終わりの彼方・後

 きれいなとこが良いよね、なんて言う尾張の道案内で、またバイクを走らせる。

 すっかり夜も下りて、対向車線のヘッドライトが眩しかった。現状を理解できなくて、ただ体の奥が火照るような感覚だけがあり、夜風の冷たさもわからなくなっていた。

 そんな風に感じているのはきっと僕だけで、尾張の方はきっともうこんなの慣れっこなんだと思う。今向かっているホテルの部屋が綺麗なことも知っていて、他と比較もできるってのはつまり、そういうことなんだろう。住む世界の違いを実感して、マイノリティは僕の方だな、なんて思った。


 経験がないことは、まだ尾張には言えていない。

 彼女が居たことは何回かあるけれど、どの子とも、そういう行為に至る前に別れてしまっていた。だから当然、それ目的のホテルなんて入ったこともなかった。

 尾張のことは、まぁ、嫌いでは、ない。顔はかわいいし、人柄だって悪くない。でも、その程度だ。高校からの知り合いではあるけど、ちゃんと話したのはほとんど今日が初めてだ。

 その程度の関係値の相手と「そういう」ことをするのは、なんかこう、ダメなのではという気はしている。断るべきだったとバイクを運転している今も思っているし、今ならまだ引き返せた。いや言い訳だこんなの。好奇心と欲に、僕の理性が勝てなかった。それだけだ。情けない奴だと罵ればいい。誘ってきたのは尾張の方だ、どうせ今日しか会わないんだ、いや待てさっきまた遊びたいとか言っちまった。それを聞いた上で誘ってんだからそれはつまり、いや、どういう了見なんだ。勘違いしそうになる。もう知らん、知ったことか、ばかたれが、と誰に咎められるわけでもないのに、妙な罪悪感を殺す。


 そうして心の準備などできるはずもないまま、去年の末にリニューアルオープンしたばかりというホテルに着く。

 敷地内は車に乗ったまま建物の周囲をぐるっと一周できるような造りになっていて、明らかに車を停める場所と部屋の入り口っぽいものは発見できた。誰にも声をかけずに停めてしまっていいものかわからなくて、尾張、僕はどうすりゃいいんだと尋ねる。


「そこにバイク停めたら、もう中に入っちゃっていいんだよ。ここは受付とか要らないとこだから」

「へ、へぇ。そうなんだ」

「さては貴様、ラブホ来たことないな?」


 どうやら、常識らしかった。

 看板に緑のランプが点いた、ちょうど車一台分が収まるガレージめいた空間にバイクを停める。分厚いカーテンで外から隠せるようになっていて、僕が何か言う前に尾張がそれを閉めた。

 尾張の背を追うようにして部屋に入ると『イラッシャイマセ』などという機械の声がした。チェックインからチェックアウトまで、本当に一度も人と話すことなく終えることができるんだなあ、と感心してしまう。

 壁と一体化するように設置された長方形の機械を見てコインパーキングの自動精算機を思い出し、逆にあれを見てラブホを思い出す人もいるのかな、なんて思った。

 室内は、思っていたより普通のホテルのように見えた。もっとこう、ビビットな証明が煌めく妖しげな空間を想像していたけど。床も壁も、色味の抑えられたシンプルなつくりになっていた。

 何をどうしたらいいのかもわからないというのもあり、部屋のあちこちを眺めながら荷物と上着を持ったまま棒立ちしていると。


「意外とピンクじゃないのね、とか思ってる?」

「え? まあ、うん、たしかに」

「ところによるけど……ちょっと、見ててこれ」


 言って、何かをしようと尾張がベッドに乗った。よく見ると、大きなベッドの枕元には何やらボタンがたくさんついた操作盤的なものがあった。慣れた手つきでそれを弄ると、照明が点いたり消えたり暗くなったり明るくなったりとする。そして最終的に、部屋中が虹色に光りだした。そうそう、こういうのを想像していたのだ、とはならない。光りすぎだろ。


「なにこれ。ゲーミングラブホテルじゃん」

「スマホの音楽も流せるよ」

「使う人いないでしょ、その機能」

「うん。いないと思う」


 面白いのは最初だけで、すぐに煩わしくなる。尾張にお願いして、部屋に入ったときの照明に戻してもらった。とりあえずジャケットをハンガーにかけてソファに荷物を下ろし、バイクに置いてくればよかったなと思いながら何故か持ってきてしまったダサいヘルメットも一緒に置く。

 その隣に腰を下ろすと、その真似をするように尾張も僕の隣に座ってきた。腰と腰がぶつかり、アァア、と思う。このくらいでいちいちびっくりしてたらお前、という話だ。


「ねぇ」

「はいッ」

「ふっ」


 声が上擦る。上手いこと空気を運べなくて、ええこんなにどうしようもなくなっちゃうのか、僕は。と思った。いつの間に重ねられていたのか、手と手が触れあっていることにも気づかなくて。意識した途端、全身の毛が逆立つような感覚がした。できるだけそんな気持ちも悟られないようにと思えば思うほど、気持ちばかり先走って言葉が伴わない。


