第2話
命は言葉に優先しない。言葉で人は死なないが、言葉上では言葉で人は死ぬのだ。
姉の死には「時計台での死」という言葉が覆いかぶさった。
時計台で死ぬことは姉が自分自身の時間を停止させて、それから永久に連続させ続けることだったとか、街の時間の象徴のような時計台で死ぬことでそれから街の時間は姉の延長を刻み続けるとか、言葉上で月並みなことはいくらでも言える。
しかし象徴それそのものは永久に死んだ姉自身のもので、「時計台で死ぬこと」が言葉上どういうことになるかはメタファーの当事者たる姉自身の存在そのものに永久に覆い隠され続ける。
私には姉がいたはずであり、自死したのなら姉が、どうして死んだのかを知らなければならないはずなのだ。
しかし「姉が死んだ理由を理解した瞬間」というのは一体どの時点になるのだろうか?自分自身が納得したときに、私は姉が死んだ理由を理解したということになるのだろうか?
時計塔で死んだという事実は、その含み持つメタファーによって姉の死を変に覆い隠してしまうのではないのだろうか?
「それじゃあ学校終わったら時計台に行ってみようよ」
という私の言葉への友人の反応はかんばしくなく見えた。「怖い話への反応として間違ってるんじゃないか」というようなことを苦笑いで言いながらも、その友人は承諾した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます