確かな人々の営みと、根付いた文化。

東アジア風のファンタジー作品です。
この世界には『ホダシ』という設定があり、運命の番がいる者がいます。
根無し草のような商人オウリが、『ホダシ』であるカナシャと出逢った時。二人の人生が絡み合い始めます。彼らが互いに強く惹かれ合いながらも、様々な困難を乗り越えていく物語です。

なんといっても素晴らしいのは、描写される風景や衣服に関する単語などが、自然と世界観を創り出していること。人々の生活を通して、その土地ごとの文化を感じることができ、自分が見ているのは彼らの人生の一部なのだと思わせられます。これまでも当然ながらこの世界で人々は生きていて、これからもそれは確実に続いていく。それを疑わせない。船の操舵の描写なんて、まるでそこに乗り合わせたような臨場感ですよ!

商人が中心となるお話だけあって、地域間の流通や商品開発もきちんと考えられていて、そういうところも、とても面白い部分です。作者さまの知識の深さが窺えます。
何かが起ころうとしている時、またはした時、商売時! だと動くのはまさに商人らしく、そういった人物背景の創り込みも深いです。

登場人物たちも、各々キャラクターが立っています。
オウリはいい大人なのですが、幼いカナシャにどうしていいのか分からないような初々しさもあり、見ていて応援したくなります。不思議な力を持っているカナシャも、彼女なりにオウリのためにと考えて動くのがいじらしくて可愛いのです。彼らの周りの人物たちも、皆それぞれに味があります。

ぜひ彼らの文化に触れ、生活を垣間見、そこで育まれる愛情を、見守ってみませんか。素敵な番外編があるのも嬉しい!

お薦めします(^^)!

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