「佐伯ってさ。もしかして……したことない?」

「…………悪い、っすか?」

「っふ、ふふふ。いや、いいね。正直で」


 できるだけ声を抑えようとしているのがわかる仕草で、尾張が笑う。いっそ手でも叩いて大爆笑してくれた方がよかったかもしれなかった。


「でも、意外だな。そうは見えなかったよ、ここ来るまでは」

「ごめん、来る前に言うべきだったとは、思ってんだけど」

「いやいや。そういう意味じゃなくてね。むしろ、アリってくらいだし」

「……そういうもんなの?」

「そういうもんだね。個人差あると思うけど、私はそう」


 そういうもんらしかった。

 よかった、のだろうか。これをよかったと思うことがまず情けないのでは?

 もう、何も考えないことにした。


「じゃあ、とりあえず先にシャワー浴びてくるよ。一緒に入る?」

「いや、それは大丈夫です」

「あらそう。もったいないね」

「なんでそんなに自信あるのに鬱になんかなるんだ」

「ははは。言えてる。でも、今だけだよ、こんなの。帰ってひとりになったら、また死にたくなって朝までメソメソ泣くだけ。んじゃ、急ぐね」

「ゆっくりでいいから」

「マジ? じゃあ、お湯も張っちゃおっかな」

「好きにして」

「わかった。心の準備、しときなね?」


 大きなテレビから絶えず流れ続けるしっとりしたピアノの歌を聴きつつ、ガラステーブルに置かれた雑誌を眺める。水着の女の人が表紙に印刷され、なにやらいやらしいワードが並んでいた。風俗情報誌だった。日常生活ではあまり目にしないそれを手に取り、ページをめくってみる。思っていたより文字が多くて、あまり心は動かされなかった。

 心の準備なんて、何をどうしたらいいんだろう。そんなことを考えていると。


『ねーぇ、佐伯ぃー』


 バスルームからこちらに聞こえるよう、少し大きな声で僕を呼ぶ尾張の声が聞こえてきた。声が反響して、音が重なっていた。つまらない雑誌を置き、ソファから立ち上がる。

 洗面台にも、一般的なホテルと似たようなアメニティが一通り揃えられていた。二人分のタオルが入っていたであろう長方形の箱に、尾張が今日身に着けていた衣類が雑に投げ込まれていた。あまりそれは見ないようにしつつ、声をかける。


「なに?」

『中には入んなくていいからさ。そこ、居てくんない?』


 なんで、と言いそうになり、それを口にする間は与えずに尾張が言葉を重ねる。


『死なれたら困るっしょ、佐伯も』

「……そんなに、節操ない感じなの?」

『冗談だよ。半分はね』


 半分は、本気ってことだろうか。

 詳しくは聞かない方がよさそうだと思った。

 いつかこんな話題も、気楽に口にできる日が来たらいいな、とも思った。

 曇りガラスのドアに背を向けるようにして、腰を下ろす。


「ここに居るから。死なないでね」

『ダルいよね、ごめんよ』

「今みたいにしおらしくしてた方が、ダルくないかも」

『はは。鵜吞みにしちゃうよ、それ』

「したら、どうなんの?」

『鬱アピールのラインとかしまくるよ、夜な夜な。鬱人間って、基本的に夜行性だから。そんで、佐伯が起きて朝に返信したら『遅い』つって怒んの。ことあるごとに死にたいって電話もするし、私が会いたいって言ったときに会ってくれなきゃ怒る。そのくせ、佐伯が会いたいときには外出ないからね。最悪でしょ』

「ダルいなぁ、それは」

『それで前の彼氏にはフラれたもんね。あ、前の彼氏の話とかヤじゃない?』

「いや、全然。どうでもいい」

『ちょっぴりくらい、妬いてくれたっていいじゃん』

「妬くほどの間柄じゃないでしょ、まだ」

『へぇ。じゃあ、いつかは妬くんだ』

「……」

『返事せぇよ。佐伯くんよ。入ってこないの?』

「入りません」


 湯船に浸かっているのか、笑い声に交じって時々水の音がした。


『夢みたいだなぁって、思っています、私は』

「大袈裟じゃない?」

『ずっと好きだった。佐伯のこと』

「……はい?」


 一瞬、何を言っているのかわからなかった。

 好きだった。佐伯のこと。ずっと。

 何をいきなり言い出すのか、この女は、と思った。お得意の冗談か。そのような雰囲気も感じなくて、でも、いや、簡単に信じられるか。思えばたしかに、やけに積極的だとは、感じていたけど。けど、ずっとって、いつからだ。思いを巡らせて、そんな風に想われる心当たりも見つからない。


