終話

階段を駆け上がるたびに鐘の轟音は一層巨大に、明澄になった。音は建物内部で増幅して外部へ発散しているらしく、時計へ近づくにつれ音の反響が取り除かれ、鐘そのものの音色が澄んでいくようだった。


二階から上へ行く階段を駆け上がると、どうやら時計本体に行き着いたらしく、そこは六畳一間ほどの空間であった。見上げると黒ずんだ金色の巨大なベルが強烈な夕日に輝いて揺れていた。


時計そのものは完全な機械式であり、重りが昇ったり下がったり、巨大な歯車がぎちぎちとかみ合いながら夕方の闇の中でそれぞれの速度を維持してゆっくり廻っていた。それは美しく、古く、恐ろしかった。次第に小さく間延びし始めた轟音の中で私は泣いていて、泣いている自分が恐ろしかった。私は姉を発見したのだ。


私はそこで木とパイプの簡易的な椅子を発見した。それをもって、私は駆動する機構部分の破壊を試みた。椅子は二度振り下ろされて、いくつかの歯車が落下した。上下する重りを引きちぎった、時計は細部の機構を失って針を直接動かす大きな歯車だけがゆっくりと動き続けていた。


しかし鐘が、振れ幅の小さくなりかけていた鐘が、また激しく振れだした、その音は今度は際限なく大きくなるようだった。時計の怒りが増幅するように轟音は増幅した。そして私は絶叫してそこを飛び出してもと来た階段を駆け下りたのである。

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平成 反逆盆踊り あけめねす @pinkmapleyokan

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