第3話
時計台は街の奥の山の方の寂しい土地にあって、田んぼも畑も民家も人通りも少ないから、地元の小学校ではあまり近づかないように注意喚起がされていた。
時計台は山の中の変に広い場所に建っている。もともと旧陸軍の敷地だったというような話があるが良くわからない。
とにかくそういう寂しい場所だったし、時計台も古い建物の暖かみというよりは
放置されて朽ち果てた建物のすさまじさの方が感じられるような、女子高生の自死だとか旧陸軍の軍事施設だとか気持ちの良くない話が噂されるような雰囲気の場所で、誰でもひとりではあまり近づきたくない、いやふたりでも行くにはあまり気乗りしないような場所なのであった。
私の姉の自死についての話を単に「怖い話」として面白がろうというこの友人に思慮分別とかデリカシーの欠如を感じながらも、自分が行くのは嫌であろう場所に、私と一緒に行ってくれるということについては、親切な人だなと思った。
「時計台に行くんだったら、図書室で少し調べてから行かない?時計台を」この友人の提案は、その場所の事情を何かしら知って、おいて薄気味の悪さを少しでも胡麻化そうという目論見があるらしかった。私は同意した。場所の事情や背景は姉の死が持ちうる意味の何かしらのヒントになるかもしれないからだ。
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