「…………えぇと、なに、その……おべっか?」

『本当だって。どう思おうが、勝手だけど』


 いたって当然のことみたいに。軽い口調で、突き放すようなことを言う。

 息が、しづらくなる。四肢の先が熱くなって痺れるみたいになって、えぇとかあぁとか、無意味な言葉ばかりが意思とは関係なく閉じた歯の隙間から外に漏れていった。

 体中の毛穴から蒸気でも噴き出るようで、着ていた紺のシャツを脱いで上はインナーだけになった。少し涼しくなる。


『きっかけとかは、あんま覚えてないけど。二年の時、名前の順の席。隣だったでしょ? ほら、窓際で。佐伯が窓の方見る度に、目ぇ合って。あー、見てたのバレたー、最悪ー、ってそのときは思うの。一日中、佐伯の顔なんて見れなくて。でも次の日には、そんなことすっかり忘れちゃって。また似たようなことしてさ。いつも机の陰に隠れてゲームしてたよね。あれ、高校卒業してからちょっと触ったんだよ。難しくて、やめちゃったけど。彼氏もちょっとだけやってたけど、多分佐伯の方がうまかっただろうね。あれ今でもやってんの?』

「……なんで、言ってくれなかったの?」

『え? ゲームのこと? 彼氏のこと?』

「違うよ。その……好き、とかさ」

『言えないよ。言えるわけないじゃん。佐伯、友達もたくさんいたし。私のことなんて、顔も名前も覚えられてないと思ってたから』


 自分でそうは思わないけど、尾張から見ればそうだったんだろう。授業中によく目が合ったことも覚えていて、だけど、それにそこまで深い意味があるとは想像もしていなかった。

 僕の意識する尾張との繋がりらしい繋がりはそれくらいで、僕にとっては、今日尾張との間に育んだものの方が、ずっと大きかった。彼女にとっては、そうじゃなかった。顔も名前も覚えていないなんてのは絶対に言いすぎだけど、意識していない、という意味では、間違いじゃないのかもしれなかった。

 勘違いする隙も与えない、曖昧さの欠片もない告白に、たじろいでしまう。


『そんときからさ。ちゃんと、卑屈で根暗だったんだ、私』


 曇りガラス越しに聞く言葉は、まるで今日の尾張の行動に意味を与えるようで。あれもこれも、とひとつひとつ拾い上げるように、思い出す。悪い気はしなくて、少し眩暈がした。

 こんな簡単に、好きって言われたくらいで。そう自嘲して、相手が尾張だからだ、と思いたくて、その理由を探す。思い浮かぶものはどれも薄っぺらく感じてしまって、自分が尾張に向ける好意の軽さが露呈してしまうようで、少し冷静になった。


『だから、銭湯で顔見たとき、運命だーとか思っちゃった。東京行ったのも、知ってたから。今話さなかったら、二度と会えないと思った。焦っちゃったんだ、だから……もう、いや、うん。ごめん、きもいよね』

「いや。キモいとは、思ってないよ」

『そう? なら、よかった。まぁその、なんていうか……今日は、付き合ってくれて嬉しかったよ。こんなとこ連れては来ちゃったけど、乗り気じゃなかったら、別に何もしなくていいし。……そろそろ、出るからさ。ベッドで待っててよ』


 シャワーを終えた尾張がバスルームから戻ってくると、なぜか僕のシャツを着ていた。そういえば、さっき脱いだときに置いたままだった。だからといって、それを尾張が着ている理由にはならないけど。


「なんでそれ着てんの」

「似合います?」

「ちょっと、デカすぎんじゃないかな」


 わりと身長のある僕に対して小柄な尾張には少し大きすぎて、だいぶ袖が余っていた。前を閉めずに歩くと、簡単に肩がずれてしまっていた。ベッドに到着する前に二度か三度くらい着直して、なぜかその道中にあったヘルメットを回収するとベッドの縁に腰を下ろした。

 携えたそれを「ダサいなぁ本当に」なんて笑いながら浅く被ると、写真を撮ってもいいよ、と言われたので、一枚だけ残しておくことにした。スマホの小さな画面の中に尾張の姿を収め、シャッターを切る。


「かわいく撮れた?」

「わからん。自分で見て」


 手の中でスマホを回して画面を尾張に向けると、少しだけ睨むように目を細めて注視する。目が悪いんだろうか。それからすぐににっと笑って「かわいいね。佐伯、写真撮んのうまいじゃん」なんて言った。





