自信がありません。
角川・カドカワ・KADOKAWAの付くお名前の多さに、カクヨムに入り浸ってからクラクラしております。
はっ! そうか、角川さんはきっとラビリンス型お宝ガードなのですね!
迷宮KADOKAWA。それ自体が砦と立ち塞がり、角川ソフィア、角川学術出版の存在を秘してしまう戦略に違いありません。
して、謎の生命体トリさんは迷宮の何階層辺りを守っていらっしゃるのでしょう。そこまでは潜って捕獲したいのですが。
図書館になりたいヲタクはWEBでまず本棚を目指す 小余綾香 @koyurugi
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