「……それで、どう? そろそろ、緊張は解けた?」

「どうだろ……」

「んー。……それじゃあ、やめとく?」

「……」

「あはは。黙んないでよ。……リラックスしてた方がきもちいよ? きっと」

「リラックス、ですか」

「うん。緊張してたら多分、楽しくないよ」

「んー……」

「佐伯が、決めていいよ」

「……」

「……私は、したいけどな、佐伯と」

「……それじゃあ、どうすれば、いいですか」

「よしよし。好きにしてって言いたいとこだけど……そうだなぁ」

「……」

「んじゃ、いろいろ試してみよっか」

「色々、って?」

「こっち、きて。……ここ。座って」

「……えぇと……」

「ほら、はやく」

「ぅうぅ」







「どうだった?」

「どうって、どうだろ」

「気持ちよかったとか、あるでしょ、いろいろ」

「……尾張、そういうこと言うの、恥ずくないわけ?」

「恥ずくないよ、私は。気持ちよかったから」


 そんなことを、臆面もなく口にする。

 一通り終えると、腕を貸してと言うから右腕を尾張に預けて寝転がる。

 尾張は言葉にしづらいようなことを簡単に言ってのけて、場数の差を感じた。それから最中のことを思い出し、そりゃ当たり前だわ、となってもう恥ずかしいとも思わなかった。


「率直にさ」

「うん」

「思っていたよりかは、普通だったかも」

「えぇ。なんか傷つくなぁ、それ」


 気絶でもすればよかったんだろうか。


「でも、その……尾張が喜んでくれてるのは、嬉しいなと思う」

「…………今そうゆうこと言うの、ずるい」

「なに、ずるいって」

「好きになっちまうから」

「もう好きなんじゃないの?」

「より。さらに、ってこと」

「……あぁ、そうだ。好きって言ってくれて、ありがとう」

「だからさぁ。蒸し返さんでよ、はずいなぁ」


 照れ隠しか、尾張が僕の腕の上で頭を回すと、背を向けて壁の方を向いてしまう。綺麗な背中だ、と思った。顔が見えなくなって、今なら伝えたいことも言える気がした。


「僕も好きだって言いたいけど、正直まだ尾張のこと、よくわかってない」

「だろうね」

「だから……これから、好きになっていきたいな、と思ってる」

「……なるほど?」

「こう……もっと、知りたいんだ。尾張が自分で言う、めんどいとか、だるいとことか……そういうのも含めて……理解して、理解できなくても、理解しようとは、したい。それで、ちゃんと好きだって、思いたいし、伝えたい」


 僕は尾張みたいに頭が良くないし言葉も知らないから。思うことを余さず言葉にするのは、難しかった。それでも、無知なりに、誠意は見せたかった。今この瞬間も、尾張のことを僕は好きなんだと思う。ただそれをはっきり口にするには、まだ僕には積み重ねが足りてない。今好きだと言ってしまったら、どんなに薄っぺらく聞こえるだろうかと。そのようなことを考えて、できるだけの誠意を見せるようなつもりで、言葉を選んだ。


「……いいやつだね、君は」


 少しの間黙ってから、背を向けたまま小さく呟いて。

 また体を回すと、整った尾張の顔が視界に入る。


「イったあとでもこんなに優しくしてくれたの、佐伯が初めてだよ」


 今までどんな連中に抱かれてきたんだと思った。

 指先に纏わりつくような尾張の柔らかい髪に触れると、お返しとでも言うみたいに尾張も僕の髪に触れてくる。


「ヒゲ、ちょっと伸びてる」

「見ないで、そんなとこ」

「見るよ。好きだもん」


 言って、髪を触っていた手を顎に持ってくる。ざらざらした肌を撫でて穏やかに笑うと、まるでもう他には何も要らないとでも言うような顔をする。写真に残しておきたい表情だと思った。今まで付き合った相手にも、こんな顔を見せていたんだろうか。あまり、考えたくはなかった。


「いつも、こうやって女の子口説くの?」

「童貞だっつーの」

「そうだったね。ははは」


 無邪気に笑って、目が合う。

 少し目を逸らし、何かを言いかけて、口ごもる。そんな尾張の様子を、髪を指で梳きながら眺める。永遠に見ていられそうだと思った。


「佐伯……今日、……」

「……今日? なに?」

「今日だけで、いいからさ。私のことだけ、考えて……他のこと、何も考えないでいて、ほしい、とか、言っちゃったり」

「意識しなくたって、もうそうなってるよ」

「……そっか。嘘でも、嬉しい」

「嘘じゃない」


 念を押すように言ってから、肩を抱く。小柄な尾張は、簡単に腕の中に収まってしまう。そのままつむじの匂いでも嗅ぐみたいに顔を押し付けると「やめろぉ」と聞こえてきた。


「……今、人生で一番幸せかも」

「だから、大袈裟だって」

「全然。大袈裟なんかじゃ、ない」


 今度は尾張が念を押すように言う。


「……明日、死んじゃうかもな」


 そうして、ぽつり、と。

 引っかかる言葉をこぼして、触れるべきか、悩む。もう、こんな言葉もさらっと流せなくなっていた。そういう態度を見せるべきだと、経験が少ないなりに感じていた。それが正しいかどうかは、わからないけど。


「冗談だけど、って言わないの?」


 返事は、なかった。


「…………死なないでほしいよ、僕は」


 重ねても。

 やっぱり、返事はなかった。

 それだけ言うと、ホテルの落ち着かない匂いと、彼女の甘ったるい髪の匂いに包まれて眠った。必要以上に大きな枕で何度か寝返りを打ったあと、浅い眠りの中、なんだか古い夢を見た気がした。

 午前八時の少し前に目が覚めると、腰から背中にかけてが軋むように痛んだ。感じたことのない鈍痛だった。痛みからややあって、昨晩のことを思い出すと、ハッとする。

 掛け布団を引っぺがすように横を見ると、下着もつけずに眠る尾張の姿があった。少し安心して、仰向けで倒れこむ。それからなんだかとても悲しくなり、まだ眠ったままの彼女の頼りない肩を抱き寄せる。柔らかい髪に埋もれるように顔を近づけると、甘い香りがした。


「なぁに」

「あ、ごめん」

「謝んなくていいけど。また、したくなっちゃった? こんな朝から」

「そんなんじゃないって」


 二人で起きて支度を済ませると、精算機の指示に従ってお金を払う。想像していたよりもずっと安くて、尾張が「半分ずつ、半分ずつ」と隣で言うのを無視してカードで支払った。

 ホテルの部屋の窓は雨戸が下りていて陽が差さなかったから、外に出ると少し眩しくて目が痛かった。

 車の通りの少ない夜は何とも思わなかったが、バイクに二人乗りでラブホテルを出入りするのは途轍もなく恥ずかしいのだと知った。別に見られてなんかいないに決まっているのに、無意味に目の前を通過する車を意識してしまう。

 コンビニまででいいよ、という尾張の道案内で、昨日来た銭湯の近くのコンビニにバイクを停める。尾張の外したヘルメットを受け取ると、別に鼻を近づけたわけでもないのに、シャンプーの濃い匂いがした。


「連絡先は、元気になったら渡すよ。多分、甘えちゃうから」

「別に、甘えても……」

「あのね。そんなこと言えんの、今だけだからね。ホントにめんどくさいんだよ、メンヘラの甘えって。……私、嫌われたくないんだよ、佐伯にだけは。だから、今は、渡せない。渡したくない」


 尾張の決意は、固いようだった。

 無理を言って受け取るつもりもない。続く言葉も、予想できた。


「……私が元気になるまで、待っててくれる? いつか、会いに行くから」

「待ってるよ。ずっと」

「ありがとう。またね、佐伯」




 それから、ぴったり一週間後。

 尾張は、自宅で亡くなった。


 葬式には、行かなかった。

 行けなかったわけじゃない。こうなるかもとは思っていたし、打ちひしがれて呆然と、なんてことはなかった。友人から訃報を聞いたその日も普通に仕事をしたし、いつもと変わらず眠って、次の日の朝も平穏に迎えた。

 そんな生活を数日続けた頃、不意に糸でも切れたようにベッドから起き上がるのがしんどくなって、一週間だけ仕事を休ませてもらった。思ったより参っちゃっているのだと、心よりも先に体に影響が出て気が付いた。


 何かを食べる気力もなく、少しの水を飲み、眠るだけ。

 時々目が覚めると時刻を確認して、スマホのアルバムを見る。

 彼女と会ったのはつい一週間前かそこらだったから、アプリを開けば、ほとんど一番上に表示される。僕のシャツを着て浅くヘルメットを被った、尾張の写真。

 手元にあるのは、それだけだった。

 少し人を馬鹿にするような意地の悪い声色や、ころころ変わる表情は、写真には残らない。砂に埋もれた宝物でも丁寧に拾い上げるように、それを思い出す。それから少し泣くと、また眠ろうとして布団に潜り込んだ。


 あの日、無理やりにでも、連絡先を交換していれば。僕に迷惑だからなんて、そんなわけないだろって。もっと強い言葉でも言えてたら。好きなだけ甘えさせてあげられたら。もう少しくらい、何か、変わってたんじゃないのか。別れる前に「冷えるから」なんて雑に理由をでっちあげて上着でも貸して、次に会うときに返してくれれば、なんて言えてたら。僕がそんな図々しさと、回せる気でも備えていたなら。いや、そもそも彼女は仕事もしていなかったんだ。無理やりにでも、東京まで連れてきてしまえば、どうだっただろう。この部屋に、彼女がいてくれたなら。ここ数日で、もう数えきれないくらい想像した。きっと、楽しかったと思う。自分本位な空想だって、そんなこと誰かに言われなくてもわかってるけど。一人で居るよりマシなのは、きっと間違ってない。間違ってないだろ。たった一回ヤっただけで、滑稽だよ。こんな僕を尾張は笑うだろうか。気持ち悪がるかな。それだけじゃないって、信じてくれてたかな。時間をかけて好きになろうだなんて言葉、言うべきじゃなかったのかな。誠実さなんて、アピールする必要なかったのかな。つまらないプライドのせいで、尾張に僕のことを信じてもらえなかったんだとしたら。もう、本人に聞くこともできない。戻らない。戻らないんだ。どうして。


「……尾張」


 奥歯が砕けそうになるくらい、虚無を強く噛みしめる。

 骨の軋む音の奥で、彼女の名前を呟く。

 下の名前は、夜翻ヨヒラ。翻る夜と書いて読むその言葉の意味を、二人で過ごした夜に尾張は『きっと意味なんて無いよ』と笑って話した。


『でも、好きだよ。字面も響きも、きれいだから』


 彼女の声を思う。僕にも向けられた、好きという言葉と、その響きを。

 いつか、互いに下の名前で呼び合うような間柄になれたらとか、もう叶いもしない祈りを、あぁ馬鹿みたいだと思い、どうしようもなく、猛烈に体を引き裂きたくなるような感覚に苛まれる。

 もとより、空っぽで何もない人間だった。

 その空虚な器を、たった一人の人間がいっぱいに満たしてしまった。

 器そのものが、尾張の形に変わってしまうほどに。

 今この瞬間にも注がれ続けて、溢れるほどに。


 彼女は、どんな思いでこの世を去ったんだろう。

 僕は、生きていていいのかな。

 尾張はもう、居ないのに。


 翻々ひらひら舞って僕の視界を覆う夜は、あの日から明けないままだ。

 きっと、死ぬまでずっと暗闇だ。

 もう、それでいいよ。

 二度と僕に夜明けが訪れないなら。

 もう会えない君のことを、死ぬまで想い続けられる。

 今は、それでいいと思った。

 この痛みを抱いて生きていくには。

 そう思うしかなかった。


 それから桜が散り、まだ夏の匂いが残る九月の半ば。

 実家に、僕へ宛てられた手紙が届いた、と兄が教えてくれた。


 東京の家へと送られてきた群青色の便箋に、差出人の名前は書いていなかった。

 そんなはずはないのに、尾張からだったらいいな、なんて思った。







『未来に宛てて手紙を送れる仕組みがあること、佐伯、知ってた?


 私はこれを書いているとき、何らかの手違いで佐伯に届かなかったりしたら嫌だなあ、と思っています。無事に佐伯のもとへ届いてこれを読んでいるということは、恐らく、私は死ねたんでしょう。これの他に何かを書き残すつもりもないから、実質、遺書みたいなものかもね。家族には、読ませないでね。


 手紙なんてほとんど書いたことないから、何を書けばいいのかわかんないな。


 伝えたいことは、たくさんあるんだけど。


 もう、訃報は届いているのかな。もしかすれば、この手紙で知ったかな。一週間は耐えたんだ。頑張ろうって思えたんだ。でもやっぱり、ダメだったよ。会いに行けなくて、ごめんなさい。私がいなくなっちゃっても、どうか、悲しまないでほしい。でもそれと一緒に、ちょっとくらい悲しんでいてくれたら嬉しいかも、なんて思ってる。


 もう、覚えていないかな。私からすれば、つい昨日のことのようだけど。これが届く頃には、もう二人で遊んだことも朧気かもね。あの日、銭湯で偶然みたいに話したけど、本当は全部知ってたんだ。佐伯が、こっちに帰ってきてること。インスタ、見たからさ。でもフォローもせず覗いてるなんて知られたら、怖がられるだろうなって。言えなかった。ごめんね。気持ち悪いよね。


 きっとね。私は、もっと早く、落ち込んじゃうより前に、佐伯と再会して。こうして、遊んだりしてたとしても、それが遅くなることはあっただろうけど。どちらにせよ、病んじゃうことは、変わんなかったと思う。遅かれ早かれ、こうなってたと思う。


 もちろん生まれや環境、職場とかね。そういうのも、要因の一つではあるよ。大いにね。それは間違いないんだ。間違いない。だけどね。


 私の心の根本的な、もっともっと深いところに、強い力っていうか……そういうのが、私の中にはあって。なんなら、この世に生まれる前から、私の魂みたいなやつが、そういうかたちをしていたんだろうなって。過程が少し違ったとして、結局はこういう人生になることが、ずっとずっと昔っから、決まってたんだろうなって。


 そういうものだと、思うの。


 私はね。あのちょっぴりの幸せな時間で、十分すぎるくらい報われたんだ。死ぬことしか考えないで息をしていたこれまでが、意味を持って輝き出した。君が、そうさせた。この幸せのてっぺんのまま居なくなれたら、いいなって。そう思っちゃった。

 

 ごめんね、なんて言われても、困っちゃうよね。まだほんの少しでも私のことを引きずってるなら、嬉しいなって思う。それと同じくらい、苦しいよ。ごめんね、君はこんな私のことを好きでいてくれたかもしれないのに、応えられなくて。


 佐伯が幸せでいてくれるなら、死んだ私も、幸せだと思う。だからもう私のことなんて忘れて、好きな人と一緒になって、幸せになってほしい。


 君は自分をつまらない人間だなんて言うけれど、そんなことはないよ。きっと佐伯は誰からも愛されるし、佐伯も同じように、たくさんの人を愛せると思う。こんなどうしようもない私のことを、好きになろうとしてくれたんだから。きっと誰が相手でもうまくやれる。


 ありがとう、佐伯。


 最後に君に会えて、本当によかった。


 尾張夜翻オワリ ヨヒラ





 できるだけ当たり障りのない言葉で結んだ手紙を、群青色の便箋に入れて封をする。読み直したら、きっと送れないと思った。その便箋を今度は無機質な白い封筒に収めると、あとはこれをポストに投函するだけだった。

 これで、指定した日付に佐伯の住所へこの手紙が届けられるはずだった。

 佐伯と遊んでから、明日で一週間になる。三日で帰るって言っていたし、今はもう東京だろう。もう夜の七時だけど、まだ仕事をしてるかな。こないだから、時計を見ればそんなことばかり考えている。お昼は食べたかなとか、何時に起きて会社に行くんだろとか。

 眠って起きて、時々散歩するだけの生活をしていると、何もしていない時間の方がずっと長かった。楽しいことなんて考えていられるわけもなく、そうしていると、つい佐伯の姿を思い浮かべてしまうのだった。


 明日、死ぬつもりだった。

 方法はまだ、決めていない。いつからか、ネットで調べても「こころの相談」とか、それ系のサイトばっかり上の方に出てくるようになった。そんなもんを頼れたら、はじめっから死のうとなんてしないのだ、と乾いた笑いしか出てこない。

 こんな命が何かの役に立つなら、喜んで差し出すのに。頭は終わってるけど、身体の方はまだ割と健康なはずだった。不摂生な生き物ではあるけど、使い物にならないほどじゃないと思う。

 それこそ、佐伯が長生きできるなら。

 私の寿命でもなんでも全部、あげちゃうのに。

 なんて、そんなもの佐伯はきっと、求めもしないんだろうけど。


「はは。ばからし」


 そう思っているなら、手紙なんか送んなよって話だ。

 思ってることとやってることが、全然嚙み合っていない。これに限った話じゃない。振り返らなくても、現在進行形で、私の人生はずっとこうだったな。

 そのようなことを考えながら、身支度を済ませる。桜の咲く季節でも、やっぱりまだ夜は冷える。

 薄めの上着を着て手紙だけを持ち外に出ると、気持ちのいい風の吹く夜だった。

 店内にポストのある一番近くのコンビニまで歩いて五分もかからなかったけど、少し歩きたかったからスルーして。目指すあてもなく、とにかく、遠くへ行きたかった。

 少し目線を上げると、月が綺麗だった。夜の闇に目が慣れると、淡く白い光が町を照らしているのがわかった。


「いい夜だよ、佐伯」


 鬱になって人と関わることが減るのに反比例して、独り言が増えた。

 誰に向けたものでもなかったはずの、それらの無意味な音は。最近じゃ、明確に佐伯に宛てた言葉になっていた。

 届きもしないとわかっているから、思うだけじゃ飽き足らず。彼の名前を口にするだけで、苦しくて痛いものがすっと胸から溶けていくような感じがした。

 涼しい風が、頬を滑っていく。こうやって風を感じるだけで、佐伯の背中と、バイクの音を思い出してしまう。悪い気はしなかった。ただ、ほんの少し佐伯に申し訳ない。きっと気持ち悪いと思うだろう、こんな女のことは。

 過剰なくらいに匂いの染みついた髪には、まだかすかに甘い香りが残っているような気がした。この匂いで記憶されていたら嫌だな、と思った。


 佐伯は今頃、何を思っているんだろう。

 こんな風に、些細なことで私の姿がちらついていたり、するだろうか。

 ……きっと、していないだろう。

 もう私のことなんて、考えてすらいないかな。

 他人と触れ合うことを知ってしまって、違う女の子と遊んでいるかな。

 それを咎めたり怒ったりなんてできる権利も手段も、私は持ち合わせてない。

 自分からわざわざ、そういう状況にしたんだ。

 連絡先、渡せたのに。

 佐伯は結局、好きとは言ってくれなかった。

 でも、私と過ごして、好きになりたいって言ってくれた。

 そんな誠実な言葉を、どうして信じられないんだろう。

 愛されてるって、わかってるのに。

 愛してもらえる未来も、見えているのに。

 どうしてこんなに、虚しくなっちゃうんだろう。

 やることなすこと全部裏目に出て、過去の私が今の私の首を絞めてばかりだ。


 怒りとも悲しみとも形容できないどうしようもない気持ちで、胸がいっぱいになる。それがじわじわと熱を帯びていき、熱は喉を登り、目頭に届く。

 そうして溢れた熱いものが、頬を濡らした。

 春の夜風が、しずくを空気に溶かしていく。吐息は湿り気を纏い、呼吸もままならない。心臓が潰れて濡れた雑巾みたいに、ぎゅっと絞られているみたいだった。


「なにが、こんなに、つらいんだ」


 全部、自分のせいだろ。

 死ぬまでに一度でいいから、溺れるほど愛されてみたかった。

 誰と一緒に居ても、誰のことを好きになっても。互いに送り合う想いが釣り合ったことなんて、一度だってなかった。どんなときでも、天秤は私側に傾いてた。好きになりすぎてしまう自覚はあって、でも意識して変えられるのならば、こんな死ぬほど苦しんだりしない。自由にできないから困るし、困らせた。きっと今まで私が愛した人たちも、ちゃんと私のことを好きでいてくれたんだと思う。だけど私は、どれだけ愛を与えられても、乾きを潤せない。そういう風に、なってしまった。原因なんて知らない。知りたくもなかった。私の重たい好きって気持ちなんか吹いて飛ばすくらい、おっきな愛で窒息して死んじゃうくらい、自分じゃない誰かに、想われてみたかった。だから相手なんて、誰だってよかった。誰だって、よかったんだよ。佐伯でも、佐伯じゃなくても。こんな不誠実な人間のこと、好きになんてなっちゃいけないよ。さっさと死んだ方が世のためだ。自分の性質を正当化するつもりなんてない。最初から、無理だってわかってる。どうしようもない終わった人間だって自覚してる。そんなやつのことなんて、誰も愛してくれないってことも。幸せなんて、知るべきじゃなかった。他人の体温なんて覚えなければよかった。何かと関わるからつらいんだ。わかってる。わかってるのに。寂しくて、寂しくて、この穴を埋める方法なんて、他人から求めてもらう手段なんて、それしか知らなくて。面白くないのは私の方だよ。何もないのは、私の方だよ。佐伯は、それがなくたって、また会おうと言ってくれてたのに、結局私は、体を明け渡すことに逃げてしまった。怖かった。捨てられてしまうと思った。好きって気持ちが距離とともに遠ざかってしまうと思った。必死だった。結局そのせいで、また苦しんでる。何がしたいんだよ、お前は。死ねばいいのに。


 今となっては、もう確認もできないけど。

 佐伯は、セックスなんかしなくても、好きと言ってくれたかな。

 たった一日じゃそんなこと、何もわかりはしないよね。

 私は、ちゃんと、好きだった。

 今だって、そうだ。

 

 こんな言葉も、きっと信じてもらえないんだろうけど。

 好きだなんて言われても、困るだけなんだろうけど。

 君は私のことなんて、どうせもう好きなんかじゃないんだろうけど。


 そうやって。どうせ、きっと、たぶんって。

 都合の悪い憶測ばかりして、落ち込むことしかできない不安定な人間なんて。

 愛してくれるなら誰だっていいって気持ちで近づいて、騙すようなことばっかり宣う女なんて。

 一緒にいたって、私も君も、つらいだけだろ。

 知ったら、嫌いになる。

 そうに決まってる。

 飽きられて、愛想をつかされる前に、消えてしまいたかった。


 私は佐伯に、幸せになんてなってほしくない。

 私のいない世界で、違う誰かと一緒になんてならないでほしい。

 死ぬまでずっと、私のことだけ考えていてほしい。

 そうやって悩んで潰れて苦しんで、息を止めてくれたら。

 そしたら、なんて素晴らしいだろうって、そんなことばかり考えてる。

 最低だ。

 さっさと死ねばいいのに。


「あぁ。死にたくないな……」


 でも、もう無理なんだ。

 こんな救いようのない頭じゃ。

 こんなどうしようもない世界、私はもう、生きていけない。


 万が一、億が一、兆が一。

 まだ佐伯が私のことを、好きでいてくれたとしても。

 私が、こんな私のことを、愛せないから。


 君に愛してるなんて、言えやしないんだよ。

 そんな権利、私には、ない。


 手紙には書けない本当の言葉は、春の夜闇に混ざって溶けて、誰にも届かない。


 佐伯じゃなきゃ嫌だって、今は思うよ。

 そんな気持ちが永遠になるように、私は今、死にたいんだ。

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終わりの彼方 谷野 真大郎 @Nanashinonanahushi

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